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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第13章〜Remnants Raid〜
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176. 伝令

「母さん、牛乳無いよ」

「え、もうないの? 早いわね……」



 あれから3日。

 8月も中頃に差し掛かり、外はあのサハラほどじゃないがかなり暑くなってきている。

 暑いと言っても暑さの種類が違うから、不快感だけはぶっちゃけ日本の方が上だ。


 砂漠は太陽の殺意が振り切っているせいで思わずサングラスを買ってしまった。あとは、昔中学生の頃に使っていた帽子をクローゼットの奥深くから引っ張り出した。


 ただ、砂漠は乾燥している。日陰があればかなり楽になるし、夜はかなり涼しい。あと、まさかの長袖の方が日中は過ごしやすかった。


 ところが日本はジメジメしている。それはもう本当に不快指数が高い。

 長袖なんて着ていたら死ぬし、帽子も頭の中が蒸してそれはそれできつい。砂漠はそんなこと無かった。


 お陰でここの所、オアシスから一度伊集院くんの武器庫にワープパッドで移動してから着替えて日本に戻ってを繰り返している。


 僕達は交代交代でウェルドラの見張りをしているが、今の所特に動きはない。


 今はちなみに巧がオアシスに居る。


「昨日シチュー作ったせいかしら……しょうがないわね……」


 などとブツブツ言って母さんは買い物をする支度を始めている。


「行ってらっしゃい」

「はいはい」


 玄関まで見送り、扉が閉まった。振り返るとそこには当然だが誰も居ない。


 僕一人だ。


「……」


 僕は冷蔵庫の前まで行って、付いていたマグネットを何気なく掴む。


「……」


 そしてそれを天井に投げつけた。



 ――コツン!



「お見事」

「いや、他に言うことあるでしょ」


 マグネットを投げつけた途端、何もないはずだった天井に色が付着し始める。


 出現したのは、(サソリ)。現代に生きる忍び、暗殺者である。


「そうだったな。久し振りで御座るな……」

「いや、それも違う……」



 睨む。

 と言うのもこの人は前にもこんな事があった。


「その様な事はどうでも良い。今日は用があって来た」

「勝負はしないよ」

「今日はそんな事で来たのではない」


 そう言う蠍は、まだ天井に貼り付いている。彼の顔の傍には蛍光灯がある。と言っても彼は目元以外は隠れていて忍装束なので顔とかはよく分からないが。


 一体この人はいつになったら降りてくるのだろう?


「今宵は伊集院殿からの言付けに参上した次第」

「伊集院君?」

「左様。機密事項故、直接言付けにとの事だ」


 そう言うと、彼は漸く天井から降り立つ。

 地下足袋(ジカタビ)で僕がよく座っているソファの上に彼は降り立つと、そこから降りて僕の目の前へとやってきた。


 ソファが思いっきり汚れた。クソかコイツ。幾ら魔法で綺麗にできるとは言え……


 そう心中で毒づいていた所で、彼はそんな事が吹っ飛ぶ様な事を口にしたのであった。



「曰く、『天野さんの監禁されている敵のアジトの一つを特定した』との事だ」


「えっ……!?」


 ソラの監禁されている場所が分かった。


 つまり、そこに行けば、ソラを助ける事が出来る。


「場所はラルリビ星の住宅街……かつて、ピコリペッシと言う盗賊団が使っていたアジトの跡地をそのまま使っているとの事だ」

「そ、それで伊集院くんは他になんて!?」

「追加で指名依頼を出すと言われていた。では拙者はこれにて」


 蠍はそう言うと、ぽんと煙幕を出して消える。

 それとほぼ同時に僕はスカウターを操作して、目の前に依頼掲示板を展開した。






依頼主:伊集院 英高

タイトル:人質奪還

場所:ラルリビ星パストラル地区住宅街

依頼内容:人質奪還依頼。目的地のマップは受諾後送付。補佐要員有(二匹)。尚、依頼難度自体はスペードの10相当と認識。

受諾制限:指名依頼『星野彗』

報酬:☆500,000




 報酬ごじゅうまんえん。


 ……じゃなかった、ごじゅうまんすたー。


 マジですか。

 と言うか待って。ツッコミどころが多すぎる。


「まずこれ二匹ってなんだ」


 内容自体は簡潔だけれど、ちょっと主語が足りていない。

 まず補佐要員二匹ってなんだ。『一匹』ならナナを連想もするけれど、どうもそうではないらしい。


 次に報酬。報酬やばい。なんだコレ。

 ☆50万って、最近依頼報酬のインフレがすごい。


 そして依頼難度。スペードの10って、それもうこなじゃん。

 前にこなが生身で戦艦を撃墜するとか言ってた以来、アレが確か10相当だったような。

 X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)の正規職員ですら8とか言ってなかったっけ?


 と言うか、僕のランクそんな高く無かったよね?

 そんなワケで僕は自分のライセンスを手に取ることにした。



- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -


星野 彗(虚属性)

人種:地球人(地球出身) 男性 15歳

基本ドライブ:Zz(無属性)

総合ランク:5

・スペード:10

・ハート:3

・クラブ:4

・ダイヤ:3


- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -




 待って、おかしい。

 スペードがいつの間に届いちゃってる。どうなってるのこれ。あとなんかダイヤとかハートとかが何か微妙に上がってる。そして相変わらず歪過ぎる。

 なんでスペード10なのに総合はたった5なんだ。と言うか、スペード上がり過ぎてランクとかもうこれ以降JQKAしかないじゃん。

 最後にライセンス見た時いつだっけ? と回想し、最後にライセンスを眺めたのがルナティックの防衛基地だか防衛施設だかを破壊して、プライスが死んだ時だったことを思い出す。



 ……うん、何となくランクがおかしい事になってる理由が分かってしまった。

 ルナティックで一役も二役も噛んだし、むしろ上がらない方がおかしかった。むしろ思ってたよりも上がり幅が少ないな!?



 色々とツッコミを内心で入れていると、ふと、現実に戻る様な音が突如家の中で鳴り始めた。



『火事です。火事です』



 けたたましいブザー音と共に、煙探知機が作動し僕は飛び上がった。

 母さんは料理とかはしていないはずと室内を慌てて見回すと、そこにあったのは煙幕。


 蠍のせいで、火災報知器が煙を探知して鳴り始めたのだ。


「そういう事か!」


 停止ボタンを押してブザー音を消す。

 そのまま流れ作業で蠍が汚したソファも思い出し、呪文を唱えて汚れを消し去る。


 今更だけど蠍、めっちゃ迷惑だな……

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