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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第14章~Rocking Royalties~
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193. 義理の親的な何か

「【機関掃射(バルカレット)】!!」



 駆け寄りながら呪文を唱え、弾丸を無数に乱射してエペレスの防御を誘う。

 開幕からさっきの天使ゴーレムを使われる前に、エペレスの行動を縛る。あんな物は使わせない。それが僕の作戦だ。


「【三点障壁(ブロテクトライ)】」


 誘いに乗った皇帝がビットを一つ使い、三角形のシールドを展開し僕の銃撃を受け止める。


忿(いか)れ ケーー」

「【ピアースショット(ペネトレース)】!」


 他のビットがぐるぐると回転し、エペレスが召喚呪文を唱えようとする所に貫通する弾丸を詠唱で撃ち出し、その詠唱を強制的に中断させる。


 あの重力反転魔法と、ビットのバリアと、拡散破壊ビーム、そして天使しか魔法は見てないから自信は持てないけれども、少なくともあの中で僕が一番使われて困る魔法は敵の総数が増える天使魔法だ。


 前に伊集院君が言っていたマンチェスターユナイテッドだかなんだかの法則だか、名前は覚えていないが、流石の僕でも敵の数が増えるとそれだけ圧倒的に不利になる事ぐらいは分かる。


「【鉄糸線(フェロリア)】」


 こんぺいとうのような形に変形しているビットが2つ前に出てその間に鉄の糸が敷かれ、貫通弾を真っ二つに割る。

 そのまま僕目掛けて鉄の糸を1本引いたビットが回転しながら迫り、それを飛び越えるようにして躱すと共に残りのビットにエペレスが指示を飛ばすのを視界の端で捉える。


「【編隊飛行(フォルマフルーゴ)】、【反復(レペティス)】」


 バチンと音が鳴ると共に鉄糸が弾け、4つのビットが交互に突進攻撃を仕掛けてくる。

 これを銃で軌道を逸らしつつ自分もステップを踏みながら回避し反撃を試みるが、反復魔法によって繰り返しビットが体当たりを仕掛けてきて攻撃の隙が見当たらない。


「【重力転穴(アグラホール)】」

「くっ、そ、マジかよ……」


 ダメ押しとばかりに反転重力の穴が皇帝の影から出現し、攻撃がより立体的となりますます逃げ場が狭くなる。

 時折ビットが掠り、服の端々が裂け、皮膚が破ける。



 ……ああ、なるほど。


 立体的、か。



「【光の螺旋(ラグラインド)】!」



 無い隙を無理矢理見つけ、捻れる光の光線をを銃から放つ。

 無理矢理な攻撃のせいで自分自身に隙が出来てしまい、こんぺいとうの様なビットが腹部に命中し転ぶと、エペレスの影から重力反転の穴が自分の真下まで移動し天井に叩き付けられる。


「【三点障壁(プロテクトライ)】」


 重力魔法に強気で出せる光魔法に対して、エペレス陛下のビットが3つ集まり大きな盾を展開し、光の攻撃を防いでみせる。


「【ポイズンショット(プルトクス)】!」

「【偶像の威光(イドロモスト)】」

「【孤月線(アクレーザ)】!」

「【パープル・ドーン(バークビオラ)】」


 銃から毒の弾丸を繰り出すと、光のカーテンが出現しそれが靡くようにして毒の弾丸を相殺してみせる。


 それが光魔法ではなく虚属性の魔力を感じて眉を顰めた所でビットが再び動き始めたので、これを上手く相殺されないように曲がるレーザーを撃ち出して曲射を試みる。


 そこでまた聞きなれない詠唱と共に、今度は部屋が紫色に染まり皮膚に焼けるような感覚が走る。


「くっ!」


 光魔法によってレーザーを相殺されたのか。


「やはり無属性と言うのは、それだけで強いのう」

「12属性全てを偏りなく使う事が出来るのはやはり素晴らしいですね。しかもあの魔力量、これ彼の攻撃を何か被弾したら普通にガッツリシールド持ってかれて痛そうですね」

「そうじゃのう。流石は我が娘と同じ魔力を持つだけはあるのう……そういう意味では、ある意味あやつも我が息子と言えるのかも知れんな」

「息子ですか。畑違い(・・・)の隠し子ですか?」

種違い(・・・)でもあるのう」

「おっと、一本取ったつもりが陛下に一本取られましたね」

「なんだコイツら……下品過ぎる……」



 トンプスが皇帝カーゼルと共に外野でひそひそと論評している……かと思いきや、何だか凄く失礼なことを言われた気がする。

 少なくともそれを横で聞いていたアーティと呼ばれていた地球人がボソッと非難の声を上げてドン引きしてみせると、ため息をついてこちらに視線を寄越し、その目が細めた。


 僕は首の後ろに刺さる視線で読み取りながら、そろそろ次の一手を差し込むことにした。


「ふむ。思えば貴方は我が娘と同じドライブであったな。では属性面の相性を気にせずとも良かったかな」


 銃を握っている手のひらで魔力を練っている所に、エペレスがそう声をかける。

 ……多分あの会話を彼女も聴いていたのだろう。



「そろそろ終わらせましょう」


 ビットが4つ、クルクルと高速回転を始めその円周上に魔法陣が展開される。


 あの魔法だ。


「ぐっ、【間欠泉(ガイザンタ)】!」

報復(リタリ)ーー【三点障壁(プロテクトライ)】!」


 咄嗟に詠唱を中断したエペレスがビットを三つ使い、床に対してバリアを展開すると足元から吹き出した間欠泉に圧され、彼女の身体がバリアごとゆっくりと持ち上がって見せる。


 まるで間欠泉の上でサーフボードにでも乗ってるみたいな状態だ。皇帝エペレスは、意地でも足を一歩も動かさないつもりなのだ。



 だからこそ、そのプライドを僕はへし折って見せる。



「【機関掃射(バルカレット)】!」


 残るビットはひとつ。

 銃に再び魔力を込めて、魔弾を強制的に乱れ打ちさせる呪文を唱え弾幕を展開する。


 これには流石のエペレス陛下も焦ったみたいで、彼女は残されたビットを使い咄嗟に呪文を唱えた


「っ、【斥力場(エパナフォラー)】!」


 ビットを中心に反重力のバリアを展開し前方に差し出すことで、弾丸の弾道がものすごい勢いで捻じ曲げられ彼女の肉体に当たることなく彼方へと飛んでいく。


 ーーかかった。


「【滝落とし(カタラクト)】!」



 その詠唱を行った瞬間、エペレス陛下の顔が驚きで歪む。

 そして空中からバケツをひっくり返したような、水の塊が彼女目掛けて降り注ぎ、彼女をバリアの上から押し流してみせる。


 床からの噴水と正面からの弾幕でビットを全て消費していた彼女に、更に上からの水が明確にヒットすると、その立体的な(・・・・)連続攻撃に、彼女の顔が驚きで歪む。



 これで、やっとダメージだ。



「【スピアストリームE(ラ・ストラ・エレクタ)】!!」


 続け様に雷の槍を無数に生成し、それをバランスを崩したエペレスに放つことで追撃をーー



「ーー見事であった」


「は!?」


 瞬きをする間に距離を詰められ、目の前に機神が立っていた事に気付いた頃には、自分の腹部には彼女の手が添えられており、既に詠唱をされた後だった。



「【ゼロパージ(エクリシノート)】」

「うわっ!!」


 その攻撃に対して咄嗟に身をよじり、半歩下がる事で無理やり回避すると、皇帝の掌から豆粒大の爆発が発生する。


 その爆発は見た目に反し凄まじい魔力を放っており、そのあまりの火力に一気に冷や汗が噴出する自分の身体をもう一歩下げようとした所で額にトン、と何かが触れる感触がした。


「ーー【反復(レペティス)】」


 声を出す間もなく。

 脳みそを揺さぶり、頭を吹き飛ばすような衝撃を感じることもなく。

 僕の意識はそのまま闇に沈んだ。

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