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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第二章~Sanguineous Seeds~
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19. 緑星ハブルーム

 惑星ハブルーム。


 地球の存在している銀河とはまた別の銀河にあるらしいこの星は、地球よりもやや大きく、自転や公転の時間も地球とは異なっている。


 この星から生まれた知的生命体は合計で3種類だ。


 まず初めに大樹などの上に住み、梟のような姿をして飛行する宇宙人。

 次に、ナナを巨大にしたような犬型宇宙人で、彼らは主に地上に居る事が多い。

 そしてもう1つが、蝶のような妖精のようななんとも言えない姿をした宇宙人で、彼らは地上にも空中にもいる。一番宇宙でよく見かけるのは犬型のハブルーム星人だ。


 地球的な呼び方では、梟の方はαハブルーム星人、犬型はβハブルーム星人、そして蝶型のはγハブルーム星人と呼ぶ。これは伊集院くんがそう前に教えてくれた。

 ハブルーム星人は、惑星の特徴からかは不明だが風や木属性の魔法使いが他の惑星よりもやや多いとの事。

 γハブルーム星人には光合成出来る個体もいるらしいが、基本的に草食文化で肉はあまり食べない。らしい。


 らしいと言うのは、つい先程観光ガイドを立ち読みしてみて得た知識で、全く自信が無いためだ。


「凄いなあ」


 辺りを見回せば、どこまでも緑が続いている。

 草木がこんなに生い茂った場所なんて在るんだなと思いつつ、僕は初めて別の惑星への一歩を踏み出した。


「……」


 見渡す限りの大自然。左に草原、右に森、前に大樹、後ろに村がある。非常に分かりやすい。


 右の森は鬱蒼としており、薄暗くなんだがジメジメとした雰囲気がする。

 左に広がる大草原は本当に草原としか言いようのない特徴の場所で、緑の果てに地平線が見える。木の一本も遮蔽物は無い。


 僕の眼目に映る大樹は、時折梟のような宇宙人が羽ばたいているのが見える。恐らくはアレがαハブルーム星人と言う種族なのだろう。

 真上を見上げても大樹の全容を捉えることが出来ない程度には巨大で、首が痛くなるので見上げるのをやめて僕は後ろへと振り返って村を眺めた。



「これもまた極端だなあ」


 家で伊集院くんからもらった世界地図ならぬ宇宙地図を開いてみた際に知ったが、緑星ハブルームは文字通り緑色の惑星だった。

 緑色の理由は、この惑星の大半が植物で覆われていて、海よりも陸地の方が圧倒的に多いためだ。

 海というか、池か? 少なくとも海と言うには小さすぎるような。


 この惑星は殆どが陸地で構成されており、生命の進化や営みに必要な水は、全て天空に存在する『雲海』と呼ばれる、文字通り雲の海から降ってくる大雨で賄われている。

 この惑星を完全に覆い尽くしている緑も、この雲海から齎される恵みによって全て賄われていると言うのだから驚きだ。


 緑に包まれている星は、街なども緑に包まれていて、惑星全体の傾向として緑と共存する形で文明が発展してきたらしい。



 一先ず村へ僕は足を進めた。

 村の建物も全て木造で、地面は全て整備された芝生で覆われていて土が見えないくらいには緑一色だ。


 環境保護を推進していけば、地球も最終的にはこんな星になるのだろうか?

 そんな事を考えながら辺りを見渡してふと気づいたが、依頼主が見あたらない。

 どうしようかな、お店でも眺めようかな、そう思っていたら一人の犬人間が現れた。


「やあやあ、君がX-CATHEDRA(エクス・カテドラ)の者ですね?」

「はい!」


 ナナとはちょっと似ているけど、やはり生物学的に違う。

 地球人サイズの犬人間だ。


 それこそ顔はコッカースパニエルのようだが、手足などは地球人の物に近く、まるでエジプトの神アヌビスのようなイメージを受ける種族だ。

 残念ながら見た目は地球人なのにケモ耳だけ申し訳程度に着いているようなファンタジー人間ではなかった。


「はじめまして、スマート・トキシンです。地球人とは珍しいですな」

「星野彗です。X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)に入ってまだ日が浅いですが、どうかよろしくお願いします」


 何だか目つきの鋭い人だと感じた。フード付きのクロークを羽織っている。でもフードは被っていない。

 体毛は茶色で短めだ。犬顔と言うか僕から見たらほぼ犬なのだが、鼻はやや短めで鼻は薄い黒だった。


「早速で申し訳ないですが、行方不明になった子はコイツです」


 彼はそう言って、僕に一枚の写真を渡してくれた。


「……うーん、何か特徴とかはありますか? 正直そこまでピンと来なくて」


 彼の渡してくれた写真を見て、内心でため息をつく。


 ……なんと言えば良いか、正直な意見としては、今僕の目の前に居る依頼主と全く区別が付かないのだ。


 これがおばあちゃんの言ってた『外国人はみんな一緒に見える』病なのだろうか。

 僕の場合、この病は外人ではなく宇宙人に適用されているらしいが。

 全く見分けがつかない。


「ああ、それでしたら鼻の黒子(ほくろ)が特徴です」


 スマートさんに言われなかったら絶対気付かない特徴だ。


「分かりました、じゃあ早速探しに行ってきます。森の方ですよね?」

「ええ。では、何かありましたら私は村の転送エリアに居ますので、お声かけください」


 まさかそんな特徴じゃ全く分からないとは言えないので、内心冷や汗を描きつつも頷いて見せる。


「分かりました!」


 よし、頑張るぞ!


 そう気合いを入れると、僕は一目散に森に突っ込むのであった。何と言っても初めての依頼、しっかりこなさなくては。


 とりあえず先程の場所まで戻って、右に行けば森だ。何としても依頼を成功させるぞ。


 鬱蒼としているあの森だけれども、基本的に僕にはスカウターがある。道に迷うことは無いだろう。

 何なら、道中に目印を付けておくのもいいかもしれない。いきなり迷子になるのは嫌だしね。







「……フ」

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