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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第13章〜Remnants Raid〜
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179. チャンポン

『動きがあった』

「えっ?」

『たった今敵幹部の内、スナームが地球スーダンに降り立ったのが確認出来た。現在北上中だ』

「なんだって!?」



 今日は土曜日だ。

 窓から差し込む朝日がとても眩しい。


『現場に今いるのは巧だったか?』

「う、うん」

『鳩峰さんにはこちらから連絡するので、現場に急行して欲しい。詳細についてはエリアに話をしてあるので彼女から話を』

「分かった!」



 時計を見ると、どうやら今は朝7時らしい。寝たのは6分前だ。換算して6時間分の睡眠時間の確保だ。


「おはよう彗、どうしたの?」

「母さんおはよう、ちょっと急用、朝ご飯は要らない!」


 家を飛び出すと日差しが強い。宇宙へと通じる廃墟はそう遠くないけれど、その砂漠とは違うタイプの暑さにすぐさま嫌な汗が額を走る。



「彗!」


 程なくして、廃墟に到着する。

 峰さんは先にここに来ていたようで、膝に手を当て肩で息をしていると彼女の声が聞こえて僕は顔を上げた。


「み、峰さん……」

「だ、大丈夫!? 汗とかヤバいけど!?」

「走ってきた……」


 僕がそう言うと、彼女は無言で空のペットボトルを取り出し、僕に手渡す。

 一瞬頭を傾げかけた所で峰さんは短杖(タクト)を取り出すとペットボトルの中身が水で満たされた。


「あ、ありがとう……」


 それを一気に飲み干した所で、新しい影が廃墟の奥の部屋から出現する。


「Hi!」


 エリアさんだ。


「えっと、ぐっどもーにんーー」

Time(時間)がないからbrief(簡潔)に説明するわね。今Takumi()がオアシスからあのD.E.A.T.H.の軍勢を迎撃中よ。彼の補佐を頼みたいの。ウェルドラの奪還をstop(阻止)してほしーー」

「待て待て待て!!?」


 思わず両手をあげてストップを掛ける。


「に、日本語喋ってる!?」

Look,(あのね) 私日本で住んでるんだからJapanese(日本語)喋れないわけないでしょ?」

「えええ……」


 ツッコミを入れる暇もなく、彼女はこう捲し立てる。


「X-CATHEDRAのAfrica(アフリカ)支部は周囲の空間を閉鎖しているからWarp(ワープ)は出来ない。だから砂漠の閉鎖範囲スレスレから中に移動する。OK?」


 そもそも日本に住んでいることを知らなかった、とか。最初から日本語で喋って欲しかった、とか。あとは可能なら今も妙な所で英語混ざってるのやめて欲しい、とか。


 色々と言いたい事はあるが、あまりにも真剣なその表情にそれをグッとそれを飲み込み、頷く。


「分かった……」

「OK, then(なら), take(私の) my(手を) hand(取って)


 彼女のその突然の申し出に、僕達2人は思わず顔を見合せた。


「早く!」


 おずおずと、峰さんが伸ばされた手を掴む。

 反対の腕を僕が握ると、その瞬間彼女は僕たちの手を握りしめたままその場でスピンをした。


 腕を引っ張られた僕たちはバランスを崩しかけ、1歩踏み込んだその時、突然世界が捻れ曲がって行く。

 捻れ、歪み、黄緑に色に世界が染まると一瞬にしてそれに色が戻って行く。


 僕たちを包む世界は砂漠に変化していたのだった。



「て、転移だったのね……」

「さ、寒っ!」



 こないだ居た灼熱地獄とは打って変わって、夜の砂漠は凍えるように寒い。



「時差が7hours(時間)だから今は夜中の1時ね」

「そ、そうなんだ……」

「待って彗、【適温化(モデラテンパレ)】!」


 峰さんの呪文によって、自分の身体が暖かい風に包まれていくのを感じる。

 震えていた指先に色が戻っていき、(かじか)んでいたそれに感触が戻って行く。


「Ok……」



 それを見てエリアさんが小さく呟くと、それをキッカケに砂の上に魔法陣が浮かび上がっていき、砂が少しだけ宙を舞う。

 彼女がニヤリと笑うと、眩い光とともに魔法陣のあった場所に車が出現した。


「こ、これは……」

「今私たちは空間閉鎖のお陰でオアシスにWarp(ワープ)でアクセスが出来ない。そして砂漠では普通のCar()は使えないわ。だから今回はJeep(ジープ)を使う」



 現れたのは抹茶色のジープ。

 ……なるほど、砂漠の中ならジープが乗り物としては最も適任かも知れない。それにしても、はじめてこんなゴツイ車を目にしたかもしれない。


 エリアさんがジープに飛び乗ると僕も続く。


「このJeep(ジーブ)、秘密兵器搭載してるから安心してね」

「秘密兵器?」

「秘密。秘密だから、秘密兵器」


 みんなで乗り込みエンジンを彼女が起動すると、機械音声が僕たちを案内してくれる。


Good(ごきげんよう) day(ソルシア) Solcia()

Japanese(日本語) Mode(モードで)

[ごきげんようエリア様]

「はーい」

「す、スパイ映画……」


 突然ファンタジーからハードボイルドスパイ映画に展開が変わったことにドン引きしながらジープの中を見廻す。

 まず左ハンドルだし、翌々見てみると見慣れないボタンとかが沢山ついている。

 これは下手にこの車の物には触らない方が良さそうだ。


 そんな事を考えているとダッシュボードが開き、中から銀色の二丁拳銃が自動で出現した。


「ベルトは締めた?」

「は、はい」

「じゃあちょっとrough(荒い)な旅になると思うけど、行くわね」


 その言葉を最後に、彼女は銃を懐にしまい込むとジープがオフロードを走り出す。

 夜の闇で何も見えない砂漠のど真ん中を、何も無い空間を、ひたすら走る。

 僕達は後部座席だが、ジープの先頭から出るハイビームの様な何か以外に、この場に光源がないので周囲の風景が全く見えない。

 ちなみに車内の電気は付けっぱなしだ。


[前方に魔力反応を複数確認]

「2人とも武器の用意を」

「うん」


 アナウンスが鳴ると共に、エリアさんはカーナビと思わしきものに手を触れる。

 するとそこにレーダーの様な物が出現し、マップにーーと言っても砂漠だからほぼ何も無いがーー魔力反応を示す赤い斑点が幾つか出現した。



「Oh, 前方に敵確認」

「……ちなみにこの状態で僕たちが何かすることは?」


 シートベルトを付けたまま、戦闘ができるとは思えないが、念の為に確認する。

 峰さんは杖を取り出しているが、突然スパイ映画の世界に放り出された僕たちの環境を鑑みると、杖だけが異様に異質だ。



「No! このジープで敵を片っ端から轢き殺すわ」

「ぱーどぅ……じゃなかった、何だって?」


 自分まで英語になりかけた。

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