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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第9章〜Stagnant Saga〜
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116. 偽物

「ちっ!」


 ナナが先頭に立って扉から現れたグレイスに噛み付こうとすると、グレイスが前方に転がる様に躱し鎌を振るった。

 隊員たちが銃を構えて発砲すると、続けざまに鎌を高速回転させて弾くとグレイスはそのまま鎌の側面についた紅い宝石から細い光線を放ち、攻防一体で僕達を押し始めた。


『ナナさん!こちらグレイス!何があったんですか!?』

「なんかよく分からないけどあんたに襲われてるのよー!」


 通信で入るグレイスの声は明らかに動揺しているが、少なくとも僕達の目の前にいるグレイスは冷静そのものだし、口を開いていない。

 言うまでもなく偽物なのは分かるが、それにしてもこの偽グレイスも十二分に強い。


「【ボルダーリフト(モノコープス)】!」


 よく分からない実験器具を魔法で浮かび上がらせて投げ付けると、偽グレイスはそれを鎌で一刀両断してみせる。

 その隙を突いて剣で斬り掛かると偽グレイスは瞬間移動で攻撃を躱し、光の玉を放ち攻撃を仕掛ける。

 その強烈な光の玉に跳ね上げられた名も分からない仲間に対して鎌が振り下ろされると、一撃で彼のシールドが砕け散った。


「えっ……マジかーー」


 シールドが破壊された瞬間、彼の姿が解けるように消えて消滅する。

 この一帯に掛かっている強制転送の対象となり有無を言わさずハブルーム星へと送られたのだ。


「不味いわね。モデルWd(ウェポンダンサー)固有能力発動」


 ナナが呟く。彼女の口元に大きな剣が出現し彼女がそれを咥える。


「【槍光投撃(ブランティア)】」

「【炎の壁(ディフランマ)】」


 偽グレイスから光の槍が投げられると、仲間が炎の障壁を展開し攻撃を防ぐ。そこに僕とナナで双方向から斬り掛かると、偽グレイスがこれに応じる。


「くっ」

「冗談みたいに強いわね……本物並に……」


 2人分の剣戟に応じる偽物は、強い。

 未だに一撃もダメージを与える事が出来ていないのに、此方は消耗しかつ隊員が1人離脱している。


 2人で同時に斬り掛かり、偽グレイスの鎌がそのどちらもを受け止めると、退院の1人から火の玉が飛ぶ。

 それに応じるように偽グレイスは瞬間移動をして距離をとると、地面に水平に鎌を構え光の玉を撃ち始める。

 仲間がメイスを振り回し光の玉を弾きつつ、距離を詰めると同じように彼女は距離を詰め、メイスが振り下ろされる前に顎目掛けて飛び膝蹴りを放ち顎を粉砕した。


「がはっ!」


 当然怯んだその隙を逃さず、偽グレイスは鎌を振るい背後にあった机ごと男を切り裂く。

 名も知らないチームメイトが戦闘不能となりワープして緊急離脱をした間も、黒いグレイスが間合いを詰めてきている。


「マジかよ」

「こいつ強すぎないか」


 男が本部に転送されていくと、禍々しいグレイスはこちらを睨む。

 その目は灰色に染まっており、負の感情を伴った、濁った目だった。


「【激光(シャイニング)】」

「【水の壁(ディモイス)】!」

「【茨の壁(ディブルーム)】」


 偽グレイスの身体が輝き、同時に強烈な熱を放つ。

 これに合わせて僕が茨の壁を作り身を守ると同時に、別の隊員が水の壁を展開し身を守ろうとした。


「これ、マジでグレイスのコピー体なら私たちに勝ち目は無いわ。引きましょう」

「ぎゃああっ!」


 ナナが叫ぶ様に指示を飛ばした時、それに被さる様に悲鳴が聞こえた。

 パリンとガラスが割れる音が鳴り、水の壁を展開していた隊員が強制離脱させられる。


 水の壁を展開した事で、光が水壁の中で乱反射し彼を焼いたのだ。


「不味いわね」



 今、残されたメンバーは僕とナナと、あともう一人だけだ。

 この部屋から脱出出来ればまたナナ部隊の本隊に戻れるが、それにはこの偽グレイスが邪魔をしている。


「二人とも大丈夫ー?」

「ああ、問題無い。しかしどうする?」

「僕に考えがある」


 僕達が話し合う間も、偽グレイスはじりじりと間合いを縮めて来ていた。

 彼女は今、僕達とこの部屋の出入口との間に陣取っている。


 僕が剣を構え、真空の刃を放つと彼女は鎌を回転させてそれをガードし、一気に僕との間合いを詰めた。


「今だ!」

「【物体爆撃(ボンバラガ)】!」

「【ボルダーリフト(モノコープス)】!」


 射程範囲内に入ったグレイスの手にある鎌を座標に添え、呪文を唱える。

 すると鎌を思いっきり振っていたグレイスの鎌が爆発を起こし、彼女は大きく吹き飛ばされた。

 その瞬間を逃さずに、戦闘の影響で破壊され尽くしていたこの部屋の瓦礫が一斉に浮かび上がり、彼女へと突撃した。



「に、逃げろ!」


 彼女を倒せたかは分からない。

 ただ、倒せてなかったケースを考えても、このままではジリ貧。

 僕達は一旦部屋から飛び出し、本隊と合流する事を選んだのだ。



「はぁ、はぁ」

「い、今のは危なかったわね……ゲホッ」

「つ、強すぎる。マトモに戦ったら負けだよ」

「ああ。先に進もうぜ」


 ナナが杖を出現させると、今逃げ出した部屋に鍵が掛かる。そこで更にナナが口にその杖を咥えながら何かを唱えると、その扉が鋼鉄に変化しズシリと重みを増した。


「さあ、本隊に合流しましょう」

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