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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第3章~Soaked Septum~
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33. ピアース・スパイン

「【フレイムリフト(レヴィフレイム)】!」

「【ダークスタンプ(マスノアール)】!」


 燃え盛る火の玉と黒い闇の塊が僕に向けて飛来する。戦闘は避けられない。


「【リフティング(モノセトル)】!」


 飛来する敵の攻撃を、近くの瓦礫を浮かび上がらせる事で防御し、僕はそれをそのまま的に投げつけた。


「ぐあっ!」

「【プロミネンス(フレアーク)】!」


 地面から火を吹きあがらせるとそれが敵を目がけて降り注ぐ。


「【水の壁(ディモイス)】! 【炎の壁(ディフランマ)】!」


 敵が降り注ぐ炎を回避している隙に、水の壁を展開しそのすぐ裏に炎の壁を張った。壁魔法を2種類設置しておけば、まあ暫くは耐えるだろう。あんなのに構っている暇はない。


「……これか」


 屋根の上をよろけながら走って行くと、やがて巨大な機械のある所までやって来た。

 水が溜まった穴に管が2つ突っ込まれ、それが巨大なマシンに繋がれている。


 これが濾過装置だな。


「さっきは弾かれたけど……」


 もう一度集中し、狙いを澄ませる。今度こそあれを貫くために、ありったけの魔力を一撃に込める。


「貫け!」


 放った弾丸は、一瞬ピタリと機械に触れる直前に停止すると、何かを突き破るように再び前進し機械を貫いた。

 その直後、海を濾過し続けていたその巨大な装置はパチパチと火花を散らし、大爆発を起こした。


「ピーカブーの方は……」


 壁の上からもう片方の装置を探していると、突然地面が揺れ出し、僕は思わず屋根から落ちそうになった。


 今の揺れは。


『こちらピーカブー、装置を破壊した』

「こっちも今やった、今から合流しよう!」


 ピーカブーさんからの通信にそう返答する。機械を破壊したし、後はもう合流してしまった方が安全だ。


「――そうは行かないな」


 そんな矢先に、後ろからそんな声を聞いた。

 振り向けばそこには明らかに雰囲気の違う亀人間が一人佇んでいる。


「お前が犯人か」

「そうだ!」


 低い声だ。頭には青いバンダナのようなものを巻いている。手には細長い剣があり、その剣と同じような鋭い目付きをしていた。


「困るな、俺たちルナティックの邪魔をされては」

「おまえ等の好きにはさせない!」


 突き刺すような鋭い目をしたその亀人間が、ニヤリと笑った。


「俺はピアース・スパイン」


 剣を僕に向けて、彼は声高に宣告した。


「ルナティックに従える『ルナティック・スターズ』の一人だ!」


 スターズ。スマートの同類だ。


「まさか遺跡に侵入し、部下たちをかいくぐり装置を破壊されるとは思っていなかった」


 彼はそう言うとゆっくりと剣を構えた。独特なフォームだ。


「この対価は高いぞ」

「そんな対価、踏み倒すよ!」


 「踏み倒すとはなかなか面白い事を言うな。シングルドライブの分際で俺に勝てるとでも思ったか」


 シングルドライブとは、どういう事だろう。そう思っていたら彼は魔法で懐からドライブを浮き上がらせた。


「モデルPs(ピアシングソード)……

モデルDm(ディープマリーン)……」


 その数は2つだった。これはまさか。


「ダブルドライブ――ダウンロード!」


 青い閃光が走り、響く波の音と共にピアースの体から漏れだすオーラが、何倍にも跳ね上がった。


「風穴をあけてやろう」


 他の雑魚隊員とは全く異次元の存在感をピアースから感じた。剣の様な威圧感と水の重量感がジリジリと僕を苛む。


 向こうの武装は剣だ。それなら遠距離から攻めた方が吉だろうか。


「【ウインドブーマー(ウインドブーマー)】!」

「【ソルトワール(アクワインド)】!」


 風の渦と水のドリルがぶつかり合い、激しい水飛沫が舞う。


「【電気ショック(エレクシェル)】!」


 水飛沫で視界が悪いのを利用して現れたピアースにすかさず電撃を浴びせ、追撃する。


「【メタルクロー(トリメタロン)】!」



 鋼の爪を右手に纏い大きく振るうと、切れ味が良く彼が大きく仰け反った。その隙に銃撃を浴びせようとすると、不意に、水のエネルギーを伴う斬撃が入り、僕は腕を切りつけられた。


「あつっ!」


 避けきれなかった僕の左腕に切り傷が付くと、彼はニヤリと笑い剣を高く掲げた。


「【海裂水青斬(アクアブレイカー)】!」


 彼が剣を振り下ろすと、地を這い、地面を砕く青い衝撃波が間を入れず襲い掛かり、回避する術の無かった僕はその攻撃で屋根から叩き落とされた。


「この程度か。【バブルボンバー(バクサボン)】!」


 大爆発を起こす泡が舞い、僕は再び宙に跳ね上げられる。


「【ボルダーリフト(モノコープス)】!」


 そこで僕は瓦礫を操り、空中に漂う足場を作り着地した。そのままピアースの攻撃が来る前に、僕は素早くその上で銃を構える。銃口の狙いは―――


「砕けろ!」


 遺跡の壁だ。遺跡の壁を破壊する事で、落石を誘発させたのだ。


「ぐぐぐ」


 落石が収まると瓦礫の底から這いだしてきたピアースはそのまま不気味な笑みを浮かべた。


「フフ、なるほど。お前が、ブラックリストに載っている奴か。載った理由が分かった気がする」


 向こうは肩で息をしている。


「なるほど俺がシングルドライブに追い詰められる訳だ」

「……はぁ、はぁ」


 こっちもそろそろ限界だ。次の攻撃に賭けるしかなかい。


「――【アクアキャノン(スプラハイドロ)】!」

「――【サンダーネット(スカテレクトロ)】!」


 彼から放たれた水の大砲を、同時に放った電撃の網で迎え撃つ。すると僕の電撃の網は水を巻き込み、ピアースのもとへ飛来していき彼を思い切り感電させた。


「ぐああああっ!!!」


 彼が大きく悲鳴を上げた直後、ピアースの大砲が真正面から僕に直撃する。相打ちだ。


「ゲホッゲホッ!」


 まだいけるか。まだ立ち上がるか。僕の方はどうだろう。まだ立てる気がする。

 起き上がろうとした瞬間、敵のシールドの割れる音が響く。僕の勝ちだ。


「ば、バカな!」

「……よし」


 立ち上がり、僕はピアースのもとにゆっくりと歩み寄った。


「さあ、手を挙げろ」


 銃を構え、僕はそう通告した。


「【フレイムリフト(レヴィフレイム)】!」

「うわっ!」


 とっさに攻撃を避けると、いつの間にやら彼の部下が追い付いていて僕に武器を向けていた。どうやら炎と水の壁を破ってしまったみたいだ。

 流石に今から連戦はきつい。


「残念だったな、手を挙げるのはお前の方だ」


 負けたピアースが不適な笑みを浮かべた瞬間。



「――【アクアマグナム(マグナハイドロ)】!」


 ピアースの物よりも更に強力な水の大砲が、僕に武器を向けた敵を一掃した。ピーカブーだ。

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