151. クリスタルの大樹
「おおっ、スゲーなこれ!」
「うわあ……」
クリスタルの大樹。
今回は事前学習出来なかったから断片的な情報しか分からないが、クリスタルと言うだけ有って、大樹の内部はほんのりとピンク掛かっている水晶の様な物で出来ていた。
「綺麗だなー」
「こんな場所が宇宙にはあるんだね」
時折、茶色い輝きが目に引っ掛かるのでそれを凝視してみれば、樹液と琥珀が壁の至る所を流れているのが伺える。
時折、琥珀が空洞と化している内部にも溜まるのかは不明だが、所々に茶色い小石のような琥珀が落ちている。
「あ、巧!これなんかすごいよ」
ふと道端に落ちている琥珀に眼が留まり、巧を呼び寄せながらそれを魔力で持ち上げる。
「なんだこれ?」
「この樹の葉が閉じ込められた琥珀だよ」
そう言って念力で巧にその琥珀を近付ける。
歪な形の琥珀の中心部に、一枚キラリと輝く水晶色の葉が閉じ込められており、膨大な量の魔力を感じ取れる。
「す、すげえな……これ、持って帰っても良いのか?」
「いいんじゃない? 特に依頼には中の物には触るなとか言われてないよね」
きっと大昔に、風に吹かれてあの入り口から葉が吹き込んで長い年月をかけてこの美しい宝石は作られたのだろう。
お土産には持ってこいだな等と考えていると、同じ様にクリスタルの葉を封じた琥珀が幾つか見つかったので、それらも纏めて回収していく。
「これさあ、なんか加工したら魔法効果付いたアクセサリーになりそうだな」
「確かに」
「今ちょうど4つあるしこれでなんか作ってみるか!」
「いいね。あ、でも伊集院くんはどうする?」
「あー、もう一つ見つかればそれでいいな。無ければ悪いけどハブーーおい、彗!魔物だ!」
「えっ?」
言葉を途中で切り、巧は徐に武器を起動させてファイティングポーズをとって見せた。
彼の目が差す先には何やらヌメヌメしたスライム状の何かが蠢いており、それを確認しながら僕はスカウターにダウンロードした魔物解析ソフトを起動する。
――ピピッ。
「巧、どうやらあれはアクアンバーって言う魔物みたいだよ。属性は水だけど、木属性の魔法も使ってくるよ!」
「なんか知らんけど詳しいな!よし【ファイアリフト】!」
そう言って巧は火球の呪文を唱え火の玉を投げつける。
命中したは良いけど大して効いてないみたいだ。
「巧……僕、今水属性だって言ったよね? 聞いてた?」
「う、うるせーな、今ので耐久力測ったんだよ」
本当に……?
「水には電気だよ。【雷槍】!」
巧の言葉が信用ならないなと顔を顰めながら僕は雷の槍を掌に生成し敵に投げつけてみせる。
「ピギィッ!」
投げた槍が見事にヒットすると、魔物が悲鳴を上げながら破裂音を出し、雷槍と共に消滅して見せる。
それを見ていた巧が信じられないかの様な顔で瞬きをし、呟いた。
「い、一撃ておま……」
「ほらほら、行くよ」
内心自分も一撃で魔物を討伐してしまうとは思っていなかったのでドキドキしながらも、巧を急かして歩き始める。
見上げてみればうまい具合に内部構造が階段状になっており、すんなりと登って行けそうだ。
「あ、また魔物……」
……考えて見たら僕は今まで魔物とはあまり戦った事は無い。
あの巨大なクモと、ヘビぐらいしか……これは地球の生き物で言えばハチに相当するのだろうか。
羽を3枚生やし、4本の腕を持ち枝分かれした尾の先に針のついた昆虫。
それが3匹ほど、仲間を連れてどこからともなく出現したのだ。
「行くよ、巧!」
「おうよ!【プロミネンス】!」
「【ノイズ沈殿】!」
炎のアークが巧の前方から噴き上がり、魔物に向かって火が注がれる。
それを魔物が回避した所で動きを読んで僕は敵の魔力を劣化させ削り取る水色の弾丸を構えた銃から放つ。
「ギギッ!」
「オラァ!」
敵が怯んだ隙に巧がクラウチングスタートを行いブーツから火の玉を射出し、その衝撃を利用して一気に魔物へと詰め寄る。
そして彼はそのまま魔物に殴り掛かると、拳が触れた瞬間に手甲から弾丸を放ち、魔物が大樹の内壁へと叩き付けられる。
なるほど巧らしい戦闘スタイルだなと妙に感心していると、横から別個体が4本の腕から鋭い棘を生やし、そのまま僕を羽交い締めにしようとしたのでこれをしゃがみこんで回避。
そのまま敵の背中に向かって銃を発砲すると3枚ある羽のひとつがそれで千切れ、魔物はバランスを崩しながら墜落した。
「【大地の剣】」
すかさず僕は距離を詰め、もがく魔物の頭に土で出来た刃を突き立てる。
武器を剣に持ち替えるのが面倒で唱えた魔法によってその個体もまた沈黙すると、後ろから巧が火炎放射を行い別の個体を炎が丸呑みする。
「この武器便利だな。おらっ、これでも喰らえ!」
炎の中から燃え盛るままに飛び出した魔物に対して、巧がヤクザキックを繰り出して攻撃する。
そのまま発砲音が辺りに響き、敵が吹き飛ぶと残された一個体が唖然とした様子で朽ちていった群れの仲間に視線を流した。
「終わりだ!」
銃に魔力を込めてチャージショットを放つと同時に、巧が両手の手甲から大きな火の玉を放つ。
爆音と共に衝撃が走ると、最後の個体は炭となってそのまま垂直に地面へと落ちた。
「……終わったかな」
「彗やるじゃん」
「腐っても先輩だからね」
「この巧様がすぐに追い抜いてやるから安心しておけ」
僕は銃をしまい、巧と目を合わせた。
そのまま無言で僕たちは拳を突合せ、ハイタッチならぬグータッチをして、先に進むことにした。




