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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第9章〜Stagnant Saga〜
130/269

129. 進撃準備

インフルに掛かってしまいました……

お陰で執筆時間が出来ました()

「あれ? 他の人たちは?」

「思ってたより遅かったわね」


 再び転送装置の置かれている広場に戻ると、そこには先程と変わらずマヨカが座り込んでいた。

 先程との違いはレメディが増えている事だろうか。


「あら、戻ったのね。【祝福の陣(サナ・スパチオ)】、【増幅魔法(エクステンション)】」

「手伝います。【光の抱擁(リヒトワルテ)】」


 レメディがじわじわと回復する魔法陣を形成し、増幅魔法で回復速度を上げる。そこにいつの間にか居たグレイスによって、天井から暖かい光が差し込み回復速度を更にあげる。

 魔法陣の中に足を踏み入れると心が温まる様な不思議な感覚が僕を襲う。


「マヨカ、他のみんなは?」

「まだよ~」


 マヨカはそう軽く言うが、顔は心配そうだ。

 僕も心配だ。何も無ければいいのだけれども。



「ピンキー!」


 突然レメディが声を上げると、それに釣られて僕達も顔を上げる。どうやらピンキーと蠍が帰って来たらしい。


「……」

「やはり二人での方が早く済ませられる様で御座るな」



 蠍とピンキーもまた回復の魔法陣に足を踏み入れる。

 そうなると残すはザントさんだけだ。


「後はザントだけね」

「え? まだザント戻ってきてないの?」

「まだよー。まあ通信聞いてた限りじゃ相手がファントムだし、無理もないと思うわ」


 レメディとマヨカがそうやり取りをしている間に、ピーカブーは懐からいつかの不味い魔力回復薬を取り出し飲んでいる。

 ピンキーは終始無言で魔法陣のど真ん中に座り込んでいる。蠍も何だかんだで負傷していて、魔法陣の恩恵に肖っている。グレイスも魔法陣の端に腰を休めている。



 あれ?


「――ナナは?」

「……!」



 おかしい。

 ナナは確かレメディと互角の力を持っていたはずだ。なのに何故ナナはこの場に居ない?


 僕はマヨカの方を向き目を合わせる。

 するとマヨカがやれやれと言った感じで僕の意図を読み、答えてくれた。


「来てないわよ。ナナも何してるんだか。ザントと一緒にいた――」

「ナナ!」


 ピーカブーが唐突に廊下へと駆け寄る。

 そこにはボロボロになったナナがわ


「な、ナナ!」

「……私なら大丈夫よー……ちょっと、黒いコピーの集団に襲われて部下を避難させてて、脚が、やられたけどー……」


 黒いコピーの集団と言う言葉に目を丸くする。グレイスだけでも相当強かったのに。

 見るとナナの左後ろ足が原型を留めていない位に変な折れ曲がり方をしていた。


「今手当てするわ――【超回復(インテケア)】!」


 レメディなピンキーの後を追い、ナナの横に着くと早速オレンジ色の光をナナに当て始める。

 その回復魔法を当てられた瞬間、ナナは苦しそうに呻き声を上げて苦痛に顔を歪めた。


「痛い?【鎮痛(アネスタ)】!」


 レメディは右手で回復魔法を放ちながら、左腕を翳すと毒々しい緑の光が現れ始める。


「今のは麻酔魔法だから、すぐに痛みは退いてくるわよ」

「あたたっ……あー……ほんとだー」

「ちょっとよく分からない呪いみたいな物を感じるわね……病院行くわよ」


 脚は治ったが、ナナの身体からはドス黒い煙の様なものが立ち込めており、お世辞にも健康とは言えなそうだった。

 そこで、レメディはナナを搬送するために一緒に転移してしまった。


 ナナが宇宙人ではなくただの犬だと言うことが、何故かとても強く頭に焼き付いた。


「はー、まだあの黒いのがいたとはね」


 マヨカが銃を取り出し、虹色の弾丸を詰め込みながら話す。


「ほんとね」

「ナナは大丈夫かな……」

「レメディが運んでいったんだし大丈夫じゃない? ダテに医者じゃ無いんだし」

「でも……仲悪いじゃん、喧嘩ばっかりだし」

「……喧嘩する程仲が良い」


 そういう問題なのか。


「さあ、セキュリティが解除されましたよ。皆さん、行きましょうか」

「え?」


 グレイスが立ち上がりながらそう言うと、黒い転送装置から人が現れる。

 ザントさんだ。


「フン、待たせたな」

「ザント!長かったけど大丈夫?」

「ああ……」



 ピーカブーが短くザントさんと会話をし、懐から瓶を取り出す。


「はい、みんな受け取って」

「このシールドヒーラー嫌いなのよね」

「魔力回復とシールド回復のW調合だからね」


 ピーカブーは皆にそれぞれ瓶を配り終えると、最後に自分も1つ飲み干してみせる。


 これはいつかの激マズ薬!


「……」


 貰ったそれを真っ先に飲み干したのはピンキーだった。


「甘みが足りないな」


 後を追ってザントもこれを飲み干して瓶を適当に投げ捨てた。

 やっぱりザントも漢だ。アレを飲めるなんて。



「いやいやこれに砂糖混ぜたら絶対味がもっと酷いことに……」


 そして二回に分けて飲むのはマヨカ。

 グレイスたちも無言でそれを飲み干し、残るは僕だけになってしまった。


「さっさと飲め……」

「……」



 こんな状況下で言うのも何だけど……

 出来ればこれは……勘弁して欲しかった。


 ほら、色が不透明な蛍光ブルーだし、ブクブク言ってるし。

 しかも何か時々モゾモゾと表面が蠢いてるし。



「何をグズグズしてるの? こっちに白い転送装置があるんだけどー」

「ほら早く、一番戦闘に参加してるのは彗だよ?」

「……うぅ、仕方ないか」


 諦めて鼻をつまみながら、僕はそれを一気に飲み干した。

 飲み始めは爽やかなミントみたいな味が口に広がる。しかしそれが奥歯にまで達した瞬間には脂汗が出るような強烈な渋みが襲い掛かり、

 続いて目からスパークが飛び散るレベルのわさび系の辛さが駆け巡り。

 最後に喉を通過する時には口の中の水分がごっそり持って行かれる。

 そんな味だ。


 ぶっちゃけ前よりマズい。

 人の飲むべきものでは無い。これ毒物だろ。


「……さ、行こう」

「早く乗って!」


 僕が密かに悶絶しているのをよそに、他の人たちは一斉に開いた扉の奥にある転送装置へと向かっていく。

 その急かす声に応え、僕もまた扉の奥へと向かい、転送装置に乗った。


「……転送」

〈転送ヲ開始シマス……〉


 瞬きをする間にも目の前のキャンバスは塗り替えられていく。

 到着した場所はまるでどこかの庭園のような場所であった。

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