23. 元凶
「う……」
「大丈夫ですか?」
怪しい種を全員からひっぺがして、念の為にそれを1つ除いて、全て銃で撃ち砕き様子を見た。すると暫くして3人が目を覚まし始めた。残った一つは持ち帰り決定だ。
「ここはどこだ」
「君は?」
やはり、あの種が元凶だった様だ。
傷口に発生していたあの種を引っこ抜こうとすると予想以上に根が深く張り巡らされていて、引きちぎった途端に彼らの傷口から血を噴き出したぐらいだ。
「X-CATHEDRAの星野彗です。そして、ここは森の中です……あ!」
翌々見てみると3人の中には依頼で探している写真の犬人間と同じ人が居た。図らずも依頼達成か。
「確か森でキノコ狩りをしてたら、後ろから襲われて……」
「そうだ! てめぇ、どうして俺たちに襲って来やがったんだ!!?」
「わわっ!」
思い出したかのように一人がその人に掴み掛り、一気に場は険悪なムードへと様変わりした。何があったのかは知らないけど、なんだか取っ組み合いの喧嘩になりそうだ。
「待って待って!落ち着いて!」
「どうやって落ち着けってんだよ!」
八つ当たりのような怒号が飛んでくる。人の苦労も知らないで、こいつらは。
「皆これで操られてたんです!」
そう言って僕は一つだけ残して置いた怪しい種を見せた。
「何だァ? これは…」
「あなた達3人に襲われた時、これを引っ剥がしたら正気を取り戻したんですよ!」
それぞれが徐ろに頭を傾げる。
「俺たちがいつ襲ったんだよ?」
どうやら記憶がないらしい。なるほどそれで合点がいった。やはりこの種が悪さをしている。
「……そうだ!僕はあなたを探しにきたんですよ!」
「俺を?」
「はい。依頼で来ました」
探していた人はきょとんとした様子で僕を眺めた後、こう言った。
「ん、そうか……何だかお前らに悪い事しちまったようだし、村に戻ったら何か奢ってやるよ」
「そ、そうか。なら許してやるぜ!」
何て軽いノリなんだ。宇宙人のノリというものは理解できない。
「じゃあ行きましょう!」
「あれ? ヤケに静かだね」
「何かあったのか?」
陽気な村人たちと共に村へと戻ると、先ほどはそれなりに居た村人たちが、影も形も見当たらなくなっていた。辺りを見回しても人影が一切なく、気配と言う気配が無い。不気味だ。
「みんな」
明らかに様子がおかしくなったこの村に警戒して僕は銃を構えた。他の三人もこの耳鳴りの起きるほどの静けさに警戒しているようだ。
「はい、もしもし?」
「あ、グレイスさんですか? 彗です。今ハブルームの……」
スカウターのレバーを操作し、とりあえず登録がされていたグレイスさんに電話を掛けると、村人の1人が遠方を指さし声を上げた。
「何だあれは」
村人の指先は村の広場へと向けられており、そこには何やら巨大な木の根に覆われた、謎の緑色の固まりが浮かんでいた。
木の根だけががちがちに絡み合って出来ていたそれは何とも不気味で、まるで以前廃墟で戦った巨大蜘蛛のようにも見える。
「あんな物、前は無かっただろ」
「そうだな。誰があんな変なものを置いたんだ」
三人が揃ってその巨大な根の塊に向かって一歩を踏み出そうとすると、突然その塊は低いうなり声を上げながらこちらに気の根を一本伸ばし始めた。
「危ない!」
「へ?」
咄嗟に誰かに突き飛ばされたと思っと瞬間、僕を庇った人が大きく吹き飛ばされ、民家の壁に激突した。化け物から飛来してきた種で出来た鉄砲を受けて飛ばされたらしい。
「ぐあああああっ!」
すると彼の身体に突然木の根が張り巡らされ、彼の肉体を覆い始めた。よく見てみると、それは彼に命中した種から発芽したもので、勢い良く成長をしながら彼をぐるぐる巻きにしていたのだ。
「あの種……!」
さっき、彼らの傷口についてた物と同じだ。
グレイスに僕の見ている映像をそのままスカウター越しに見せると、彼女は絶句したように声が途絶え、小さく分かりましたと呟いた。
「フン……まだ獲物がいたのか」
そんな時、人の声が聞こえた。
「何だと?」
「なんだ、もう種が取れてしまったのか」
その声は何処から聞こえてるのか分からない。だがしかし確かに聞き覚えのある声だった。
「誰だ!」
「まあいい、貴様もスパイダルートと一つになるがいい」
種に再び寄生された彼はそのままあの巨大な化け物の下へと向かい、伸びてきた根っこに飲み込まれ、怪物の中へと消えていく。
「流石は新薬パラフェリスだ……実験結果以上の凄まじい成長だ!」
「お前は……」
やっと声のする方を特定し、近くにあった喫茶店に僕は目をやった。
「パラフェリスに汚染された種子はヒトの傷口に触れると血球を養分とし、爆発的な成長を見せるーー元は血中を漂うあの禍々しい魔力を抽出するために開発した物だが、そんな物よりも血液自体を養分として成長させた方が遥かに効率がいい!」
――スマートさん!?
「あぁ? 聞いた事無い薬だな」
「当然だ、私がつい先日作り出した新薬だからな。 パラフェリス種子はやがて攪乱ホルモンを分泌しだし寄生したヒトを洗脳する」
僕に依頼をした張本人が、優雅に腰掛けながら僕たちに開設を始める。
「その間に種はどんどん成長するが、芽を出す事はせずただひたすら根のみを傷口から外側に伸ばし、やがて根で自立歩行を行えるようになる」
「じ、自立歩行……」
「一度自立歩行を開始すると子孫を残そうと、パラフェリス汚染種子を放つ様になる」
スマートは脚を組んだ状態でお茶を飲んでいる。しかしその目はやや興奮気味であった。
「そして仲間を見つけるとお互いの根を絡み合わせ、養分を共有し融合・巨大化する。こうして出来たのが、このスパイダルートだ」
スパイダルート、と呼ばれたその怪物はひときわ巨大な根を足のように動かし、こちらに向き直った。
よく見てみると、塊の最下部に刃のように鋭い根の先端が無数に集まり、巨大な口を形成していた。
「ど、どうしてこんな事を」
「君は、噂によればX-CATHEDRAの最高司令官こなの魔力を受け継いだそうだな」
「それがどうした!」
そう大声で言うとスマートの目が危険な細まりかたをした。
「素晴らしい。最高級の魔力をスパイダルートに喰わせたらどのような成長を遂げるだろうか……と言うのはさておき、こなの魔力を受け継いだ小汚い地球人ーー我が組織のブラックリストに載るには十分すぎる理由だ」
組織?
「――私こそは『ルナティック』に従えるルナティック・スターズが一人、スマート・トキシン!」
彼は立ち上がるとともにそう名乗り、僕たちの前に立ちはだかった。
「ルナティック!?」
「な、何だと!?」
村人たちの驚愕を見るに、どうやらよくない組織の人間であるらしい。
「よそ見をしていて良いのか?」
彼がそう言うと、僕と共にいた残りの2人が、地面から突然伸びてきた触手の様な巨大な木の根に掴まれた。
その根は地面をえぐりながら地上に顔を出すと、そのまま彼らをスパイダルート本体の口の中へ放り込み、彼らは飲み込まれた。
ーー話からして、あの巨大な根の塊はもしかしてこの村の村人を喰らってあのサイズになったのか!?
「スパイダルート。その地球人の相手をしてやれ」




