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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第9章〜Stagnant Saga〜
119/269

118. スパイ

「前方に敵です」

「左右にスナイパーが居ます。警戒を」

「面倒ねー」



 マヨカ率いる正規兵の前線部隊の戦闘は、ナナの部隊よりも荒い物が多い。

 ナナは遊撃部隊だからサポート寄りになるが、こちらは最前線での戦闘。先程部隊の再編成があったとはいえ、激しい攻撃に晒されることが多く、僕もまた傷が増えていた。



「くっ……【茨の壁(ディブルーム)】!」


 先程ナナの安全地帯で回復を受けていなかったら、ここに居られなかったかも知れない。

 壁を展開し敵の電撃から身も守ると、その壁の上から敵兵が飛びかかるのを目視し、剣戟を叩き込む。

 吹き飛ばされた敵兵が後ろ手に風を吹き出し推進力を相殺すると空中に浮かび上がり、風の大砲を放った。

 後方からマヨカがもう一発紫の光線を放つ。すると目の前に敵が飛び降りるように現れ、そのままマヨカに向かって槍による差し込みを企てた。

 マヨカはそのモーニングスターの鎖を使い槍を絡め取ると、奪った槍をそのまま敵に投げ返し貫いた。



「【鉄球乱舞(フェロスプ・ダンザ)】」



 マヨカの詠唱と共に、無数のトゲ付き鉄球が出現し降り注ぐ。

 為す術もなく押し潰される敵兵を踏み付けると、マヨカはそのまま前方にまた光線を放ち先へと進む。


「敵増援出現。陣形変更許可を」

「許可するわ。迎撃隊形!」


 わらわらと扉や階段から現れた敵兵に対して、マヨカ率いる前線部隊の兵士が陣形を変える。

 先程はマヨカを先頭とした三角形の隊形だったそれがマヨカを起点に凹の字に凹んだ隊形となり、全方位から敵兵へと魔法が集中的に降り注ぐ。

 自分も味方の兵士に合わせて銃から魔法の弾丸を放つが、突如真空波が僕たちの眼目を横切って行き陣形が崩れた。


「なっ……!」

「うぎゃあああ!」


 突然味方の兵士による同士討ちが始まり、混乱が広がり始める。



「くっ、スパイか!」

「【ダストストーム(パルヴィスト)】!」


 味方に離反者がいたのだ。

 彼の呪文で瞬く間に土埃が舞い上がり、視界が奪われていく。


「ぎゃっ!」


 視界のアドバンテージを使い、敵が攻めてくる。

 咄嗟に強風を詠唱破棄で巻き起こし土埃を払い除けると、目の前に巨大な魔法陣を展開する敵がいた。



「くそっ!」

「【平伏の奇跡(サークロウ)】!」


 自分たちの足元を丸ごと飲み込む魔法陣が開き切ると、詠唱によって魔法陣の範囲内に居た者が敵味方問わず、無差別に地面に叩き付けられる。

 その隙を逃さず敵が飛び上がり剣を僕達に向けると、突然その敵兵が血飛沫を吹き出しながら壁に叩きつけられた。


「ちょっ……ピンキー!」

「……危なかったな」


 風の刃を無言で放つピンキーがフワリと浮かび上がると、更に風の刃が幾つも舞い、敵を刻んでいく。

 その隙に僕達は態勢を立て直し、なだれ込んでくる増援に先制攻撃を仕掛けた。



「【闇の玉(レヴィノアール)】」


 ピンキーが闇の玉を次々と放ち、敵を一掃していく。

それに呼応するようにマヨカもまた鉄球を振るい、敵を薙ぎ払っていく。



「【ウインドブーマー(ウインドブーマー)】!」



 自分もまた、風の大砲を放ち敵兵を戦闘不能にして、ざっと辺りを見回した。


「これで全部、かな?」

「制圧完了ね。ピンキー良いタイミングで来てくれて助かったわ」


 マヨカが声をかけると、ピンキーはコクリと頷いて無言で去っていく。


「ピンキーは部隊を率いていないの?」

「ピンキーは今回X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)と言うよりも宇宙警察の人間として来ているからね。どちらかと言うと依頼受けてきている奴らに対して悪さをしないか目を光らせる方が仕事として優先事項が高いのよ」


 マヨカはそれだけ言うと懐から魔力回復薬を手に取りそれに口を付ける。

 その不味さに顔を顰めた後、彼女はスカウターに手を当てて本部との交信を行った。


「こちらマヨカ、3階制圧完了」

『こちら諜報部、了解した。このまま上階へと向かってくれ』

「他の部隊の状況は?」

『ナナ部隊は1階に安全地帯(セーフティエリア)を構築している。レメディ部隊は7階で現在も交戦中だ。こな様は6階をほぼ制圧している』

「7階向かった方がいい?」

『いや、それよりもナナ部隊と合流して4階、5階の制圧をしてくれ。遊撃員、7階でレメディ部隊の補佐を頼む』



 オペレーターの声はピーカブーさんではなく、低い声の男性だ。



「了解」

「分かったわ。彗、無理はしないでね」

「うん」


 遊撃員とは勿論、自分の事だ。

 休む暇は無い。


「何かあったらこないだ渡した弾丸を使って。離脱する時間ぐらいは稼げる」


 マヨカが手を振ると、僕もそれに応じて階段を駆け上がった。

 階段を登りながら、マップを再確認していると別の人からの入電が入る。


『こちらレメディ、現在黒ずくめのクローン体と思われる者と戦闘中』

「クローン体?」

『さっきナナの報告で偽グレイスってのが聞こえたけど、その類の敵がいる』

『こちらマヨカ、現在遊撃員が向かってるから抑えておいて!』

『了解』


 偽グレイスの類の敵。

 あまり強くなければいいのだけれども。あの偽グレイスも結果的に研究室を爆破して無理矢理倒したのど、あまり強いとそういう戦法をまた取らなくてはならない。

 出来ればそんなことはあまりしたくない。



「こちら彗、レメディの位置は!?」

「ここよ!」


 階段を登りきった所でレメディに連絡をすると、レメディの声が直接聞こえた。

 扉の向こうにある広間で、彼女が単体で戦闘をしている模様だった。


「【鉄拳制裁(メタリカーツ)】!」

「【大木の木槌(ウドマッシュ)】――【加速(エクセラ)】!」


 レメディが鋼鉄化させた拳で殴り掛かると、その敵は空高く飛び上がり回避し、大木で出来た巨大な棍棒を急降下しながら振りかざした。

 クレーターが出現し床が僅かに沈むとレメディは岩石を出現させてそれを殴り飛ばして応戦した。


 その戦闘相手を見て、僕は思わず目を見開いた。


「ぐっ!」

「な……馬鹿な……」



 そんなこと、あるはずがない。


「プライス……!」



 僕の目の前で死んで行ったプライスが、草属性魔法でレメディに攻撃を仕掛けていたのだ。

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