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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第14章~Rocking Royalties~
188/269

187. 時の人

 それは8月下旬の事だった。


 依頼とかもなく、久しぶりに家でゆっくりと魔導書をジックリと読み込んで新しい魔法を覚えている最中に、この世の終わりの様な爆音が僕の家を揺るがしたのだ。



「うおあっ!?!?? いって!!」


 勉強机で新しく闇属性魔法の魔導書を読んで居たら、突然の爆音に思わず飛び上がり、椅子が後ろへと倒れ僕は頭を思いっきり強打した。



「いっーーつつ……!!」


 しばらく悶絶していると、エレキギターのような音が家中に一瞬轟き、床を伝って骨伝導のように自分の全身を音波が攻撃を仕掛けてきた。


 音源は一階のリビングからだ。


「いてて……まさか、敵襲!?」


 DEATHの襲撃か。

 母さんが危ない。


 すぐさまこの可能性に至った僕は武器である銃を構え、足音を殺しながらも可能な限り早く階段を降り、リビングルームに迫る。


 リビングへと続く扉は開けっ放しだ。

 先程とは打って変わって、音が全く聞こえない。


 息を大きく吐いて深呼吸をし、銃に魔力を送り込み何時でもチャージショットを放てるように魔力を充填してから、僕はリビングへと飛び込んだ。


「――動くな!……って、あれ?」


 警戒感マックスでリビングに足を踏み入れると、そこにはテレビを見つめている母さんの姿がポツリとあり、僕と視線が合うや否や僕の突き付けている物に気付き、母さんの顔にシワが寄った。


「ちょっと、なんて物騒なものを親に向けてるの!」


 そう言うと母さんは即座にキッチンの壁にかけてあるフライパンを念力で自分の手元へと呼び寄せ、フライパンを構えて見せた。

 次の瞬間、フライパンの取っ手が大きく伸び、かなり長い杖へと変形して見せた。



「……え、は? 何これ、どういう事?」

「母さんに勝負を挑むなんて100年は早いわよ。貴方ね、言っておくけど私はこれでも世界最高の対魔術師として有名なカカ・セキュアの直弟子なんだから、貴方の攻撃が通ると思わない方がいいわよ」


 はい?


「いや、そうじゃなくて、さっき爆音がしたでしょ。アレは何? 今上で魔導書読んでたら家が揺れる様な爆音がしたから敵襲かと思ったんだけど? って言うか、なんでフライパンが武器になってるの? あと直弟子って何? っつーかカカって誰??」



 一体どこから突っ込んで行けばいいのか分からない。


 この人は一体何を言ってるんだ。というか何をしてるんだ。


「……え? そういう事なら先にそういう風に言いなさいよ!勘違いしたじゃない!」


 照れ隠しに怒る母さんに、一体何をどう勘違いしたのか意味不明なんだけどと言う文句をグッと抑え込みながらも銃を僕は閉まった。


 それを見ると母さんも肩の力を抜いて、杖を元通りフライパンへと戻し再びキッチンまで念力で元の位置に戻す。



「で、今の音は何? その様子だと誰かに襲われたとかでは無さそうだね」

「ごめんねー、ロクなテレビやってなかったから気分転換にMVD掛けてたらチャンネルの音量ミスっちゃって」

「MVD?」

「マジカルビデオディスク。要は魔法世界のDVDとかブルーレイみたいな物よ」

「は?」

「ほら、貴方が進化して私も魔法解禁だから魔法界の物とか見てるのよ」

「いや何でこんな大音量で……近所迷惑だよ……」

「だから音量ミスったって言ってるでしょう!ちょっと好きな歌手のライブ映像ゲットしたから見ようと思ったのよ。ほら、ライブは大音量で聴きたくなるでしょう? この家も防音魔法で覆ってあるから外には聴こえないから大丈夫だと思ってたけど久しぶりにMVDなんて付けるから音量どれぐらいにしておくのが適切なのかすっかり忘れたのよ」


「いや、そう言う問題じゃなくて……」



 なんだろう。

 母さん僕が魔法使いになってからめっちゃ開き直ってる気がする。



「……で、これは一体誰のラ――」



 ――ドゴォォオォオオン!!!



「うおっ、ビクッたー」


 今度はテレビから激しい爆発音が響き、テレビを中心に家を体感で震度2位はありそうな揺れが襲う。


 な、何だ今のは……


「タービュラ・トンプスのライブに決まってるじゃない。ちなみにこれは『Crimson(クリムゾン) Tour(ツアー)』のMVDよ」


「いや、あの、まずこの音量何とかならないですか……あとタービュラ・トンプスって誰ですか……」


 突然異星人になったかのように意思の疎通が図れなくなってしまった母さんにドン引きしていると、母さんが答えてくれた。


「最初のツアーだったCardinal(カーディナル) Tour(ツアー) も良いけど、母さんはこっちが好……って、知らないの?」

「全然」


 画面を見ると、朱色の体毛を持つヤーテブ星人が仁王立ちしている。


 これがタービュラ・トンプス?







「あぁ、タービュラ・トンプスは多分世界で一番有名な歌手なんじゃないのかな」


 亀をぬいぐるみみたいに可愛くして人間サイズにしたような宇宙人である、アクアン星人のピーカブーが後日ギルドの一室でそう教えてくれた。


「世界一有名?」

「この宇宙で多分彼を越す人間は居ないよ。確か数日後にまた世界ツアーが始まるはず」

「ツアー?」

Oxblood(オクスブラッド) Tour(ツアー)だったかな。」


 オクスブラッドツアー?


「なんでそんなに有名なの?」

「彼はスゴいよ。彼は時空超越師ーーええとつまり時間魔法を使える人のことなんだけどーーその事を利用して、通常では有り得ないパフォーマンスをして観客を沸かせてくれるのさ」


「じ、時間魔法」

「そうそう。全てが暗黒魔法に分類される禁術の領域で、時間に干渉したり過去や未来に自由に行き来できる人たちの事だよ」


「そんなもの、本当にあるんだ」


 そこからピーカブーは時間魔法について、簡単に説明をしてくれた。


 曰く、時間魔法を使うには、時間魔法自体が暗黒魔法であることからモデルVl(バイルライセンス)のドライブが必須になるとのこと。

 このため使い手は必ずダブルドライブ以上であるらしい。


 そしてこのドライブを保有するには宇宙警察へと届出が必要となり、時空超越師になるには厳しい資格試験を受けなければならないのだとか。


 それが時間魔法。

 強すぎる余り、全てが禁術指定されていて免許がないと使えない、禁断の魔法。

 暗黒魔法となっている理由としては、通常の術式では消費魔力が膨大すぎて普通の人では賄うことが不可能であるために、時間魔法は禁術の方法を利用してその魔力を賄うのだそうだ。



 またひとつ、新しい魔法について知ってしまった。


「彼はね、歌手であると同時にコルノビオと言う楽器のプロ演奏者でもあるんだ。一度ツアーに行ってみるといいよ」

「そっか。考えてみるよ」



 まあ、僕は母さんが熱狂してるのになんだか引いてこうしてX-CATHEDRA(エクス・カテドラ)に居る訳だけれども。


「あ、でもツアーのチケットは滅茶苦茶高いから最初は動画とか見てる程度でいいと思うよ」

「そんなに高いの?」

「一番悪い席でも☆40万だっけ……」



 よ、よんじゅうまん、だと……!?

余談ですがお母様のフライパン杖はダイヤモンドコーティングされておりダイヤモンドの欠片に魔法をエンチャントしているのでそこそこ強力な可変型杖となっています。

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