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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第9章〜Stagnant Saga〜
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125. 竜と蛇の子

「貴方はどうするの? 他のみんなはまだ帰って来てないわよ」

「僕は命令通りみんなの補佐しなきゃ行けないから行くよ」


 僕がそもそも今回の作戦に参加し、今此処にいる理由は各幹部の補佐をするように、こなや伊集院くんから直接言われたからだ。

 現に、下の階では各幹部のサポートで僕は割と滅茶苦茶な行軍をしていた。

 今回もそれと同じ事である。


「加勢するの? 凄っ……」


 マヨカが引いている。

 そんな目で見られても、あの会議にはマヨカも居たし、僕の役割は分かっているのかと思っていたけれども。


「じゃあ、僕もう行かなきゃ」

「いや、まさか本当にやるとはね……頑張って、私ここで休んでるわ」


 そう言うとマヨカは懐から何かを取り出して渡してくれた。茶色の固形物で固く、ラッピングされている。


「これは?」

「ヒーリングチョコレート。貴方のシールドそこそこ削れてるでしょう? 手負いで他のところ行ってもしょうがないから回復して行きなさい」

「これでシールド回復出来るの? なんか前に液体のヒーラーなら飲んだけど」

「ポーション風の奴でしょ? あれゲロマズいじゃない。こっちは味がマトモ」


 言われて、ラッピングを解いて口にそのチョコレートを放り込んでみる。

 ミントのような味がする。ううむ確かに味はマトモだ。全然マトモ。むしろ美味しい部類に入る。

 ミントのような味なのに、何だか身体が温まる様な感覚を覚える。


「おいしい、これ何処で売ってるの?」

「お忍びでメタリックの百貨店に行った時に買い占めたわ」

「お忍び?」

「いやほら、私王位継承権放棄してるだけで一応第一皇女だから下手な所には行けないのよ」


 メタリック皇室の人間って、言われてみれば誰も姫っぽくないんだよなあ。

 まあこれは僕の地球人的な価値観ではそう思うだけで、宇宙では当たり前なのかも知れないけれども。


 それにしても、百貨店か。

 今度僕も幾つかストックを買い込んでおこう。絶対必要だ。

 不味いポーションもどきよりもこっちの方が携行しやすいだろうし。



「じゃあ、行ってくる」

「気を付けて」


 マヨカのぬいぐるみみたいな手がヒラヒラと振られるのを最後に、赤い装置に乗った僕の世界は揺らぎ始めた――





 転送装置に乗って転送した瞬間、僕はずぶ濡れの状態で横たわっていた。


「えっ!?」

「はっ!?」


 激痛の走る身体にムチを打ち起き上がると、ピーカブーとセルティネスが目を点にした状態で僕を見つめていた。


「い、今のは何? なんかめっちゃ痛かったんだけど……」


 痛い。

 水の大砲と思わしき物を撃たれた箇所も、倒れた拍子に身体を打った箇所も、見られてる視線も。

 一瞬新手のイジメかと思うような理不尽な出来事に此方も目が点になっていると、ピーカブーがようやく口を開く。


「いや、まさかいきなり僕の放った魔法の軌跡上に君が転移して来るとは思ってなかったよ」

「いやそれは僕も何だけど」

「妾もじゃ」


 とりあえずざっと辺りを見回して、状況を分析する。


 やはり広大な広場だ。

 地面は草が生い茂っていて、僕の膝丈位はある。そんな中に苔の生えた大きな岩がそこら中にゴロゴロとしており、これは僕の身長よりも大きい物が殆どだ。


 セルティネスは単体だ。

 他の仲間もいなければ、前みたいに蛇の子もいない。

 しかし草は所々焼き払った様に黒ずんで煙を上げており、これがセルティネスが有利に働くように作られた広場である事実に思い至るのに時間は掛からなかった。


「――【間欠泉(ガイザンタ)】!」


 隙ありと言わんばかりにピーカブーの呪文によってセルティネスの足元からーーと言っても大蛇だから足はないがーー間欠泉が吹き出す。

 完全に隙を突かれた形となったセルティネスの巨体が宙を舞う中、僕もまた銃撃でセルティネスを追撃する。


「うおっ、地響きが……」


 その巨体が地面に叩きつけられた時、轟音と共に床が僅かに揺れた。

 すると彼女はぐるりととぐろを巻きながら素早く起き上がると彼女は蛇特有の鳴き声を放ち、無数の蛇が無より形成されていく。


 召喚魔法だ。


「……って、また蛇!?」


 思えば、今まで魔物らしい魔物はまだ蛇しか倒していない気がする。

 なおスマートが散々作っていたルートなんちゃらは含めない事にする。


「またか……【氷のチャクラム(フリッター)】!」


 ピーカブーの詠唱で、雪の結晶の形をしたカッターが蛇の大群衆を切り裂いていく。

 そんな中でセルティネスは後頭部についていた翼を羽ばたかせると、その巨躯が空を飛び始めた。


「げっ、この大蛇空を飛ぶのかよ……」

「妾は大蛇と竜の子よ。この程度は造作もない」


 セルティネスが竜の血も引くヘビである事は初耳だが、空中戦となると流石に僕達も分が悪い。


「【ウインドブーマー(ウインドブーマー)】!」

「【炎の壁(ディフランマ)】」


 直ぐにでも撃ち落とすため、風の大砲を銃から放ちセルティネスを攻撃する。

 これに反応するようにセルティネスが詠唱すると炎の壁が空中に現れ僕の攻撃を防いだ。

 そこにピーカブーが詠唱を破棄して爆発する泡を放つが、セルティネスが空中から炎を吐き彼女の元に届く前に泡が爆発して攻撃が失敗に終わる。


 そうこうしている内にまた雑魚蛇が僕達を囲うように現れ、噛みつき攻撃で僕達の邪魔をする。


「フフ……【竜巻(ストーミル)】」


 セルティネスの呪文によって、竜巻が巻き起こる。

 しかしそれは僕達のいる場所からは遠く離れた所に落ちており、まるで何かを避ける様に竜巻が勢力を維持したまま移動する。


「くっ!」


 それにしても、幾ら銃を使って蛇を倒しても湯水のように新たな蛇が出現してくる。


「蛇が多すぎる!」


 銃ではだめだ。

 それと、セルティネスがさっき言った言葉が事実なら、僕の銃よりも、こっち(・・・)の方が、通用するはず。

 そんな事を考えていたため、僕はその竜巻を警戒する余裕が、無かった。


「さあ、我が奥義、見せてくれよう!」


 一斉に子蛇が引き始める。

 茂みの中に後退して魔姿を隠すと共に、竜巻が此方に迫る。

 そしてセルティネスが火を吹き、竜巻が炎を巻き上げ始めると同時に空を飛んでいるその蛇から轟く様な声で呪文が放たれた。



「【火災旋風(テンピグニス)】!」



 一瞬で竜巻が朱色に染まり、炎が辺りに広がる。

 草という草に火の粉が燃え移り、僕達のいる広場が焦土と化す。


「な……しまった!」

「散りなさい!!」


 炎の竜巻が迫る。

 水魔法を撃てども、その勢いは収まるどころかますます激しくなり、とても手に負えない。


水の(ディモイ)――」

「無理だ、避けろ!」


 水の障壁を展開する間も無く、僕の体は容赦無く炎の渦に貪られた。



「彗ーー!」

「ハーッハッハ!これでまずは一人!」

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