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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第15章〜Raging Rampage〜
212/269

211. パーティ

「ガアアアアアッ!!」



 自分を抑えつけていた敵の戦闘員がソラに撃ち抜かれた事で、龍は大きく雄叫びを上げる。

 これに対して、巧が飛び上がると共に峰さんが更に呪文を唱えた。


「【聖水変換(ホルン・アエクス)】!」

「【焦土塵炎(フラマ・アングイ)】!」


 巧が床を手甲で殴り付けると同時に、凍結した高速道路に火が燃え広がる。

 そして出来た水蒸気に峰さんの補助魔法が掛かり、光属性を帯びた霧が立ち込めて黒龍の視界を塞ぐ。


「ソラ!」

「任せて」


 空中に居て場所が分かりやすいソラに対して黒龍が氷の槍を投げ付けると、彼女は足場にしていた魔法陣を消す事で横になったまま落下しこれを回避。

 その隙にウィンターさんが拳銃に魔力を込め、光属性のチャージショットを先程ソラが展開した光の杭の傷跡に叩き込むと、黒龍が痛みで悶え苦しみ始める。



「ゴアアアアアッ!!」



 立ち込める霧の中で黒龍が暴れ、僕達はその隙に僅かに距離をとる。

 巧がすぐ側までやって来たので、彼に視線を送ると巧は頷いてみせた。


「【正の電極(アディエレック)】、【マグネボール(マグスフェーラ)】」


 巧が自身に電荷を掛けながら電気の球を撃ち出す。

 これに合わせて僕は霧の中を走り、武器の剣に再び電気を纏わせ龍の背中を一閃。

 龍が仰け反りながら怒りの眼差しで僕を探そうと振り返った瞬間に巧の電気玉が被弾し、龍はまた悲鳴を上げてみせた。



「峰さん、カバーお願い。【ロックオン(スローシ)】」

「分かった。【濃霧(ミストン・グロン)】!」


 ソラの声に合わせて、峰さんが濃霧を巻き起こす呪文でいよいよ視界が完全に塞がれ、発砲音が四方から響く。


「【光の螺旋(ラグラインド)】!」

「【電光(エレクトレーザ)】」


 ウィンターさんの声とソラの呪文が聞こえると、それを追うようにして龍の雄叫びが聞こえ、突風が吹き霧が晴れていく。


「尻尾で無理やり薙いだのね」

「やっぱり動きを止めないと……」


 龍が突進攻撃を仕掛けてくるので僕と巧はこれをダイブして躱す。

 すれ違いざまに2人で通り過ぎる龍の巨体を切り付けると巧は足裏から炎を出して空中に飛び上がると、雷槍から放電攻撃をし始めた。


「ソラ、さっきの呪文を!」

「【光の杭(ルクス・コンジェル)】!」



 空中から光で出来た杭が高速で落ち、龍の身体を穿ち縫い止める。

 そこで再生しかけた龍の眼を狙い、飛び上がりながら剣を薙ぐと、龍は大口を開けてこれを回避しつつブレス攻撃への溜めに入った。


 1人であれば回避不能だったそれを、峰さんが重力操作で僕の身体を無理やり上空に落ちる(・・・)様に重力を反転させると、ソラが空中に足場になる黒い魔法陣を展開し僕はそれに着地した。


「ゴァァアァアア!!」


 黒龍のブレスが光線状に放たれ、高速道路ごと大地が抉れる。

 大地の傷跡には氷が隙間なく張り付いており、ブレスによってまた一段と空気が冷え込む。


「さみーなクソ。【スピアストリームF(ラ・ストラ・バーニア)】!」


 いつの間にか頭に雪が積もり始めている巧の詠唱で、炎の槍が無数に放たれる。

 これを黒龍は縫い止められながらも自由な尻尾で薙ぐ事で炎の槍をまとめて吹き飛ばすと、辺りに炎の槍が着弾し畑が燃え上がりはじめる。


「峰さん!」

「うん!【テンタクリア(カタクリニス)】!」


 雪と氷が溶けて生まれた水溜まりから、水の鎖が勢いよく飛び出すと龍の身体に巻き付いていく。

 そして黒龍の生み出す冷気がそのまま水の鎖を再び凍らせると、いよいよ雁字搦めになっ

た黒龍を見て、ウィンターさんが頷いた。



「【アンチダークネス(プロドテネブラ)】」



 彼女が掌を太陽に向かって掲げると、彼女の純白の身体がくすんで見える程の純白が、掌に生まれる。

 その気球ほどの大きさのある純白が、まるでバレーボールでスパイクするかの様に河北黒龍へと投げつけられると、その着弾地に白炎が舞い、龍を吹き飛ばす。


 吹き飛ばされた龍は、身体を穿っていた杭に耐えきれず身体が裂かれ、一際巨大な悲鳴をあげて見せた。


「彗!」

「こっちだ!」


 ソラが空高くに足場魔法陣を展開し、巧がそれに着地し、彼の声に合わせて僕は飛び上がる。


「【負の電極(サブエレック)】!」

「【アイスタワー(フロスプラウ)】!」


 巧の詠唱で僕にマイナスの磁力が付与され、巧のいる魔法陣の裏側に貼り着く。

 それと同時に峰さんの攻撃魔法で地面から氷の柱が突き上がり、黒龍を跳ね上げてみせた。



「それにしても巧が電気のドライブとはね」

「俺も考えてんだよ。そっちはやれそうか?」

「星野先輩のかっこいい所を目に刻んでおけ」

「はっ、言うじゃん」



 その言葉を合図に、脚に力を込める。

 跳ね上げられた龍は、無防備にも顎の逆鱗を此方に向けて晒している。



 今だ。



「ーー【正の電極(アディエレック)】!」

「ーー【物体爆撃(ボンバラガ)】!」



 自分に付与された極性が反転する。

 それに合わせて巧が飛び上がると、僕は先程まで貼り付いていた足場魔法陣を爆破し、磁力と衝撃、そして重力を利用しトップスピードで黒龍に向かって落ちる。


 その状態で竜殺しを横に薙ぐと、剣が逆鱗に触れそれに傷を付ける。

 しかし逆鱗ごと首を刎ねる事が出来ず、そのまま僕は剣を龍に押し付けたまま、加速に身を任せるように地面に向かって高速で落下。

 逆鱗を傷つけた事で黒龍が一瞬声を上げるが、それを無視し落下のエネルギーを利用して黒龍ごと地面の畑に向かって突っ込む。



「うおおおおおっ!!」



 着地と同時に、その衝撃が腕と脚に伝わり、自分と黒龍双方の骨が悲鳴を上げながら砕ける。

 そして落下の衝撃で剣が逆鱗を、肉を、そして骨を割り、最終的に地面に直撃する感覚が自分の割れた骨を伝う。


 遂に胴体と別れた龍の首が一瞬目を見開くと、龍の頭と身体から同時に血が溢れ、それが宙を舞う。



「はあっ、はあ……」



 シールドの自己修復機能(ヒーリングファクター)でなんとか粉砕骨折した腕と脚だけは治し、剣を支えに立ち上がる。


 それと同時に、龍の首がドサリと僕の横に落ち、続いて黒龍の身体が畑の中に倒れる。

 最後に黒龍の血による雨が僅かに降り注ぐと、その頭が僅かにビクビクと動き、やがて完全にこの活動を停止して見せた。



「すご……」


 誰かがそんなため息を漏らす。

 そんな中で僕は、少し血で汚れた手を耳に当てて、スカウターを操作する。



「こちら星野、敵戦闘員および黒龍を撃破しました。依頼完了です」



 パーティの初戦は、大金星だ。

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