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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第一章~Start~
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15. スカウター

「世界大戦?」


「具体的に言えば明治時代、1904年に日英同盟が結ばれてから6年後、1910年に日本で完成したのかな、プロトタイプは」

「一世紀ぐらい前に、日本で?」


 思っていたよりも最近の話らしい。

 まだまだ淡々と伊集院君は説明していく。


「当時各国は大戦を避けるのに必死だったけど、その裏では万が一に備えて新兵器をボンボン開発していたのは想像がつくだろう」

「日英同盟が結ばれた際に、先を見据えたイギリスからの依頼だったのよ、超小型の新兵器開発」


 こなさんの発言から察するに、これはどうやら日本で作られたものと言う事か。日本のものつくりが宇宙でも通用してしまっていることに衝撃を受けていると、こなさんはこう続けた。


「幾多の魔法の術式を簡略化し、戦争に魔法使いを使うための兵器……」


 それが、ドライブという機械の正体か。


「当然、魔法の簡略化が出来るマシンが開発されたら誰だって欲しがるじゃん? 我々宇宙人もそれに目を付けたわけですよ」


 こなの眼がギラリと光る。


「で、当時のプロトタイプのドライブに改良を重ねたのが今あるこのドライブよ」


 何だか歴史の授業をそのまま受けているみたいだ。


「この、Zz(ダブルゼット)って何?」

「ドライブの種類を表す型番だ。Aa(ダブルエー)からZz(ダブルゼット)まで、全部で676種類ある」


 そんなに有るのか!


「これは所謂生活必需品だからそこらじゅうで市販されてはいるけど、基本的に市販されているのは520種類だけ」

「残りの156種類は販売はおろか、世界に数個しかない」


 こなさんと伊集院君の息をも付かせぬ説明でなんかもうお腹一杯だ。


「この型番は世界に現在二つしかないの」

「も、もう一個は?」

「私のよ」


 こなさんが腰にぶら下げたそれを僕に見せた。よく見ると他に4つ位、似たような物がぶら下がっていた。あれもドライブなのだろうか。


「使い方は簡単。とりあえずかざして、こう言うの」


 そう言って彼女はドライブを手に取り胸の位置まで翳し、威勢のいい声で唱えた。


「モデルZz(ジリオンゼニス)、ダウンロード!」

「うおっ」


 彼女の詠唱と共に眩しい光がドライブより放たれ、こなから溢れるオーラが一段と重くなった。


 いや、オーラが重くなるを通り越して、固体化しているかのような感覚を受けた。


「ドライブをダウンロードしてる時の利点ってのは幾つかあるのよ」


 こなの存在感がほのかに重量感を増したところで、ナナが割って入ってきた。


「まずはー、ドライブを起動するとね、自分のまとうオーラが強化されて魔物や有害な攻撃に耐えられるようになるわねー」

「要はバリアが張られるワケよ。この強化されたオーラは『シールド』って言って、一定の損傷を受けると割れるの」


 そういうとガラスが割れるような音と共に、彼女から無色のガラスの破片の様なものが勢いよく飛び散り、その破片が地面に落ちると蒸発していく。なるほど、あの電車で黒ずくめの物が動揺していた時の現象はシールドを破壊した物だったのか。


「次の利点としては、シールドが展開されている間はあらゆる場所における異常な大気や気圧、深海真空においてもその影響を受けずにすむようになるの」

「大気?」

「全ての星が地球人にとって十分な量の酸素で満たされているわけではないんだ。それは他の宇宙人にとっても同じ。その条件を一切無視出来るようになるから、このデバイスは宇宙人なら誰でも必ず持っているものなんだ」

「なるほど」


 伊集院君の説明に納得して、それを改めて自分の中に落とし込んでいく。

 確かに火星とかには地球人が暮らせる量の酸素はないし、宇宙人の環境に地球が適しているとは限らなそうだ。


「シールドが張られてる間は本当にどんな過酷な環境でも耐えられるのよ、宇宙空間でも深海でも平気だし火山ガスやヘドロの風呂に入っても平気」

「まあ、シールドはよほどの事が無い限り、張りっぱなしにしておけば損はない。欠点無いしね」


「なるほど……」


 あれから時間が少し経ち、僕は今新しく伊集院君からもらったスカウターを弄っていた。


「こんなので宇宙言語が分かるなんて凄いなぁ」


 ドライブと一緒に手渡されたそれを確認しながら、僕は今再びあの転送装置のある場所へと向かっていた。

 理由はもちろん依頼の遂行だ。



「メタリック中央病院は転送装置の上に乗って目的地を言えば行けるよ」

「ああそうだ、このスカウターを持って行くといい。宇宙の言語が理解出来たりGPS機能が備わってるからね。同じく掛けっぱなしを推薦するよ」


 伊集院君のそんな発言を回想し、スカウターの脇にある電源のボタンを入れるとぼくに左目に映っている世界が大きく変化した。



「うわっすごっ!」


 掛けた瞬間、目の前にAR技術の様なもので出力されたマップが現れた。

 現実世界に居ながら、マップを開きながら歩けるのだ。目線で画面を操作し、手を伸ばせば触る感触こそないけれどマップを動かすことが出来る。これは有り難い物を頂いたものだ。


「エレベーターは……」


 南の様だ。エレベーターに乗ると、伊集院くんがゆるりと手を振ったので、僕が手を振り返すと扉が閉まり、エレベーターは勢い良く下へと降り始めた。



「転送エリアは……」


 1階にまで戻り、マップを調べてみるとどうやら僕が先ほどまで居た転送エリアは南西方向にあるらしい。


「それにしても広いな」


 やっぱり軍事施設だからなのか。


「足腰は鍛えられそう……」



 それにしても操作方法があまり良く分からない。マップの動かし方は分かったが、それ以外の物についてはちんぷんかんぷんだ。そこで僕は、とりあえず説明書と格闘しながら歩き始め、10分ぐらい経過した所で転送エリアにようやく帰り着いた。


「えっと」


 そう言えばこの転送装置ってどうやって使うんだっけ。

 そんな事を考えていたら突然電子音が鳴り響き、目の前に見慣れない文字が浮き上がった。


「うわ!?」

『もしもーし』


 目の前に着信と言う字が出てきた。これはスカウターからだろうか。


「……電話機能もあったんだ」

『まあね。使い心地はどう?』


 電話の相手はそう言う。


「早速大活躍だよ伊集院君」

『そりゃ良かった。耳の部分にある小さいレバーを操作すると電話機能に切り替えることが可能だからうまく使ってね』


 耳元に手をやるとそれらしき突起物に触れることが出来た。なるほどこれは滅茶苦茶便利だ。


「ありがとう!」

『分からない事が有ったらそのダイヤルをいじって電話してくれ』


 そう言って彼は電話を切った。本当に便利だ。


「場所はメタリック中央病院か」


 そう言えば、気がつけば先ほどま全く読めなかった空中のモニターも今は全て日本語で映っていて読める様になっている。これもスカウターの力なのだろうか。


「メタリック中央病院」


 転送装置に足を踏み入れてそう伝えると世界がまた切り替わっていく。 この病院は一体どのような場所なのだろう。新しい世界へ足を踏み入れることに少しドキドキした。

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