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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第16章〜Rainy Revealing〜
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236. 剣と罠の螺旋

「ナナは飛べるかもしれないけど、僕は飛べないからこれは流石に無理だよ」


 扉だとか、足場になりそうなものが全く無い。

 僕は重力魔法や風魔法については空を飛べるような物は手持ちにないし、どうも探索はここまでらしい。


 

「私も流石に耳ちぎれるから飛ばないわよ。ここはちょっと変化球で上に行く」


 落下の衝撃かは分からないけど、廊下に敷かれていたと思われるクソ長いカーペットが僕たちの前にぐちゃぐちゃになって落下した形跡が ある。


 これを使ったりするのだろうか。加工して空を飛ぶ絨毯のようにするとか。


 そんな事を考えていたが、どうもナナは全く違うことを考えていたらしく、おもむろにドライブを取り出して構えてみせる。



「私のドライブはWd(ウェポンダンサー)。固有スキルは『武器庫』って言って、手に入れたことのある武器を任意のタイミングで出現させて持ち替えたりすることが出来るものなの」

「伊集院くんが持ってる奴だね」

「そうね。よく使ってるわね」


 ナナの首輪にぶら下がったドライブが、キラリと光る。


「でも飼い主のはメインドライブではないから、その能力をフルに使うことは出来ない」


 固有能力が発動され、無数の半透明な武器がナナを取り巻くように出現する。

 


「ファーストドライブであるかはとても重要よ。ファーストドライブはその能力を100%発揮することが出来るけれど、セカンドドライブ以降ではスキルの力が減衰する。スキル発動」



 様々な武器が一瞬浮かび上がっては消えて行く。

 そして最終的には夥しい量の剣が彼女の周囲の地面に突き刺さっていた。


「……この剣はどうするの?」

「上に登る手段が無いなら、作ればいいのよ。【ソードストーム(ソーフロウ)】、【上昇気流(アセベクション)】!」



 ナナの魔法で地に刺さっていた剣が浮かび上がるとグルリとナナの周りを周回し降り注ぐ。

 そこに強力な上昇気流が発生すると、空中から降り注ぐその軌道に微妙なズレが生じていき、剣が次々と壁に刺さっていく。



「はい、簡易階段よー」


 無数の剣が壁に刺さった結果、まるで螺旋階段のようになり足場が生まれる。

 締めにナナが固定化の魔法を掛けて剣が抜け落ちないように加工をした所で、刃の上に飛び乗って見せた。



「凄い!」


 刃は全て下向きになっている芸の細さだ。

 両剣については真横を向いた状態で壁に突き刺さっていて足を切らないように配慮されている。



「多分人一人ぐらいなら乗っても大丈夫よー、仮にもちゃんとした鍛冶屋に鍛えて貰った金属だし、固定化魔法もガッツリ掛けているしー」

「よく思いつくね」

「武器は攻撃するだけのものでは無いのよ」


 そう言うとナナは剣の上に飛び乗り、剣の螺旋階段を登っていく。


「じゃあ、失礼します」


 それにしてもまさか剣の上を歩く事になるなんて思っていなかった。

 剣の上に足を乗せると僅かに剣が軋む音と共に揺れるが、今の所は落ちたり折れたりする心配は無さそうだ。


「高いところは平気?」

「い、一応……」


 とはいえ、僕たちの足場は剣1本分しかないし、手すりがある訳でもない。

 落ちたら一巻の終わりだと思うと足が震える。


「あそこにT字路があって床に出来るから、そこまで頑張って」


 時折剣の階段が途切れると、ナナは下の方で刺さっている剣を再利用し階段を補修する。

 そうして上へと登っていくと、ナナの言う通り横へと伸びていく廊下にたどり着いたところで、僕達はようやく休憩することが出来た。



「地面があるって素晴らしい……」

「これを機に空中浮遊魔法覚えたら?」

「前向きに検討する……」


 サーカスでもあるまいし、剣の上を歩いて回るのは二度としたくない。


「さあ、ひと休憩したら先に行きましょ。はい、ポーション」


 ナナはそう言うと首輪に付けていた鑑札の裏からポーションを念力で取り出して僕に渡してくれる。


「ごめん、それどうなってるの?」


 物理法則どこ行った。


「あーこれ? 鑑札の裏に空間魔法掛けてあって亜空間ポケットになってるのよ。そこから小型化したポーションとか出してるの」

「これも空間魔法なんだ」

「クレイジーサイコロシアンの発案と言うか発明。四次元鑑札」


 いや誰だよそれ……とか思ってややあって、それがエリアさんの事であると気付く。



「エリアさん見てると空間魔法の……なんと言うか、可能性? は色々感じるね」

「可能性というか悪用することしか頭にないわよ。アンタ知ってる? あのクレイジーサイコロシアン暇さえあれば安いから(宇宙より安価と言)ってアメリカで手榴弾買い漁ったりしてるのよ〜?」

「えぇ……」

「地球の武器って全体的に鉄臭くて火薬の匂いするから私にはしんどいのよね〜、どうせやりもしない戦闘でしか使わないくせに家の掃除する身にもやって欲しいものよね〜……」



 ナナはブツクサと愚痴を零しながらポーションを舐め始める。


 いや、あの家の掃除ナナがやってるのか。人間共が怠慢すぎるぞ。



 五分ほど休憩をしたところでナナが伸びをしながら起き上がるのに合わせ、僕達は横倒しの廊下の奥へと再び進み始める。

 道中は一本道で伸びていて、曲がり角に差し掛かったところで落下の衝撃で外れた扉が視界に入った。

 

「貨物庫ね」

「だね」


 僕も銃を取り出して、魔力を送り込みながら慎重に足を進める。

 すると目の前には広大な空間が……黄緑色のモヤが所々に漂う空間へと出た。



「……これ空間歪んじゃってるねー」

「空間が歪む?」

「亜空間に片足突っ込んでる感じー? このキモイ色の奴が亜空間への出入口ね」



 不思議なことに、貨物の類は一切保管されていない。

 いわゆる積荷が見当たらないのだ。

 もしかしてこれは既に回収されて、出遅れたか。



『ーー止マレ』



 突然聞こえたその電子音に、反射的に身構える。

 それに合わせて前方で何かが爆発する音が聞こえ、亜空間の歪みの中から見覚えのある白い人影が出現した。



「……(ホワイト)?」

X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)……? いい所に来てくれたわ……ねっ!」


 ホワ……ウィンターさんが視界に僕たちを納めると同時に、二丁拳銃を肩越しに後方へと銃撃を始める。



「【心膜障壁(ミオカルブレン)】!」


 呼応する様に血がぶちまけられる音と共に何者かがその攻撃を遮断すると、赤黒い槍が無数に出現し周囲を薙ぐ。

 その軌道上に自分たちがいることを察知し僕達は即座に飛び退き、その攻撃をした主に相対した。



「……まさか大将が釣れるとはね〜」


 ナナはそう言うと、無言でスキルを起動し前足に鋼鉄の爪を装備した。

 僕が溜めていた魔力を消費し、チャージショットをその敵に目掛けて放つと更に人影がひとつ、その敵の前に降り立ち僕の銃撃をその折れ曲がった両剣で弾いて見せた。



「組織のツートップ揃い踏みってワケ?」

「そうよ。これで人数比では形勢逆転ね」


 ナナとウィンターさんが短く言葉を交わすと、ナナは首の四次元鑑札からポーションを念力で投げ渡す。


「援軍が来たか。不味いな」



「君は……」


 人影は2人。


『指定暗黒組織D.(ディー)E.(イー)A.(エー)T.(ティー)H.(エイチ)、デザイナー・アトモス』

「そして俺様が指定暗黒組織D.(ディー)E.(イー)A.(エー)T.(ティー)H.(エイチ)プロデューサー(首領)のブラッディアだ。貴様の話はアトモスから話は聞いているぞ」



 目に映ったのは、僕の胸ぐらいまで身長がある動くハニワみたいな姿の宇宙人で、そいつの目は真っ黒な空洞の様に見える。

 体の色は茶色で、左手には尋常じゃない大きさの大剣を握っている。くすんだ赤と眩い銀だ。

 そしてその半歩後ろには、まるで女房役だとでも言わんばかりにアトモスが控えていた。



 こいつが、敵の首魁。



『敵性体ノ情報ヲ開示……X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)四天王ナナ、保有ドライブハモデルWd(ウェポンダンサー)ヲ確認。指定暗黒組織AAAA(テトラエー)幹部(ホワイト)、保有ドライブモデル不明、対闇魔法特化ノ固有魔法ヲ確認。X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)首領コナノ魔力的クローン、星野彗……保有ドライブモデルZz(ジリオンゼニス)、固有スキル不明……』

「ほう、こいつが噂のこな皇女の魔力的クローンか……」



 そう言うとブラッディアと名乗ったその宇宙人は、その白目の一切無い目で此方を舐め回すように見つめる。

 異様に短い手足と相対的に巨大なその顔、そしてその短い手に握られた異様にデカい剣と何もかもがミスマッチしているように見えるその男(?)は、僕を一通り観察してみせるとイラついた様な声を掛けた。



「チッ、まさかドライブを発見する前にこうも厄介な奴らが揃ってくるとはな……まさか先手を取られたか」

『ソノハズハ無イ。コノ一帯ニハ空間閉鎖ヲ掛ケテアル。マダ時間ハ残サレテル』

「だが現にこうしてドライブを見つける前に敵がなだれ込んで来ている!」

『……』



 何やら揉めているくさいが、ここで先手を仕掛けるべきか。

 それとなく判断をナナに仰ごうとした所で、僕は異変に気付いた。


 


「……っ、……っく、くくっ……」


「……ナナ?」



 ナナが。

 口を抑えて涙目になりながら笑いを堪えている。



『何ガオカシイ』

「っ、ぷぷっ……っくははははっ!! あー、面白過ぎー!!」



 遂には堪えきれなくなったナナはゲラゲラと笑いだし、悶えるようにグルグルとその場でのたうち回りながら爆笑した。



「なに、がーー」

「まさか、まさかこんなしょーもな……っぷぷっ、いやほんと、マジで、まさかまだこの期に及んで信じてるなんて……」


 流石に敵が困惑の表情を浮かべ始めると、ウィンターさんは大きくため息をつき、一言決定的な事を言ってのけた。



「何で私がアンタたちよりも先回りしてここにいるのか、まさか分からないの?」

「……」


 汚い音と共に思いっきり噴き出すナナを尻目に、ウィンターさんの言葉を咀嚼した所で、ふと、この答えに気付く。


「まさか」



 いや、そんな事有り得るのか。

 


「ーーぎゃはははは! 違法ドライブなんて、最初から存在するわけないじゃない!」



 僕の脳裏に浮かんだそのまさかをナナが裏付ける。


 その口元は、酷くいびつに歪んでいた。

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