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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第15章〜Raging Rampage〜
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216. ジャミング装置

 ここに居ると、色々なことを思い出す。


「ここが、そうなの?」

「うん。ここは昔、この人工惑星一帯の通信を閉ざして空間魔法も封じるのに使われていた場所なんだ」



 旧防衛基地。

 見たところ、アレから稼働は再開しておらず、閉鎖されたままになっているみたいだ。


 電力についてもまだ復旧していないみたいで、前に(イエロー)さんが焼いた場所もそのままとなっている。

 ただし今回は、以前はついていた予備電源すら付いていない。


「行こう」


 防衛基地跡地の中は薄暗い。

 すぐに僕達は手元に光源になる光の玉を作り、それを自分の周囲に浮かばせながら歩いた。


「この大きい建物の中を虱潰しに調べるの?」

「……いや、多分その必要は無いとは思う」



 あるとすれば、恐らくは屋上。

 あるいは僕たちが爆破したサーバールーム。


 そう短く告げると峰さんは頷き、僕達は歩き出した。

 陽の光が差し込んでいるとはいえ、防衛基地跡地は何とも不気味な様相となっている上に、電源がないせいでエレベーターも使えなくなっていたからひたすら非常階段を登る作業だ。



「ち、ちょっと疲れた……」



 登りきった所で峰さんが膝に手を付き、肩で息をした。

 ソラには無い、神からの大いなる(ビッグサイズな)賜物と彼女からの甘い吐息が僕の視界と聴覚を攻撃してくるが、鉄の意志でそれ()抵抗(レジスト)する。


 ……まずい、思考が巧化している。


「大丈夫? 息を整えたら言ってね」

「う、うん……彗も、顔が、赤いね」

「えっ!? ああ、うん、流石に僕もちょっと、ね」


 いかんいかん。

 僕の視線は幸いバレていない。



 少し間を置いて、僕達はまた歩き出した。

 まずはサーバールームだ。


「扉があかないね」

「自動ドアだから、これ壊さないと開かないのかも。下がってて」


 目的地に辿り着いた所で峰さんを後ろに下げると、彼女は無言で杖を取り出し水の障壁を展開した。ナイスだ。


「【物体爆撃(ボンバラガ)】」


 爆破魔法で鋼鉄の自動ドアを破壊すると、峰さんの展開してくれた水のバリアがその扉の破片を受け止めてくれる。

 銃を構えながら慎重に脚を踏み入れつつ僕は詠唱を破棄して風で煙を払い、辺りを見回す。


「……何もなさそうだね」


 ここではなかったか。


「大丈夫。まだアテはある」


 ここに無いのなら、恐らく屋上だ。


 ……まあ、それはここに有ればの話ではあるが。


「さっきの非常階段まで戻ろう。ここにないなら、多分ここの屋上にある」

「ええっ……またあの階段を登るの……」

「僕達は巧やソラみたいに飛べないからね」


 飛行魔法、有用そうだしそのうち呪文を誰かから教えてもらおう。

 風魔法になるのかな。それとも重力魔法か。


 そんな事をぼんやりと考えつつ、最後に部屋を一瞥(いちべつ)する。


「……」


 ここで亡くなった彼女の顔が脳裏を過ぎる。

 フッと息を吐いて、僕は峰さんの後を追い掛けた。





 屋上へと近付くにつれ、魔力の波動を感じるようになった。


 この特有の、圧倒的な威圧感。


 これはついさっき感じていた物だ。


 ほぼこの先に待ち受けているものを確信しながらも、非常階段を抜け、屋上へと出ると、そこには案の定、ソレがいた。



「こな!」

「ーーえっ?」


 巨大なハルバードを滑らかに動かして、真っ黒い影の首を()ねた竜騎士が、動揺したように振り向く。


『隙有リ』


 黒い影から伸びた刃の切っ先が、こなの頬を掠める。

 ヘルムの隙間を縫うように差し込まれた刃を辛うじて避けると、こなはハルバードで切り上げ黒い影を引き下がらせて見せた。


「ちょっ、あっぶな」

「こな、大丈夫?」

「アンタたちのせいで危うく大丈夫じゃなかったんだけど」

「ご、ごめん!」


 黒い影の背後には黒い装置がある。

 アンテナが立っていて、近くによるとただでさえ使い物にならないスカウターの画面にノイズが走り、視界の邪魔になるので1度完全に電源を落とす。


 目的の物はアレだ。


「こな!僕達はアレを壊す!」

「分かったわ」

『ヤレハ……シナイ……』


 アトモスの様なその黒い影は抱えていた両手剣を振るうと、黒い真空の刃が放たれて此方へと向かう。

 これを前転するようにして回避し、峰さんと目で合図を送ると彼女は水の大砲を放ち、敵を牽制した。


「【物体爆撃(ボンバラガ)】!」


 試しに妨害装置を爆破しようとした所で、目に見えない力場のような物が一瞬機械の周囲に発生し僕の呪文を妨害する。


 やはりダメか。


「【部分召喚(パウロ・オルビス)】」


 こなの詠唱で魔法陣が現れ、先程暴れていた竜がそこから首だけ出現し炎を噴く。

 黒影はこれを空中に離脱することで回避すると光の剣を作り出しこれを投げ付け、竜の頭が串刺しになると巨大な悲鳴と共に竜の頭が魔法陣の中に押し込められ消えて行く。


 峰さんがこなに補助魔法を掛けると目では追えない速さでこなは敵に接近しハルバードの柄で殴り付け、その黒い影が吹き飛ぶ。


「【ウインドブーマー(ウインドブーマー)】!」


 僕はその隙に装置に近寄り、風の大砲を放つ。

 機械の表面に傷が生まれ、それを察知したかのようにアトモスのような影が、此方にヘイトを向けた。


「やばっ」


 剣を取り出して敵の薙ぎを防ぐと、その背後からこなが衝撃弾を放ちアトモスが吹き飛ぶ。

 その隙に僕は剣に魔力を纏わせ、刃をジャミング装置に叩き付ける。


「くっ!どうして壊れないんだ!」


 叩いても叩いても壊れない。


「待って彗!【瞬間剛力(モメンタ・ヘラクリス)】!」



 見かねた峰さんからの補助魔法を受けて、身体に力が漲って行く。

 これなら、行けるかもしれない。


「うおおおおっ!!」


 剣を高く掲げて、勢いよく振り下ろす。

 剣が金属の塊に沈んでいき、紅い火花を散らしつつその塊を真っ二つに裂いて地面に打ち付けられる。



「終わりよ」



 同じタイミングで、こなのハルバードがアトモスの首を容赦なく刎ねる。

 刎ねられた首と別れた胴体が、元々影のように黒かったのが更に黒く染まり、弾けるように消滅する。


「大丈夫!?」

「ええ。数年ぶりにギルメン(ギルドメンバー)以外から傷なんて作ったわね……」


 彼女の頬から、ツツー……と一筋の紅い線が出来ていた。

 白い体毛を濡らして居たそれに対して、こなは回復魔法を詠唱破棄して使用し傷だけを塞ぐ。


「す、数年ぶりなんだ」

「強者番付の試合は別よ。変な話あの大会も上に行くほどギルメンの割合高くなるし顔見知りばかりだから……でもそれ以外では本当に久しぶりよ」


 そう言うとこなは傷口を素手で拭って見せた。

 ほんのりと赤い血が彼女の手の体毛に滲んだ所で、こなのスカウターが鳴って見せた。


『……ーーな!こな!応答しろ!』

「こちらこな。ようやく通信が回復したみーー」




『至急戻れ。ハブルームの刑務所が突破されてスナームが脱獄した』



「……は?」

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