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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第9章〜Stagnant Saga〜
124/269

123. ピアースとの再戦

※このページでは一部津波に類ずる表現があります。

特にシナリオ上で重要な伏線等はこのページには有りませんので、不快感を覚える場合は読み飛ばす事も御検討下さい。

「本気でいくぞ!【バブルボンバー(サボクラスト)】!」

「はぁっ!」


 ピアースが剣を振るうとその先端から爆発する泡が次々と放たれる。

 僕がそれを銃で撃ち先に爆発させて攻撃を防ぐと、その爆風の裏でマヨカがモーニングスターで凪払い、僕は一気に詰め寄り持ち替えた竜殺しで切り上げた。


「甘いな。これでも海賊の血を引いているんでな」


 すると彼はすかさず剣を振り僕の剣戟を防ぐ。

 すかさず次の一撃を放つと彼はそれを滑らかな動きで受け流し、横からの凪で僕の横っ腹を切り付けた。


「くっ!」

「下がって!【酸の花火(アシッド・アブレーズ)】!」


 次の剣戟を僕が後ろに飛びながら回避すると、すかさずマヨカが天に向かって毒の魔法を打ち上げ辺りに酸を撒き散らす。


「ぐわっ!」


 音を立てて爆散する酸がピアースに掛かり、思わず彼は腕を抑える。

 そこに僕が剣から衝撃波を放ち追撃を試みると、水の壁が無詠唱で展開され僕の衝撃波を吸収して見せた。


「散りなさい!【反復(レペティス)】!」

「【吸磁電撃(イテランダー)】!」


 マヨカによる駄目押しの反復魔法が飛び、僕もピアースに対して金属に反応して追尾する電撃を放ちピアースを追い込む。

 しかしピアースは僕の呪文に反応して剣を上に向けて投げ捨てると、剣がピアースへと向かっていた電撃を吸収してみせた。


「【誘導浮遊(レヴィチャサード)】」


 上へと投げられた剣がその軌跡の頂点に達した瞬間、その剣がマヨカの方に剣先を向けて突撃する。

 僕が銃に再び持ち替え撃ち、その剣の弾道を逸らすとマヨカがモーニングスターをピアースに向けて振り下ろした。


「【旋風落撃(トルナスラム)】!」


 ピアースが紙一重で鉄球を避け、鉄球が浮島の地面に叩きつけられる。

 それと同時に巨大な竜巻が立ち上がり、ピアースを容赦なく刻んで行く。


「ぐおおおっ!!」


 マヨカの攻撃の衝撃で、僕達の乗る浮島が大きく揺れる。

 バランスを崩さないよう、地面に手と片膝を付きながら僕は考えた。


 ピアースの手元には、今武器がない。

 つまりこの後彼が取る行動は、基本的に魔法を放ちながらマヨカの傍に横たわっている剣を回収する事だろう。

 ならば僕が次にとるべき手段はこれだ。


「【鈍化の呪い(マルベノ・マルセカ)】」


 マヨカが鎖を身体に絡め変則的な動きでピアースにモーニングスターを振るう。

 彼がその攻撃を躱している隙に、伊集院くんから教わった闇魔法で剣に呪いを掛け、素早く銃で追撃する。

 黒い魔法陣が剣の柄に一瞬現れ、僅かな間黒ずむがすぐさま見た目が元に戻り、呪いが付与されたのを確認する。


「【水の壁(ディモイス)】、【スピアストリームI(ラ・ストラ・フリーザ)】!」


 水の壁が広がりマヨカのモーニングスターを受け止める。

 その裏で唱えられた魔法により、その水壁を破壊する様に氷槍の嵐が僕達を襲う。



「ぐっ……!」


 障壁の向こうから飛来する氷柱(ツララ)の雨が僕の腹部に食らいつき、自分の足が浮く。


「【紫炎弾(グレイバニップ)】!」


 マヨカがすかさず紫色の炎を投げつけ、ピアースに防御行動を強制する。その隙に僕も体勢を立て直し銃を構えるが、水の弾丸が無詠唱で放たれ僕もまた回避を余儀なくされた。


 その隙にピアースは飛び込む様な姿勢でマヨカの攻撃をすり抜け、剣を手に取る。


 ーー掛かった!


「ぐっ! これは……!?」

「【電光(エレクトレーザ)】!」


 詠唱をしつつ、電気の属性を帯びたレーザーを銃から放つ。

 ピアースはそれを回避しようとするが、僕の仕込んだ呪いで動きが鈍化している。


 僕のレーザーを脚に喰らい、怯む動作を見せる間にマヨカのモーニングスターが彼の頭上に叩きつけられる。



「今急に遅くなったわね」

「速度低下の呪いを武器にかけた」

「アンタいつの間にそんな物を……」

「伊集院くんに教わった」


 速さは硬さであり鋭さでもあると、以前この魔法を教えてくれる時に伊集院くんは言った。


 どんなバ火力の魔法でも、敵に当たらなければ意味が無い。

 最強の盾で敵の攻撃を受けるにも、敵の攻撃に合わせて先に動けなければ話にならない。


 言い換えれば、相手よりも速く行動することが出来れば盾を掻い潜り攻撃も出来るし、相手の攻撃を受けてカウンターも出せるのだ。


 だから速度低下の呪いは戦闘に置いては最も汎用性が高く、同時に最も警戒しなければならない魔法なのだと。

 そう彼は言った。


 そこで僕は考えた。

 その呪いによって相手を最も効率的に弱体化させるにはどうすればいいか。

 そして僕は武器に呪いをかける事を思いついた。


 魔法界では武器と魔法は一心同体と言っても差支えがないほど重要な物だ。

 宇宙に置ける魔法を用いる戦闘は、当初僕が想定していたよりも遥かに魔法が乱用される物で、それに合わせて魔力の消費がなかなか激しい。

 そんな中で、武器は単に攻撃するための用途以外にも、魔力を最適化し、温存するためにも一役買っている。

 この武器がないと、魔法使いの戦闘能力は大幅に減退してしまう。


 で、あればだ。

 武器に戦闘力を下げる呪いを付与しておけば、武器を握っていても敵は弱体化するし、武器を手放せば当然敵は武器がない分弱体化する。



「ぐぐっ……」

「さあ、留めよ!」

「――呑まれて消え去れ!」



 ピアースがやや緩慢な動作で剣を地面に刺して屈むと、水色の幾何学的な魔法陣が現れる。


「【セイズマ(フルクトゥス)ハイドロ(デグルチア)】!」


 詠唱と共に魔法陣が弾ける様に消え、僕達の乗っていた浮島が不意に揺れる。



「――げっ!」

「や、ヤバッ!」



 ピアースがニヤリと笑い、水の中に飛び込む。それと同時に轟音が辺りに響きはじめ、巨大な水の壁が迫り上がり、僕達を飲み込もうとしていた。


「捕まって!」


 マヨカな腕を差し出す。

 躊躇なくそれを掴むと、マヨカが僅かに屈む。その巨大な波を跳ぶつもりでいる事にふと気付き、僕も合わせてかがみ込み無詠唱魔法で跳ぶ用意をすると、マヨカが短く詠唱した。


「【ジェットオナラ(ヴォレパーパット)】!」



 彼女の詠唱に合わせて僕も無詠唱魔法で飛び上がろうとするが、それを超える勢いでマヨカが飛び上がり僕も強く引っ張られた。

 その大きな波を超えるように跳躍すると、波が小さな浮島を丸ごと飲みこみ。流し去った。


「不味いわね、陸地が消えた……」


 巨大な波が遥か彼方にある部屋の壁に叩きつけられ、波が跳ね返る。その衝撃で雫が舞い上がり、雨のように降り始めた。

 僕達はそのまま着水し、辺りを、そして水中を素早く見渡す。


「ピアースは?」

「ど、何処だ……」


 落下して水面に浮かぶ僕たちを、何処から見ているのだろうか。

 まだまだ戦いはこれからだ。

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