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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第17章〜Ripped Relationship〜
246/269

245. 困った時は水で

入院してました……ボチボチ再開していきます!

「くるわよ!」


 ブラッディアの大剣が空を薙ぐと、血の針がその軌跡から無数に放たれ僕達は回避行動を取る。

 その遠心力をそのまま利用しブラッディアは剣を地面に叩き付けると、硬い地面に地割れが生じ、そこから血が噴水の様に噴き出す。

 更にその噴水から血で出来た鎖が伸び、此方へと襲い掛かる。


「【地形隆起(テクトニカ・デゼル)】!」


 僕は回避姿勢のまま地面に手のひらを当て、地属性魔法を詠唱。

 地形を無理やり変形させて地割れを物理的に塞ぎ、噴水を無理やり止める。


 その隙にハロは頭上からゼロ動作でチャクラムを放ち、更に懐から細い拳銃を取り出すとレーザー光線を発砲。

 ブラッディアが剣でチャクラムを弾いたす瞬間、放たれたレーザー光線がチャクラムにヒットしそのまま反射(・・)され、ブラッディアのハニワのような身体に命中した。


「ぐっ!」


 ブラッディアがよろける。

 その隙を見逃さず僕は銃を改めて構え、チャージショットを放つ。


「【BBB(ブレラバール)】!」


 彼は転倒しつつも呪文を唱える。

 ずぞぞぞ、と不気味な音と共に周囲にぶちまけられていた血液が一点に集まり血の盾を形成し、ギリギリで僕の攻撃を受け止める。


「ちっ!」


 これでもダメか。

 血の盾が急速に固められ、凝固した血の槍が盾から剥がれる様に生まれこちらへと降り注ぐ。


 回避したその槍は瞬く間に液化し血溜まりとなり、血の鎖となって噴き上がった所に僕は銃を向けてそれを破壊する。


 埒が明かない。

 ブラッディア自身をどうにかして叩かないと。


「【スピアストリームF(ラ・ストラ・バーニス)】!」


 魔力を余計に込め、更に多くの炎槍を無数に召喚。

 それを一斉にブラッディアに向けて飛ばすと、先程と同じように血が一点に集まり盾に変化する。


「ーー【反復(レペティス)】!」


 それに合わせて反復魔法で直前に使用した炎槍魔法を更に重ねがけし、炎で視界を埋め尽くす。


「【物体爆撃(ボンバラガ)】!」


 ハロが炎によって焼き固められた血の盾を対象に、爆破魔法を詠唱する。

 暗い路地裏が眩く光り、爆風が火炎を吹き飛ばす。


「ぐおおおっ!!」


 モロにその爆風を受けたブラッディアの手から大剣が落ちる。

 すかさず僕が武器の元へと駆け寄りそれを蹴り飛ばすと、その埴輪のような身体に刻まれるように存在している口がギリリ、と窄まれた。



「【ピアースショット(ペネトレース)】」

「【メタルクロー(トリメタロン)】!」


 血の盾を無詠唱で展開するブラッディアに対し、貫通弾を放ちブラッディアの左腕を貫く。

 そして怯んだブラッディアを鋼鉄化させたハロの爪が容赦なく刻むと、ブラッディアの眼が一瞬細められ、ブラッディアの身体がそのまま爆ぜた(・・・)


「なっーー」


 薄黄色の液体が周囲に飛び散ると、周囲に散らばった血液と同化していく。


 そしてカタカタと大剣が震え出すとそれが独りでに浮かび上がり、僅かにその剣先を傾げて見せると、爆ぜたはずのブラッディアの身体が大剣の柄の所から染み出て来る様に再出現して見せた。


「……この技はあまり使いたくなかったんだがな」

「マジかよ」


 身体を切っても効かない……となると流石にちょっとマズい。


 そう思案している中にもそこら中に飛び散った血液から腕が生成され、血で出来た腕が僕たちに這うようにして迫り始める。

 これを僕が銃で片っ端から撃ち抜いていくと、ハロがチャクラムで血腕を切り刻みながらため息をついてみせた。


「闇魔法使いってホントどいつもこいつもこういうのばっかりね。嫌になるわ」

「ギルド幹部が言うとなんと言うか重いね」

「ほざけ」


 しっかりと剣を握り締めてみせる彼を見て、僕達は顔を見合せた。

 恐らく僕とハロの念頭に浮かんでいる具体的な闇魔法使いは同じなのだろう。



「【ヒュドラの鮮血(コラムクルエンタ)】」



 切っ先が此方に向けられると、その先端から血で出来た蛇が無数に出現し噛みつき攻撃を放つ。

 これをハロが爪で切り裂き、僕が銃撃で頭を撃ち抜くと更に多くの蛇が剣先から出現し襲い掛かる。


「ほんと血液魔法ばかりよくこんなにポンポンと出るわね!」

「生きている時間はそこそこ長いんでな。それだけの血を俺様は吸ってきた!」


 切っても切っても再生する血の蛇。

 これでは埒が明かない。


「【連鎖爆炎(ヒバース)】、【反復(レペティス)】!」


 爆発を巻き起こす火の玉を銃から撃ち出し、反復魔法を使ってそれを数発ばら撒く。

 血で出来たヒュドラの首にそれが着弾すると次々に誘爆し、全ての首が吹き飛ばされて血溜まりと化すと同時に、攻撃が止む。


 あからさまに顔を歪めて舌打ちをすると、ブラッディアは大剣を再び大きく振りかぶり呪文を唱える。


「【ブラッディソニック(ヴェイスラ)】!」


 僕に向けて血で出来た剣波が迫り、これを飛び越える様にして回避。

 壁に激突した剣波は建物の壁を抉り取り、その場に血痕をぶち撒けていく。


 ……また、血溜まりが増える。


 血溜まりが増えるという事は、敵の手数が増えるということ。


 これ以上敵の手数が増えるのは不味い。


「最近水で押し流す事ばっかりやってる気がするな……」

「え? 今なんて?」

「こっちの話。【雨天の花(ブルイレザーネ)】、【増幅魔法(エクステンション)】!」


 サハラ砂漠での戦闘を回想し、天に向けて魔法を放つ。

 雷雲が僕たちの頭上に展開され、その直後に僕が詠唱した増幅魔法によって大粒の雨が降り注ぐ。


「なるほどね。これなら手数を抑えられるわね」

「一時しのぎだけどね」

「【プラスマキャノン(マグナプラスム)】!」


 大雨が血を洗い流して行く中、薄黄色の血漿がブラッディアの眼前に生成され、そこから血漿の大砲が放たれハロが吹き飛ばされる。


 ……血漿か。なるほど。

 それなら本当にまた押し流すか。


「ぐっ!」

「【炎の壁(ディフランマ)】!」


 追撃とばかりにブラッディア本体が斬り掛かる所で、咄嗟に炎の壁を展開する様に見せ掛け(・・・・)、壁に術式を仕込む。


「ハロ、大丈夫?」

「ゲホッ、やっぱり闇魔法は私に効くわね……」

「ならばこれならどうだ。【流血吹雪(テンペサングィス)】」


 血しぶきが剣先から放たれ、嵐のように吹き荒れる。

 その血飛沫が液状の杭となり、全てを穿とうと舞い辺りを破壊する。



 これだ。



「ーー【鉄砲水(イヌンデンス)】!」


 炎の壁が壊れると共に、そこに仕込んでおいた魔法陣(カウンター魔法)が眩い青に光る。

 炎の壁が消えると同時に魔法陣が砕け、そこを起点に濁流が解き放たれる。薄暗い路地裏を暴力的な量の水が飲み込む。


 

「ぐおおおおおおおおっ!!」

「今だ!」

「【虚栄と欺瞞の天誅(デセニテ・パニス)】!」


 ハロの詠唱とともに、空中に巨大で半透明な一対の腕が現れると、その腕から緑色のレーザー砲が放たれ、甲高い音と共に一帯を焼き払う。

 直撃を受けたブラッディアの手から再度大剣が離れる。そしてその隙を見逃すほど、僕達は甘くない。


「【加速(エクセラ)】!」


 重力加速魔法を自らに掛けて、武器を剣に持ち替えてブラッディアにそれを向けて走る。

 今のブラッディアにこの攻撃を防ぐ手段はない。これで……トドメだ。



「ーー【光閃(アミコ)】」



 金属がぶつかり合う音。

 凄まじい速度のインターセプトを受け、堪らず引くと目の前には仮面の人間。


「なっ……!」


 両剣がくるりと回転し、腹部を反対側の刃の背で殴打され、思わず怯んだ所に鋭い蹴りが自分のみぞおちに放たれる。

 堪らず数歩下がることで躱し切れずともこの勢いを殺すと、それが狙いだったのかそいつはブラッディアを支えるように掴み僕たちと距離を取った。



『撤退ダ』

「ちっ……止むを得ないか」

『言ッタ筈ダ。ソノ地球人ハイレギュラーダト』


 電子音の合成音声。

 柄の両サイドから緩やかなカーブを描く曲刀。まるでヒジャブにも見える深く被られたローブと、仮面。


「まあいい、やることはやった。あばよクソギルドの犬共」


 両剣がアトモスの掌でくるりと回る。

 剣の切っ先で魔法陣の輪郭が描かれると、一瞬眩い光が辺りに放たれ、彼女はブラッディアをそのままにバックステップを取るようにして飛び上がった。

 光が止むと同時に、その光にかき消されるかのように2人の姿が見えなくなる。


 迷彩魔法だ。



「……終わった、か」

「ふー。なかなかやるのね、なるほど銭ゲバ皇女と陰湿王に気に入られるわけだわ」


 ハロが肩の力を抜くように大きくため息を付くと、スカウターを軽く叩きながら辺りを見回す。

 鉄砲水はすっかり止まったが、路地裏はずぶ濡れな上にそこそこ地形が抉れている。


「ああ、通信回復してるわね。もしもし災害対策部、応答できる?」


 神出鬼没と言う言葉をまさに表して居るアトモスは、得体がしれない。


 だけれど、なんとなくだけれど、その得体(・・)について、確証は持てないけれども僕は察しが付いている。

 いや、付いてしまった。


「とりあえず終わったからやっと帰れるわね。お疲れ様、星野彗?」


 だから、この戦いはまだ終わりじゃない。

 ここからが本当の戦いなのだろう。

 伊集院君が言う通り、このアトモスと言う存在は危険だ。

 だから何としても、アトモスを止めなければ。

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