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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第11章〜Ruined Roots〜
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146. ドクターゼノ

Ruin

荒廃,崩壊(した状態);廃墟,遺跡.

《in ruins》

(1)廃墟となって,荒廃した.

(2)〈計画・人生などが〉だめになった.


Root

1.根,地下茎.

2.根付き植物.

3.(髪・指などの)付け根,根元;(山の)ふもと.

――バシュッ!


「着いたー!」

「はっえーなー!」


 一瞬の内に景色が再構成され、何だかとても懐かしい香りが鼻を(くすぐ)る。

 金属と木と、火薬と、僅かな血の匂い。


 ここは……


「伊集院君の武器庫かな?」



 左右を見渡せば、そこにあるのは武器の山。

 剣や槍、銃、杖、怪しいビット。パッと見ではどう使うのか分からない物。そんな物が棚に陳列されている。


「ほえ~、アイツこんな物を持ってたのか。にしてもすげえなこれ……」

「巧は初めて?」

「ああ。ソラの武器屋に引けを取らねえな」


 そう言うと、巧の腕と足が一瞬輝き彼は武器を装備した。

 バレットリムズ。火器内蔵の手甲とブーツだ。



「やっぱりこう言う所って魔法世界っぽいよね」

「でもアレじゃん、あのメタリック星っつーの? あの場所とか魔法じゃなくて完全にSF世界だよな」

「確かに」


 ワープした先が普通に室内だから油断するが、ここはもう地球ではないのだ。

 宇宙空間の何処かに存在する人工惑星。それが僕達の現在位置。


「じゃあ行こうか」

「ああ」


 伊集院くんの武器庫を出る時に、ふと僕の目に留まったのは巨大な鎌。

 確か触ると手が引き千切れるような呪いが有るんだっけ。


 曰く、この宇宙には俗に言うダンジョンみたいな物とかも存在しているらしい。

 その内行ってみたい。


 この宇宙には僕達が知らない事がまだまだ沢山あるのだ。






「俺さ、思ったんだけどさ」

「うん?」

「ここ広すぎじゃね?」


 ようやく一階の掲示板付近に到着した時に、巧がため息をつきながらそう言った。

 X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)本部は120階建てだ。一体何坪なんだろう。

 と言うか、なんでここはそんなに巨大なのだろうか。


「――あら、彗じゃない!」

「あっ!」



 そして、この巨大なはずの建物は何故妙な所で狭いのだろうか。


「さっきぶり」

「こな!」


 見知った二人が目に映る。

 片方はドラゴンを象った白と金の鎧兜に身を包むハ●ーキティー似の宇宙人。


 こな・レジーナ。


 通称、宇宙最強の生物。地球では理恵と言う偽名と変身を使っている。


「そんな正装してどうしたの」

「これから弱小シンジケートの殲滅よ。ほら、ルナティックが無くなってから界隈(ウラ)の均衡が崩れてるのよ。後釜に座ろうとする組織が多くて」



 ルナティック。

 反X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)の急先鋒。

 かつて存在していた指定テロ組織は、先日崩壊した。


 ……アレがもう過去の話だとか、未だにちょっと信じられない。


「ルナティックってなんだ??」

「あら、巧くんじゃない。ルナティックはホントにちょっと前まで蔓延ってた悪の組織よ」


「ほえー、こなやるじゃん」

「当たり前でしょ。私を何だと思ってるの」


 巧はまだ宇宙の事情には詳しくない。

 僕よりも後に魔法使いになったから、多分ルナティックが何なのかも良く理解していないだろう。

 その辺の知識の補完は、ある程度は僕がしてあげるつもりでいる。



「何をグズグズしていーーチッ、貴様か」

「ザントさん!お疲れ様です!」



 ふと、声が聞こえてその方向に頭を向けると、そこに居たのはザントさんだった。


 ザント・エピック。


 常にサングラスを常に付けている彼が、表向きは製薬会社の社長である事を知ったのはつい最近だ。

 今日はいつもと違い、こなと同じメタリック星人(猫人間)の人を連れていた。


「え、なんで彗は私にはタメ語でザントには敬語なの」

「貴様と違い、俺は敬われるだけの理由があるという事だ」


 その正体は宇宙マフィアの首領。

 僕は今、目の前で堂々と腐敗の現場を見せ付けられている。


「え、酷くない? 私仮にも皇女なんだけど」

「皇女っぽくないもんね、アンタ」


 こなのことをそう評するこの人は、初めて見る人だ。かなり小柄だ。

 そして見た目こそ温和そうな顔だが、時たま見せる目付きが刃のように鋭い。



「久しぶりねゼノ博士。いや、(ゼノフォビア)

「これはこれは皇女様」

「呼び捨てで良いのに」


 ザントさんと行動を共にしてみたり、こながわざわざ呼び直したりするあたり、きっとこの人もAAAA(テトラエー)の人間だ。


 そのゼノ博士(ゼノフォビア)と呼ばれた小柄な猫人間はこなの一声に、ため息を吐くと声のトーンを一段下げて見せた。



「あっそ? じゃあそうするわ、ダルいし。んで、このガキ共は? 私地球人ってあまり好きじゃないんだけど」

「こっちのが星野彗、そっちが柳井巧よ。巧の方は(ヴェイル)(イエロー)の魔力を若干受け継いでるわ」

「え、あの(陰キャ)(クソオタク)の? 通りで受け付けない訳だわ。て言うかどんな状況よ」


 そう言うと彼女は巧に目を合わせた。脚先から頭まで、本当にガンでも飛ばしているかの様に眺めると彼女は鼻でふん、と笑っているのか納得しているのかよく分からない声を出した。



「彗、巧? こっちはアクアン大学教授のゼノ・カップマン博士よ。貴方たちはこっち(魔法界)についてはあまり良く知らないと思うけど、こう見えてこの人はシングルドライバー(凡人の魔力持ちでは)最強の女とも言われてる実力者なのよ」

「どうも」

「……どういう事?」


 シングルドライバーとは、要するにドライブを一つしか持てない人達のことだ。

 保有しているドライブの数は、そのまま戦闘力の高さに直結しており、持てる固有スキルの数でもある。 


「660億人はいると言われている魔法使いの人口の中で、彼女は宇宙で上から1000人に入る実力者よ」

「マジか」


 例えば宇宙最強と言われるこなは、ドライブを5つ持つことが出来る。

 これはすなわち、5つの固有スキルを行使することが出来、5つ分の戦い方を単身で行うことが出来るという証左でもある。

 伊集院くんもドライブを4つ保有している。


 それに対して、この人はひとつだけのドライブでそこら辺にいるダブルやトリプル持ちの人を圧倒出来るほどの強さを誇っているのだ。

 その事実に巧が僅かに後退りをすると、ゼノ博士は鼻を鳴らす。



「この猿共弱そうね。特にコイツ、これで本当に幹部2人の()なの?」


 巧がその言葉に睨むと、威勢だけは良いわねと彼女は更に鼻で笑う。

 すると、彼女は何事も無かったかのようにザントとこなの後ろを歩き出す。


「こな、急いでいるんじゃなかったの?」


 巧が今にも噛み付かんとするようなオーラを静かに出し始めたので、慌ててこなに話を振る。

 流石に苦笑いしていた彼女は、そんな僕の助け舟に揚々と乗ってくれた。


「さ、挨拶もこれくらいにして行きましょ」

「そうね。バイバイ」

「……(ゼノフォビア)は妙に喧嘩好きだから困る」


 こなの声と共に彼らは空間転移し、去っていく。去り際にザントさんの愚痴が聞こえた気がする。大変そうだ。


「……チッ、感じワリィ奴だな」


 巧がそう呟く。


「まあまあ。ほら、早く行こうよ」

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