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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第17章〜Ripped Relationship〜
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246. イージートリック

「そうか……そんな事が……」

「おかげで病院はてんやわんやの大騒ぎよ。今回は何とかなったとは言え、次がもし起きたら薬が足りない」


 X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)本部。

 ハロと共にアンダー・メタリックのギルド支部を経由してワープ装置を使って戻って、鉢合わせたレメディと共に伊集院くんに事の顛末を説明したところで、僕は渡された飲み物に口をつけた。

 死ぬほど酸っぱいオレンジジュースだ。


「それにしてもハロがそう言う事件に出くわすとは珍しいね」

「そうね。私も正直焦ったわ、まさか今ホットな結社のツートップが突然湧いてくるとは思わないじゃない。ほんとツイてないわ」


 そう言うと彼女はドカッと両肘をテーブルに付けると、頭の上に浮いている天使のリングを掴んで取り外す。

 空いている片手で乾いた布と何やら四角い鈍色の石を空中に作り出すとそれが自らガリガリとリングを擦り始めた。


 ……え、まさか総帥の部屋でリングを研いでる? こいつマジで?


「まあ倒せたなら良かったじゃないか」

「倒せたと言うか、最後にアトモスの干渉があって逃げられたのよ」

「それでも君たちが怪我をしなかったのは僥倖だ」

「僥倖なんて言うけど運があるかないかと言われると微妙な所だわ」

「君はドライブの事からも考えて間違いなく運はあるだろう? 運がないのは君じゃなくて同行者の方だ」


その言葉でハロのキツい目線がこちらへと注がれるのを首の後ろに感じるのを務めて無視して僕はグラスを傾けた。本当に酸っぱい。


「まさか依頼の帰りに巻き込まれるとは自分でも思わなかったよ……」

「まあ……その、うん。アンタも大変ね」


 そう言って気まずそうな顔でハロは立ち上がると砥石とチャクラムを置いて僕の肩をポンポンと叩く。

 そういう同情はありがたいが同情するなら運気向上系のアイテムみたいな物が欲しい。あと今のでなんか鉄の粉みたいな物が僕の肩に付いた。迷惑な奴だな……


「ところで彗、あの件については考えて貰ったかい?」


 伊集院くんが薄い笑みを浮かべる。

 その薄い笑みは先日打診された時にも振られた同じ笑みだ。


「……」

「君の予想と、我々の見解はおおよそ一致している。ほぼ確定だと思ってくれて差し支えない。可能であるならここで可能性の芽は摘んでおきたいと言うのが嘘偽りの無い本音だ」


 部屋の空気が一変する。

 薄氷を踏み締めるような、予断の許さない空気。


 正直、僕の回答がなんであれギルドの姿勢は変わらないのだろう。

 だけれども、もしその結末を変えられるのであれば。


「ひとつ、条件があるんだ」

「ほう?」


 信じたくは無かったし気付きたくも無かった。でも、全ての事実は嫌な方向にしかその矢印を指して居ない。


「貴方がそんなこと言うなんて珍しいわね」

「レメディ、それは彗がそれだけ揉まれてしまったという事だよ」

「……で、条件とは?」


 この一手は、ギルドによる一手ではない。

 僕が、僕の意思で決める一手だ。


「もし……もし本当にそうだった場合には、全てが成功した暁には許しが欲しい」

「ふうん? 理由は?」


 伊集院君が紅茶の入ったカップを手に取ると、それに口をつけて僕に質問を投げかけた。


 その質問が来ることは分かっていた。

 伊集院くんは絶対に損得を天秤にかける人間だから。



「ここで潰すには惜しい人材だから、だよ」

「……」


 伊集院君の冷たい目が、僕の視線と絡み合う。その口が楽しそうに吊り上がると、その上下にあった彼の目も、愉快そうに吊り上がった。


「じゃあ、早速手配するか。レメディ、ザントに連絡をしてくれ。彗、言っておくが今回は我々は干渉しない。君の行動で全てが決まるぞ」


 この希望に縋らない術なんて、無い。





「あのさ」

「んー?」


 翌日。

 学校にいつものように通い、授業に何とも身が入らずいつもの4人でのらりくらりと過ごした放課後。

 僕は峰さんが席を外した隙に、ソラに話しかけた。


「……あのさ、ちょっといいかな」

「えっ何ー?」


 巧は部活に行ってしまった。危うく僕も引きずり込まれる所だったけど、そこは適当な理由を付けて断って見せた。

 そう言えばいつ退部届を出すべきか……


「えっと、ここでじゃちょっと言いにくい相談で」

「相談??」

「ぶっちゃけ、あんまり巧とか峰さんには聞かれたくない」


 場所を変えたい。そう端的に伝えると、彼女は頭を傾げて見せた。


「……深刻そうだね」

「うん、まあ、そうだね」

あっち(魔法界)絡み?」

「そうなる」


 ソラはちらりと教室の扉に目をやると、此方にその視線を戻す。

 それに対して、僕は無言で折り畳んだ紙切れを一枚ソラに渡した。


「……D.E.A.T.H.ってあるじゃん?」


 僕がそう言ってる間に、怪訝な顔をしながらソラはそれを開いて見せた。

 そしてそのまま、彼女は固まった。



「これ、はーーそんなまさか」


 彼女の瞳孔だけが驚愕で引き締まる。


「母さんが、朝から家にいないんだ」


 脅迫状だ。差出人にはアトモスとの記載がある。

 内容としては、母親を預かっている旨の事が記載されている。そして返して欲しいなら午後5時にあの廃墟の中へ来いと。

 なお、宇宙警察やX-CATHEDRA(エクス・カテドラ)の人間にこの事を伝えた場合、命の保証はないと締めくくられていた。



「相談、したの?」

「まさか。そんなリスクは取れないから、ソラに相談したんだ」


 そこで耐えきれなくなって、身体が震えた。この罪悪感に。


「……彗」


 ごめん。

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