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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第18章~Revulsion Reactivated~
251/269

250. 欠けたパーティ

Revulsion

1.(感情・考えなどの)激変,急変,急激な反動

2.(激しい)反感,嫌悪,憎悪

3.引き戻し;回収

4.〔医〕誘導法


Reactivate

[動](他)…を再び活発にする,復活させる

━(自)再び活発になる;復活[再開]する

 放課後に、話があるんだ。


 思い詰めた様子で俺の親友はそう言うと、足早に去って行く。

 最近の彗は、思い詰めている事が増えた。

 この間もソラが誘拐された時もこんな顔をしていたが、今回はもっと深刻そうな……ああ、そう言う事か。


「で、どうした彗」

「ああ……巧……」


 放課後に適当な空き教室へ峰さんと入ると、彗はぼうっと日の沈みかけている空を眺めていた。

 俺たちが来たことに気付くと、勝手に扉が閉まり、鍵が掛かる。



「お前またそう言う顔してるのな。ソラにフラれたか?」

「違うよ。第一ソラは……友達、だし」


 心ここに在らずと言った様子で返す彗に、峰さんと顔を見合わせる。

 何処か引っ掛かる言い方だ。何か有ったのか。


「でもソラ関係だろ」

「……まあ」


 ほら、否定しねぇし。


「何が有った?」

「どうしたの? 彗今朝から調子悪いみたいだよ?」

「……実は、さ」


 今日は秋風が気持ちいいのに、彗の周りだけ空気が梅雨みたいに重苦しい。

 ただならぬ様子で焦点がぼやけていた彗は目を閉じて息を吐くと、その焦点が此方に定まった。

 そして、意を決した様に彼の口から出た言葉は、到底信じられるものではなかった。


「……ソラが、さ」


 ――指定暗黒組織D.E.A.T.H.の幹部、アトモスだった。



「んん??」


 ……などと、意味不明な事を供述をしており。



「いやいや意味分かんねえし。だってソラはそのDEATHに誘拐されたじゃん」

「自作自演だと、言っていた」


 んなバカな。どうやってあんなのを自演すんだよ。と言うか何の目的でそんな事するんだよ。


「待って、だとしたらソラはなんでDEATHなんかに?」


 そうそう。理由がないじゃん。ナイス峰さん。


 そうぼんやりと考えていたら、彗はポツポツと、事の顛末を話し始めた。



 曰く、こないだのお泊まり会から疑念を持っていた事。

 曰く、偽アトモス作戦に加担した事。

 曰く、ソラが並々ならぬ憎しみを伊集院に対して抱いていた事。

 曰く、伊集院は最初からソラをアトモスと睨んで、今回の件を仕組んでいた事。


 そのどれもが、にわかには信じがたい内容で、俺と峰さんはお互いに顔を合わせた。


「う、恨みって……」


 峰さんが受け入れがたそうに言うと、彗は首を振った。


AAAA(テトラエー)には、よく分からないけど大切な人を殺されたらしい。X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)は……分かんないけど弟を殺された、と思っていた。伊集院くんはそんな事してないと言っていたけど……」


 正直、今回の一件で伊集院くんを何処まで信じたらいいか分からない。


 彗はそう言って、再び俯いてしまった。


「……」

「僕は、どっちを信じたらいいか分からない……!」


 ーーソラも大切な友達だし、伊集院くんも今まで、僕をここまで導いてくれた恩人だ。

 だからどっちも信じたいけど、どっちも信じられない。


 そう言って彗はそのまま言葉に詰まった。机の上に置かれていた彗の握りこぶしは、両手とも真っ白になるまでに力を込められていた。


 一体、ソラに何があったんだ。

 何処をどう間違えたら、テロ組織のナンバー2なんかになっちまうんだ。


「……とりあえず、その事件の真相を調べてみないと、何とも言えないよね」

「そうだな。ソラがそんな事になっていたのはちょっと信じられねえけど……今の状態では判断付かない、よな」

「まずは、調べてみようか。私達も一緒に」


 そこでようやく、彗は顔を上げて見せた。

 涙こそ流してはいなかったが、眼が若干腫れている気がする。


「ああ。俺たちでも出来ることはあるさ」

「そうだよ。まずは色々調べて、その上でソラちゃんを説得してみようよ」


「……ごめん。ありがとう」


 やっと、弱々しくても笑えるようになったようだ。


「お前が謝る必要無いだろ」


 だから全部一人で抱え込むなよ。

 こいつは最近色々と抱え込み過ぎな気がする。


「そうだよ。そもそも、私たち『4人』友達なんだし、そこは持ちつ持たれつだよ?」


 そんな時、チャイムが鳴った。機械を通して、劣化した音だったけれど、俺たちには澄んでいる様に聞こえた。


「行こうぜ。次理科総合だろ」

「……うん」

「とりあえず放課後になったら早速調べないと行けないな」

「そうそう」


 俺たちは絶対にソラを助けてみせる。

 前回がフェイクだったと言うのなら、今度こそ。

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