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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第14章~Rocking Royalties~
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198. 彗の身の上

「で、星野くんは?」


 トンプスに話を振られる。


 なんか重たそうな雰囲気しかなかった最初のアーティさんの後に僕に身の上を聞かれても、正直そんな期待されるようなものは無いのだけれども……


「僕は、本当に普通の生活をしていただけです。ただ、4ヶ月前に高校に入ったその日に帰りの電車でなんか変な黒い奴らに襲撃を受けて、それをきっかけに魔法使いに、進化して……」


 そこでふと目を上げると、そこには目を点にしたアーティさんとトンプスが居た。


「いやいや、もう冒頭から色々とおかしい。まず、変な黒い奴らってなんだよ!?」


 アーティさんから突っ込まれて、考えてみる。


 ……そういえば、僕はあの事件の顛末を知らない気がする。

 あの事件、僕にとってはそこそこ大きい人生のターニングポイントだったはずだけれど。あの事件がどのようにして終わったのか、僕は知らない。


「うーん、言われてみれば、伊集院くんに聞いていなかったかも……」

「お、おう……というか、やはりアイツが噛んでるのか」

「たまたま電車で伊集院くんとこなが乗っていて。そこで僕がーー」

「たまたま?」


 話をしていた所に、アーティさんが聞き間違いでもしたかと言うような表情で割り込む。


「え?」

「えっ、ごめん意味が分からない」

「えっ?」

「伊集院と殿下が、たまたま同じ電車に乗り合わせる? 何それ??」


 完全に困惑仕切っている二人に対して、自分まで困惑してくる。


 そんなにおかしいのだろうか。

 そう考えているとそれが僕の顔に出ていたらしく、トンプスが口を開く。


「……まず初めになんだが、殿下が地球に居る理由がまずわからない。伊集院の方もそんな殿下を乗せて電車に乗っていると言うのもはっきり言って意味不明だ」

「……どうしてですか?」

「だってアイツらは2人とも空間転移が使えるし、伊集院と殿下がたまたま乗り合わせた電車にたまたま襲撃があったなんて、そんな事は有り得ない。地球の乗り物を利用すること自体がナンセンスだ。2人ともワープできるし、そもそも殿下は皇女だぞ」


 ……言われてみれば、だ。


 確かに、二人とも好きな時に好きな所にワープしてくるし、それに確かに二人がたまたま乗ってた電車が襲われると言うのもよく分からない。

 こなが皇女なのは正直忘れていた。


「じゃあ、どっちかと言うと僕がたまたま乗り合わせたのかも知れません。いずれにせよそこで僕は魔法使いにーー」

「いやごめん、それも正直おかしい。だとしたらなんで君は殿下の魔力を100%受け継いでいるんだ」

「へ?」


 再び話の最中に割り込まれる。


 トンプスの指摘は続く。


「魔法使いに進化する際は、周囲にある魔力を全部まとめて取り込んで進化するものだ。進化した者の魔力は漂ってる魔力の持ち主のドライブ指数を魔力を出した人の総数で割り算すると概ね算出できる。だがお前には殿下の魔力しか宿されていない。これは明らかにおかしい」



 その指摘に、思わず固まる。


 言われてみれば、巧と峰さんは、(サソリ)(イエロー)さんの魔力を取り込んで進化しているが、僕はこなの魔力しか取り込んでいない。

 そこには伊集院くんもいて、黒装束共も居たのに、だ。


 本来なら、伊集院くんの魔力とかも取り込んで居てもおかしくないはず。

 と、ここまで考えた所で、ふと思い出す事がひとつ。


「あ、僕どうも対魔法体質? とかいうレアな体質らしいんです。母さんも魔法使いんですけど、母さんの魔力とかはその体質のせいで遺伝とかしてないみたいで」


 僕の言葉を聞くと、二人は目をぱちくりさせる。


「対魔法体質ぅ〜?」

「は? んなアホな」


 トンプスとアーティさんが目を合わせる。

 そこまで言われると、流石にちょっと動揺してしまう。



「対魔法体質で、電車に乗り合わせたらたまたま変な奴らに襲われて、そこにたまたま宇宙最強の魔法使いとソイツの次に強いと思われる魔法使いが居合わせていて、尚かつ次席の実質MP無限の奴の魔力すらを拒否して世界最強の方の魔力だけを吸って進化したって? 有り得ないだろそれ」

「待て、殿下の次に強い魔法使いはこの俺だ。断じて伊集院ではない」

「あ、ツッコむところそこなんですね……」

「いやお前もさもツッコミ側みたいな顔してるけどお前もボケ側だぞ」

「ええっ!?」


 トンプスがムッとした表情を浮かべると、思わず僕はそう突っ込んでしまった。

 そこにアーティさんのツッコミが更に入ると、トンプスは僕に向けて指を指しながらこう告げた。



「賭けても良い。お前の出会いや魔力は仕組まれている。それも殿下にではなく、伊集院の方にな」


 そう言う彼の言葉は力強く、確信を持っていた。


「その心は?」

「時の守護者としての確信だな。俺たち守護者にしか分からない事案だ、悪いな」


 そう言うと彼はとぼけたように肩を竦めてみせる。


 何かとても重要な話を図らずとも聞いてしまったし、とても気になる話なのだが、ここで話を切られると予想していなかった僕の不満が顔に出ていたのか、トンプスは最後にこう付け加えた。


「まあそんな顔をするな。どうせその内俺とお前はより深く関わることになる。今はその時ではないって話さ。時は大切だ。時を間違えてはならない」


 そこで、僕の身の上話は終わってしまった。


 今回の一件については、色々と確認すべき所が出てきてしまった。


 伊集院くんが僕を魔法使いに進化するように仕組んだ。

 そんな事が本当に出来るのかは分からないが、言われてみれば、不自然な所が無いこともない気がする。



「で、トンプスさんは?」

「ん〜俺か? 自伝読んでくれよ」

「まあまあそう言わずに」


 アーティさんがそう言うと、茶化すようにトンプスが言う。


「そうだなあ……じゃあ、自伝に書けなかった事でも言うかなあ……」

「おおっ、待ってました!」

「自伝なんて出してるんですか?」

「買ってくれたらサインするよ」


 ちゃっかり宣伝に余念のないトンプスだが、彼は一息つくと、ゆっくりと話し始める。


「それにこれは……そこの星野くんに取っても他人事ではないだろうしな。ではまず、先代の時の守護者との出会いの話でもしようか」


 先代。

 それはつまり、かつての戦争……キメラ戦争を戦い抜いた、偉大なる時の守護者ザイゲイスの事だ。


「知っているとは思うが、守護者と言うのは、その名の通りこの宇宙を守るために存在する。守護者は世界に三人いて、それぞれが光、闇と時を司っている」


 複雑な表情を浮かべる彼はこう続ける。


「そもそも当代の守護者共は揃って異例づくめなんだよな。守護者ってのは本来その一生をひっそりと過ごすもんらしいが、時の守護者は芸能人だし闇の守護者は宇宙を股に掛けるギルドの創設者。光の守護者こそ秘境でひっそりとしてるが、その正体は世にも珍しいインテリジェンスウエポンで生き物ですらない」


 初耳の情報がどんどん入ってきて脳が情報過多に苛まれる。

 インテリジェンスウエポンて。そんな物実在したのか。


「まあ、先代たちがみんな戦争に巻き込まれたからってのもあるが、そんな訳で今期もそれをやや引きずってると言っても過言ではないんだよな。で、俺が守護者になったキッカケだが……俺は昔、アンダーメタリック……メタリック星の裏側に潜んでいたストリートチルドレンだった」

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