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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第13章〜Remnants Raid〜
174/269

173. 熱砂の大地

「な、なあ伊集院」

「うん?」


 妙に埃っぽい部屋を抜け、土壁の廊下を抜けていく。


「お前なんで英語なんだ? スカウターって自動翻訳機能付いてんじゃなかったのか?」

「ああ、エリアはアメリカとロシアのハーフでさ。スカウターの翻訳機能は基本的に違う星の言語しか翻訳しないんだよ。だから地球の言語から地球の言語にはならん」


「は!? なんだそのクソ欠陥製品!?」

「え、マジで?」

「私英語出来ないんだけど……」


 思わずと言った様子で巧が叫び、それに合わせて僕達も思わず抗議の声を上げてしまう。


「いや俺に言われても困るんだが……」

「え、じゃあアレか、こなさんとかは俺とかあの人の言葉が普通に聞こえてるわけ?」

「ん〜? 私はメタリック語とベース語なら喋れるから基本は問題ないわね〜」

「ごめん、ベース語って何?」

「宇宙連合の公用語になってる人工言語よ〜。地球にもなんか人工言語ってあるんでしょ?」

That's(それは) Esperanto(エスペラント語ね)

「あーなんかそんな感じ。地球ってほんと言語の統一が進まないわよね……」

Ha ha(はは)...」



 どう聞いても日本語にしか聞こえないこなの言葉に、エリアさんは英語で受け答えしている。

 僕たちには彼女の言葉が理解できない。

 不思議な光景だ。



ああ(Oh)そうだ(by the way)エリア(Area)こいつら(I)(need)紹介が(to)まだだった(introduce)(them)こいつは(He's)星野(Sui)(Hoshino)こっちは(he's)柳井(Takumi)(Yanagii)んでこっちは(and she's)鳩峰(Kyoko)恭子(Hatomine)

The name() is() Solcia(ソルシア・) Ream(リーム・) Area(エリア)



 伊集院くんが辛うじて日本語と思われる言語でエリアさんに語りかけた瞬間、歩きながらも突然彼女は僕達の手を掴み握手していく。

 握手したいみたいな前振りも言葉ではわからなくて動揺していると、巧が辛うじて口を開く。


「なっ、ないすつーみーちゅー……」



「い、今の伊集院くんは日本語だったよね?」

「翻訳してた何とか語って奴?」

「分かんねえ……」


 僕たちが三人でコソコソと話していると、ザントさんが鼻を鳴らす。



「……そういう事か」

「えっ?」


 廊下を抜けると、そこにあったのは何処かのギルドのカウンターの裏だった。


 扉にはSTAFF ONLYと書かれており、受付をしていた黒人女性が裏から突然来訪者が現れた事にギョッとしつつも、僕たちをそのままギルドカウンターの正面までの道を開けてくれた。


 そのままこなと伊集院くんが受付カウンターを出ると、伊集院くんは歩きながらも杖を取り出してみせる。

 突然有名人が何人も湧いてきたことで、ガヤガヤとしていたギルドの中が静まり返り、視線が集まる。


 心無しか地球人が多い。それも、白人や黄色人種ではなく黒人ーーそれもアフリカ系の人が多い。



「【適温化(モデラテンパレ)】、【反復(レペティス)】、【反復(レペティス)】ーー」


 そんな事を意に介する素振りも無く、伊集院くんは僕たちに反復魔法を使い、不思議な魔法を掛けていく。

 一方のこなは歩きながらくるりと一回転すると、その姿を理恵に変身させて正面玄関の扉を開く。



「眩しっ」



 扉の向こうは砂漠であった。



「……」



 見回す限り、地平線の彼方まで砂漠が続いている。




「こ、これは一体……」


 どうやら伊集院くんに気温をどうにかする魔法をかけてくれた事にそこで気付く。

 日差しはジリジリどころかゴリゴリと僕たちの皮膚を焼いており、痛みを伴う物だった。



「ようこそ、X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)アフリカ大陸支部へ」



「……アフリカ?」

「カイロから200kmほど離れた、サハラ砂漠のど真ん中に建ってるぞ」



 目が点になった巧に対して伊集院くんがニコニコしながら答える。



「え、ここ地球なの!?」

「なんでこんな所に!?」

「砂漠のど真ん中ならそんなに人通りが無いし非魔人から隠蔽するのも簡単だからな」



 それから伊集院君は、僕たちに地球に点在している各支部について軽く話してくれた。

 なんでも地球にはパリのユーラシア支部、ボストンにある北アメリカ支部、アマゾンのど真ん中にある南アメリカ支部、キャンベラのオーストラリア支部、サハラ砂漠のアフリカ支部、そして南極にある地球本部があるらしい。



「ユーラシア支部は場所を決める時にイギリスとパリとロシアが大喧嘩したんだよ。特にロシアは国を挙げて非魔人や魔法使いとは別に超能力者を育成しているしユーラシア大陸を跨ってるからね。でも投票でパリが勝ったからパリなんだ」


「へぇー」


 半分ぐらいぼんやりとした頭でそんな事を聞いていると、不意にギルドの支部からギルド関係者と思わしき男性が現れる。


 どうも突然こなや伊集院くんが現れたのが気になっているらしい。

 その事を察したのか、伊集院くんは砂の上で踵を返すと彼の元へと歩み寄り、なにやら話し始めて見せた


Où est(ベンタンタは) Bentanta ?(何処に?)


 また分からない言語で喋っている。

 最早英語ですらない


Hmm...(ふーむ……) I() never(あいつが) knew(あそこ) that(まで) he(流暢) could() speak(フランス語) French(喋れる) so(とは) fluently,(思って) you(なかった) know(わね)

「あ、そうなの? 全部同じに聞こえるわ」


 それを見て英語で話すエリアさん。そして自動翻訳機能で日本語を喋っている様に聞こえるこな。

 2人は互いに別の星の言語を使っているから互いに翻訳されて話が通じてるのだろう。


 僕たちにはまるで通じない。


Ah(あー) Merci(どうも) beaucoup(ありがとう)……ーーこな、どうもベンタンタは今留守らしい」

「あら」


 どうも人を探していたらしい。


「ね、ねえ、今のは何語……?」

「ああ、フランス語。今支部長のベンタンタを探しているんだが、今南極支部での会議が長引いているらしい」

「地球人ってほんと会議好きよねえ……」

「なあ伊集院、その人の胸は?」

「巧、いくら何でも直球過ぎない?」


 仮にも峰さんとエリアさんの前でなんて事を。


「……噂ではEらしいが」

「マジか!」


 伊集院君がそう応えると、峰さんがなんか怪訝な顔をしてみせた。


「……で、なんでフランス語?」

「エジプトは公用語は今アラビア語だが、昔フランスとイギリスとでゴチャゴチャした事があってな。その都合で英語もフランス語も通じる微妙な位置関係にあるんだよ」

「じゃあ、英語でも通じるの?」

「そこはまあ、色々あってな。支部内の公用語は最終的にパリのユーラシア支部と歩調を合わせた」


 ギラギラとまるで殺意を放っているかのような太陽に睨まれながら、僕達は砂漠の中を突き進んでいる。


 ちなみになんで外かと言うと、どうやら目的地があり僕達はそこに向かっているらしい。

 ひたすら砂が広がる不毛の大地をゆっくりと僕達は歩きながら、伊集院くんからそう説明を受ける。


 途中で伊集院くんから支部長の会議が終わったらしいと連絡を受けると、彼はそのまま身体を黒い闇に変化させて消えてしまった。


「ここだわ」


 しばらく歩いて、やがて僕達は目的地と思われる場所へと突然到着した。

 突然、と言うのはある一点で突然身体が何かを通り抜ける様な感覚があったからだ。


 恐らくは、人からこの場所を隠すための結界か何かなのだろう。


「ここは?」


「ここは私たちギルドの管轄するオアシスよ。地図には乗せてない」

「なんか、鉄臭いんだけど……」


 峰さんが顔を歪めながら鼻を抑える。


 目の前にはそれまで何も無かったはずが、突然目の前にオアシスが生えてきていたのだ。


「ほんとだ、何だこれ」

「あー、そう言えばこの辺たしか温泉が湧くとか陰キャマン(伊集院)が言ってたわね」



 ……砂漠に温泉!?

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