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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第10章〜Restart〜
141/269

140. 夏、来たる

「熱い……」

ソラ(天野さん)はまだかな……」


 夏。

 強烈な日差しがジリジリと照りつけている。


(鳩峰)さん、電話通じない?」

「うーん、駄目みたい。そっち()は?」

「僕もダメ……巧は一体何をしてるんだ……」



 今僕が『峰さん』と呼んだのは、同じクラスの鳩峰恭子。

 女子が嫉妬するほどの巨乳で、若干天然っぽい節がある。我がクラスの母とも言うべき存在。

 瞳はダークブラウンで髪は長く、今日は頭の後ろで結いており、僕と共に待ち合わせをしている人たち(遅刻者3人)と手分けして電話をしていた。


 って言うか、今日の私服はそんなに露出してしまって大丈夫なのだろうか。

 そりゃあ、これから行く場所的に少々露出してもいいとは思うけど、些か刺激が強い。





「おーい!!」



 電話をして約5分。手を振るクラスメートの姿が駅前のトイレから出現する。


「ごっめ~ん!」

「ソラ!」

「家の手伝いなかなか終わんなくて……」



 ソラ、も僕のクラスメートだ。

 目は若干峰さんより色が薄く、髪は茶色で肩まで伸びている。

 本名は天野空。家は武器屋をしていて、学校にいない時は看板娘をしている。

 改札を通らずに直接トイレから現れたと言うことは、何らかの手段で家から空間転移(ワープ)して来たのだろう。



「あれ、巧と伊集院君は?」

「まだ来てない」

「うーん。それってつまり遅刻?」


「――遅刻?」


 突然声が聞こえ、飛び退きながら振り返るとそこには伊集院くんがいた。


「うわっ、ビクッた」

「彗でもそんなビクッたとか言うんだな」

「それな」



 彼の性格は何だか常にクールで、俗に言う完璧君だ。

 やや長めの黒髪に真っ黒な瞳、顔も整っていて雰囲気がそれを引き立てている。

 そんな彼は今日は普段と違って真っ赤でクソ目立つアロハシャツと純白のチノパンにローファーと言う、控えめに言ってド派手な格好で来ていた。


「私服超カッコいい!」

「めっちゃ目立つ!そのアロハいいなー」

「でもプール行く格好じゃないよね」

「ついさっきまでアポが有ってね。そのまま来たわ」


 彼はこの世界にいる闇魔法使いの頂点に君臨する男だ。

 同じ高校一年生のはずだが、何故か世界を股に掛けるギルドのサブマスターなんてものをしていて、謎が多い。


「で、巧氏は?」

「まだ来てない」

「遅刻か」

「クズだな」

「クズだね」

「僕もそう思うよ」


 彼はちょっと困ったような仕草をすると、何処からともかく手のひらに水色の扇子が出現し彼はそれで自らを扇ぎ始めた。

 何とも様になっている。なんだコイツ。



「あっ、来たよ」



 それからまた更に五分くらいと言ったところだろうか。

 駅の改札から走る人影が僕達の視界に入った。


「巧ー!」

「おーっ、彗!」

「おっそーい!」

「ごめん!寝坊した!」

「流石は巧」


 駅の改札の向こうから走り出してきたのは僕の長年の親友、柳井巧。


 服装は着崩していて少しだらしないけれど、顔のラインは柔らかく整っている。多分口を開かず尚且つ動かずじっとしていればモテるタイプだ。


 ……あれ、いつの間に茶髪に染めた?


「じゃあみんな揃った?」


 伊集院君がパタパタ扇ぎながら言う。


「うん」

「じゃあ早く行こうよ」

「星野氏〜、先導して」

「うん。と言っても、目の前だけどね」


 僕、星野彗が先頭に立ち目の前の娯楽施設の入場ゲートを潜りぬける。


 今日は夏休みという事で、巧が発起人となって僕達は都営大江戸線の駅前にある水の大テーマパークに遊びに来ていた。


 水のテーマパーク『マリシムシティ』。

 水着姿がドレスコードとなっている不思議なテーマパークだった。

 事の発端は、母さんが何かよく分からない懸賞に応募していたのが始まりで。

 曰く、テレビの懸賞に応募したら大当たりして無料チケットを5枚も当ててしまったのだ。


 そんな訳でそのチケットは僕達で使う事になった。

 5枚も当ててしまったという事で、呼んだのは巧、ソラ、峰さん、そして伊集院君だ。

 伊集院君だけ何だか距離感みたいな物を感じるが、この夏の間に僕達は互いにあだ名等で呼び会える程度には仲を深める事が出来た。彼が君付けのままなのは特にパッと思い浮かぶあだ名が無かっただけ……だと思う。

 その伊集院君は当初、ギルドのサブマスターなんてものをやってて多忙なせいで僕達の誘いに来るかどうか正直怪しかったが、スケジュールがたまたま空いていたとの事で無事に合流が出来た。




「ここが更衣室?」

「みたいだね」

「じゃあ、更衣室の向こう側で集合なー」

「うん」


 更衣室の前で女性陣と別れると、独特の湿気がムワッと襲いかかる。


「あっついなー、さっさと着替えよう」

「そうだな」


 上に着ていたTシャツを脱ぐ。

 ふと巧の身体が以前よりもガッチリしたなと思っていると、巧は何かを察知したように辺りをキョロキョロと見回し始めた。


「……あれ?」

「どうした?」

「伊集院は?」

「あれっ、今ここに居たよね」


 服を脱いでる最中に、ふと辺りを見回すと伊集院君が居ないことに気付く。


「アイツすぐ蒸発するよな」

「トイレかなんかじゃないの」

「あーそうかもな。ま、先に行って待ち合わせしようぜ」



 実を言うと僕も巧も下は水着を着ているので、基本は上を脱ぐだけだ。

 僕は緑のサーフパンツを着ていて、巧は黒と赤のサーフパンツ。シンプルだ。



「いやーそれにしても彗のとこのおばさんは相変わらず神だわ。まさかプールのチケット当ててくるとはな……」

「神?」

「だって夏と言えば海かプールだろ。それに水着。思春期男子の事をよく理解してらっしゃる」

「ああ……」

「場合によっては峰さんとかは宜しくない視線から守らなきゃいけないな」

「僕は巧が一番宜しくない視線を向けてると思うよ」



 巧は今日も平常運転だ。

 多分脳みそが股間にでもついている。



 何だかんだで着替えも終わって僕たちはプールへ向かった。

 流石に女性陣はそう簡単にさっと脱いで終わりという訳では無いらしく、暫く更衣室の外で待っていると手を振る2人の女性が視界の片隅に写った。


「おーい!」


 峰さんとソラだ。


「二人とも着替えるの早いね!」

「俺たちはほら、下に着てきたからな」

「あーなるほど」


 ソラはフリルのついた王道水着だ。

 上は白を基調としたフリル付きの水着で、下はカラフル。


 対して峰さんはオレンジ色の水着を付けており、腰にはアシンメトリーな腰布(パレオ)を付けて周囲の目を引いていた。


 ファッションレベル、ちょっと高校生にしては高すぎませんかね……

 いや、峰さんの場合トップス(・・・・)も高校生にしてはレベルが高過ぎるのもあって人の視線を浴びている訳だけれども……

 正直隣にいるソラが可哀想になる程度には上半身の差がある。


 と言うか、多分ソラのフリル水着はそれを誤魔化すための物だろう。

 ソラは武器屋をしていて武器を一通り扱うために筋トレもしている事もあり、よく見ると腕とか脚とかが中々筋肉質だし、色々と誤魔化す事に全力を費やしている。

 その涙ぐましい努力に僕は静かに同情した。

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