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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第12章〜Rich Racist〜
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162. 復讐の民

「何か、生々しいね」

「そうだね……」


 レストランにて。

 伊集院くんと巧は黙々と食べているが、僕と女性陣はお互いに顔を見合わせていた。



「海鮮丼うめー」


 巧は呑気にそんなことを言う。

 それに対して峰さんがため息をついた。


 ここは海鮮料理がメインのレストランだった。


「なんかさあ……これじゃまるで展示されてる魚が捌かれて出てるみたいだよね……」

「ね……」


 目の前には秋刀魚定食を綺麗に食べていく伊集院くんがいる。


 そう言えばさっき水槽に秋刀魚とかいたような気が……


「んな訳ねーよ。それは流石にサイコの発想だわ」

「そうそう、巧が珍しくまともなこと言った」

「おい伊集院てめぇ俺はいつもまともだぞ」

「はいはい」


 僕や女性陣は流石に魚を回避しオムライスやらたらこスパゲティやらを頼んでいる。


「僕はオムライスで卵料理だからその辺はセーフ」

「そう言えばたらこって魚の卵だよね……」

「あっ……」

「あっ……ごめん……」


 うっかりソラがその事実に気付いてしまい口にしてしまう。

 峰さんが正に口に含もうとした所で拒絶反応を示し、フォークを置いてしまった。

 致命傷であった。


「自滅かよ」

「ぐぬぬ」


 あーあ、と小さく伊集院くんは言うと、おもむろに箸を置き耳元に手をやった。


「もしもし」


 半分ため息をつきながら彼は僕達に目配せをすると、そのまま席を立つ。


 彼の顔は拒絶反応丸出しにしていたが、その声はいたって穏やかなビジネスライクな物であった。


「仕事かな」

「だね」

「仕事?」


 僕とソラが見当を付けていると峰さんが頭を傾げる。


「ギルドだか何だかのでしょ」

「あー」


 暫くすると伊集院くんは眉間に皺を寄せながら戻ってきた。箸は手に取っていない。


「……悪い、社長様のご実家(メタリック皇家)に呼ばれた。ちょっとだけ席を外す」

「え?」

「悪いね」


 そう言うと彼は店員を呼び、御手洗の場所を聞き再び席を立つ。


「伊集院って何時帰ってくるんだ?」

「さあ、どうだろう。皇帝に呼ばれるってただ事じゃないだろうし」


 メタリック星の皇帝。

 一体どんな人なのだろうか。


「女王様ってどんな人なのかな」

「メタリック軍の最高司令官で、かつての戦争の生き残りの一人だよ」


 そう答えてくれたソラは、元々魔法使いなだけはある。

 僕は巧や峰さんと比べると三ヶ月分だけ魔法界では先輩だが、魔法界の知識は到底及ばない。


「すげーな」

「こなさんの母だよね?」

「うん、そう。レジーナ朝皇帝エペレス、そしてその夫にして同じく皇帝の名を冠するレジーナ家の婿、皇帝カーゼル。二人ともメタリック星の双帝にして、復讐の民の長」


 復讐の民……?


「……話の途中にごめん、私ちょっとトイレ」


 ソラの声がどこか落ち込むと、彼女もそう言って席を立つ。話が宙に浮いてしまう。


「メタリック星のトップかー」

「あんな所の女王様ってどんな人なんだろうな」

「さあ……」


 ソラの言う復讐の民とは、どういう事なのだろうか。

 何か、かつてあの猫人類たちに昔そんな大きな出来事があった、とか?


「復讐の民……か」


 僕が思わずポツリとそう呟いた時だ。


「クククッ、そう」


 聞き覚えのある声が突然、レストランの中なのに聞こえた。



「メタリックの民は嘗ての大戦争で故郷を失った種族……そして、その戦争ではとある魔術が発達した事によって、その惑星の原住民の実に37.564%が死亡したと言う」


 僕と巧が目を見開き、ほぼ同時に立ち上がる。

 気がついた時には不気味なマスクをした黒装束の男が沢山、レストランに舞い降りていた。


 そして同時に、あの風が吹き始める。


「ヒヒヒ、どんな魔法だか分かるか? 坊主……」

「これは……そんな、まさか……!」


 そんな馬鹿な。

 何故、地球なんかに。



「――よぉ、地球人のクソガキ。さっきぶりだなぁ?」


 再びその声が聞こえた事で、僕は凍り付く。


 風が前方に集まっていき、色を帯びていく。

 紫だ。

 そして、空間を切り開いたかの様な眼が現れる。


「舐められたままでは裏稼業は務まらねえからよ、仕事ついでにお礼参りしに来たぞ?」

「峰さん、下がって!」


 一般客が唖然とした様子で黒装束と目の前の奇怪な生物ーーテンペスを見つめていた。

 それはどこか非現実的な光景で、頭のどこかが今の状況を理解する事を拒んでいた。



「ーーところでさっきの質問だが、俺が答えてもいいかな」

「あァ?」


 そんな時に、もうひとつ人影が僕の目の前に現れる。


 伊集院くんだ。すぐに戻ってきてくれたことに、張り詰めていた自分の緊張の糸が、僅かに解れる。


「答えは暗黒魔術、でしょ?【バイルソル(バイルソレイユ)】!」


 黒い太陽が彼の手から放たれ、近くにいた戦闘員を吹き飛ばす。


「ぐあああっ!!!」


 そしてその男のシールドが砕け行く隙を見逃さなかった彼は天に向かって手を翳し、こう呟いた。



「【緊急通報(レッドアラート)】」


 伊集院君が指先を天に翳した瞬間、赤い光が空高く舞い上がり、赤い花火が恐ろしいアラーム音と共に爆裂した。


「チィッ!」

「甘い奴らだ……」


 他の客たちは何が起きてるか理解に苦しんで凍り付いている。


 一瞬世界にポーズ(一時停止)が入る。


「――畜生、やっちまえ!」

「【緋炎螺旋(カーディナ・ラセン)】!」


 敵から緋色の火炎が螺旋状に放たれたと同時に、カオスが辺りを支配した。

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