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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第二章~Sanguineous Seeds~
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20. 12属性

「よっし!」


 スカウターも着けたし、銃も在る。ドライブももちろん起動済み。

 準備は万端だ。これなら何が来ても大丈夫!……なはずだ。


「えっと」


 森の入り口に到着するのにそう時間は掛からなかった。マップマップ……とスカウターをいじると現れたそれを見つめると、やっぱり広い。


「……」


 この森のどこかに、見分けのつく場所が鼻のほくろしか無さそうな宇宙人が居るらしい。地球の夜明けまでに探し出せるだろうか。


 森の中に足を進めると、ふとこの森が凄く静かな事に気付いた。風の音と匂いが心地いい。よく見ると森の樹木は地球の物と比べると若干色が濃い。なんだか癒されるような気がした。



 ――ピピッ!


「うわっ!?」

『もしもしー』


 森林浴をしているような気分でいると、唐突に鳴ったスカウターの音に驚き現実に引き戻された。

 どうやら電話みたいだ。


「どうしたの?」

『今飼い主が言ってたから疑問に思った事が一つあってー』


 飼い主と言う言い方に疑問が湧いて、やがてそれが伊集院君と言う結論に至った。


 なんだか分かりにくい言い方だ。つまり、電話の相手はナナと言う事になる。


 ナナのスカウターの……電話番号と言えばいいのか? とにかくそれは電話帳というかなんというか、まあとりあえず登録していなかったので後で登録しておこう。


「何?」

『アンタどんな魔法知ってるのー?』

「え? どんな魔法、って……」


 えーっと。


「……何も」

『は?』

「何も知らない」

『は?』

「……」


 言われてみれば、だった。


 つい、RPGゲームのノリで、戦っていくと勝手にレベルアップ形式で覚えると何処かで思っていた。僕の考えの浅はかさが伺える。


『えっ、ちょっと待って何それ』

「……」

『うわー、そんなんで大丈夫かよー』

「どうしよう……」


 ナナが電話の向こうでドン引きしているのが分かる。


『えーとねー、何で本屋で《初歩からの戦闘魔術》とか、《初心者の日用魔法集》とか、《困った時の魔法百選》とか、《生死を左右する魔術》とか、 《ミミズでも出来る魔法》とか、《魔法ヲタの選ぶ魔法》とかさ、そういう魔導書を買わないわけー?』


 そんな本があったのか。


 ……知らなかった。


「何とかなるかなーって……」

『なる訳ないでしょー? もう……じゃあ今から助っ人をそっちに送るから、頑張りなさいよね! 別に心配してるわけじゃないんだからねー!』


 観光ガイドを立ち読みしておきながら、魔導書なんて物は探そうともしなかった自分にとって、ナナのその発言は朗報だった。


 助かった。一安心だ。


「ありがとう」

『じゃーそこで待ってて、アンタのスカウターの位置情報から場所割り出して送るから』

「わかった」


 我ながらバカだった。 初めて受ける外部の依頼で、危うく大失態を犯してしまう所だった。


 暫くそうして反省していると、ふと電話帳を思い出したのでナナの番号を登録していく。

 そうこうしているうちに、気が付けば何だかこちらに向かってくる人影が見えた。


「はーいおまたせ! ええっと星野君よね? 軽ーく妹のこなから話は聞いてるわー。私の名前はマヨカ・レジーナ。よろしくね?」


「よ、よろしく」


 何だかダイナミックな人だ。こなの姉と名乗るこの人は妹たちより若干太っていて、耳にはピンク色の貝の様なアクセサリーだかが付いている。


 左手には火傷の痕が付いていて、彼女自身もまたピンク色の服を着ていた。

 腰に下げていた武器は、何とも重たそうなモーニングスターだ。パワータイプだろうか。


「それで魔法の件だけど、ドライブはこなと同じZz(ダブルゼット)だっけ? 確かZillion-Zenith、無数の頂点の略だったはずだし特に属性が無いはずなのよねー」


 無数の頂点……そんな意味が込められているのか。


「属性?」

「えーそんなのも知らないの? 属性ってのは全部で12在って、火、水、雷、木、地、風、毒、金、光、闇、虚、重に分けられるの。戦闘の基本中の基本よ?」


 12も属性があるのか。多いな。

 火水雷木とせいぜい光と闇があればそれで十分だと思うのだが。あるいは五行とか。


「特に属性がないってどう言う事なんですか?」

「ドライブの名前は基本的に大文字と小文字の組み合わせで出来ていて、それぞれが言葉の頭文字を取ってるのはもう分かるよね」


 いや、今初めて知った。


「地球でドライブが完成した事から地球で広く使われている、英語のアルファベットが名前に適用されたんだけど、この26文字ってのは実は12では割り切れないじゃない」

「うん」

「じゃあ、この余り2は何かと言うと、これは法則に合わない特異数を表していて、この法則から飛び出ている物については属性がないの、言い換えれば、属性は12とイレギュラー枠の1で合計13種で成り立っているわけ。そしてそのイレギュラーが無属性なの」


 なるほど。全く分からないけれど要するに、特別と言う事か。


「属性のある人間は戦闘中に使う魔法に自然と傾向が出て来るの。火属性の人は炎魔法を多く使うし、水なら水を出す。けれども、Zz(ジリオンゼニース)は無属性だからそういう偏りもないし、基本的に何でも吸収することが出来るの。お分かり?」

「つまり何でも出来てお得、って事?」

「よく分かってるじゃなーい!」

「……」


 話が難しいが、要するに魔法なら何でも使える、という認識でいることにした。


「まず使ってみたい属性とかあるの?」


 あらかた自分の中にその情報を落とし込んだところで、マヨカがそんな質問を投げかけてきた。

 使ってみたい属性と言われてもピンとこない。ああ、でも魔法と言えばやっぱり。


「火、ってどんな魔法何ですか?」

「火に興味あり? 火ってねー、毒や電気と併用すると相性がいいけど何て言うか……子供っぽい……感じ? 地球人って何で火が好きなのかしら」


 今の発言、なんだか納得いかないな。


「いや、火がいい」

「ふーん……」

「教えてください」


 火と言えば王道、シンプルかつ高火力。地球人の先祖は火を扱うことによって進化した。なのにその言い方は納得が行かない。ちょっとした意地だ。


「まーいーけどー、火の魔法の基礎は手の平に丸い火の玉を発生させる事から始まるわよ。頭の中にイメージしてみて」

「……」


 頭の中にイメージ、か。そう言われると、僕は頭の中で、手のひらに火の玉を浮かばせているビジョンを作った。


「出来た? じゃあやってみて」


 やってみて、って……


「――えい!」

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