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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第9章〜Stagnant Saga〜
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115. 研究

「【炎の壁(ディフランマ)】!

「そぉらっ!」


 鋼鉄化した拳を敵の脳天に叩き込むと敵のシールドが砕けると、その敵が即座に転移装置によって飛ばされてその場から消滅する。


「【サンダーネット(スカテレクトロ)】!」

「ぐあぁっ!」

「【大回復(ミディケア)】!」


 兵士が攻撃を受けると、すぐさま後方のサポート部隊から回復魔法が飛んでその傷を癒して行く。


「【物体修復(レノベート)】」


 更には、武器が破壊されたり盾や鎧が壊れると修復魔法によってそれもすぐ様無かったことにされ、気が付けば敵は一掃されていた。


『敵勢力後退を確認』

『中央広場制圧完了』

『ここからは手分けして進むわよ』

「了解」


 スカウターを介してピーカブー、マヨカ、レメディ、ナナが短く会話した。


『部隊再編成、中央部隊はマヨカが指揮してくれ』

『私たちは西側に向かってコントロールルームを制圧するわ』

『ナナたちはそこから研究室を制圧』

「分かったわ」


 スカウターに新しく情報が流し込まれ、自分の所属部隊が遊撃隊からナナ部隊へと表示が変わる。

 それに合わせるかのように、僕達は3方向へと別れて行軍を開始した。


 今更だが、地球の犬を先頭に隊列を組んで進む僕達の姿はなんというか異様だ。

 しかも部隊列の先頭は引き続き正規兵が務めているので、ナナの真後ろにはマヨカが指揮していた屈強な兵士が着いていることになる。


 長い廊下に出たので、僕達は注意深く廊下に備わる扉を開けて回り、敵が潜んでないか確認を開始した。

 スカウターによれば、長い廊下を抜けていくと研究エリアに到達するらしく、僕達の次の目標はその研究設備の制圧だった。


「研究設備があるってことは、場合によっては改造兵器や合成獣(キマイラ)が潜んでいるかも知れないわ。場合によってはそうした物は危険だからまずはそこを制圧する」


 上の階から時折衝撃が響き、ホコリのようなものがパラパラと降ってくる。

 今上の階に居るのはマヨカの中央部隊のはずだ。戦闘中なのだろうか。


「まもなく研究室エリア……突入する」


 ナナがそう言うと共に、部隊員が扉を蹴破り研究室へと侵入した。

 研究室には灯りが無く、薄暗い部屋に器具が幾つも置かれており、沈黙していた。



「何の施設だ、これ?」

「魔力の質が変質しているな」


 部隊で散開し、警戒姿勢を維持したまま研究室の物色を行う。


「こんな研究してた話、スパイからは入ってこなかったわねー」


 ナナが小型犬由来の身軽さで机の上に飛び上がると、犬らしく鼻をフンフンと使い、机の上を歩き始める。


「この匂い、リーグの物だわ……彼直属の研究部隊の物なのかしら……」



 いつもの何とも気の抜けた様子とは打って変わり、その顔は真剣だった。

 犬本来の力を遺憾無く発揮させているナナはやがて一台の端末の前に到着した。


「此方ナナ部隊ナナ、カメ応答して」

『カメってなんだよ!僕はアクアン星人なんですけど!』


 端末のボタンをポチリと前足で押しながらナナが呼び掛けると、スカウター越しにピーカブーの声が聞こえる。


「諜報部の報告にない研究設備を発見した。リーグの匂いが強く残ってる事から本人が直接関わっている研究を行っている場所と推定」

『何だって』

「目の前に恐らくリーグが直前までアクセスしていたと思われる端末が有るけど、中を調べる事って出来る?」

『わかった。誰かスカウターと有線接続出来る人が部隊に居たりする?』


 フクロウの様なハブルーム星人がその通信に対して声を上げ、ナナの元へと飛んでいく。

 彼のスカウターから細い線が伸びると、ナナはそれを手に取り端末に接続した。


『暫く警戒していてくれ、時間が掛かるかもしれない』


 ピーカブーの発言の後、暫く沈黙が続いた。


 今のところ、戦闘の音や気配は感じられない。

 他の部隊はどうしているのだろうか。


 少しして、ピーカブーから再び連絡が入った。


『これは……いや、ナナ直接見てもらった方が早いかも』


 彼の声が聞こえると共に、ナナが自分のスカウターに集中をする。目が細まっていくと、ナナが不思議な言葉を口にした。


「……塩?」

『アクアンの遺跡で前にルナティックが不可解な海洋浄化をしていた事があるだろう。その塩がそこの研究室で使われている』

「で、このパラフェリス液も?」

『うん、どうやら魔力を吸収するのが目的だった見たいだ』

「……何がやりたいのかさっぱり分からないわ」

『人の魔力に干渉して何かを成したがっていたのは分かるが、それが何かは分からないな』


 ピーカブーとナナが幹部間で話をしていると、ふと、研究室の扉が開いた。



「……グレイス様?」

「えっ?」


 目の前に現れたのは、グレイスだ。紫色のローブとグレーの内服。


「グレイス、どうしたの?」

『はい? 呼びました?』

「えっ?」


 僕達がグレイスに声をかけた瞬間、スカウターからグレイスの声が聞こえた。

 しかし、目の前のグレイスは口を動かしていない。


「ーー戦闘準備!!」


 察したナナの声と共に、僕達は一斉に武器を構えた。

 そのグレイスはデスサイズを携え此方を狂気の目で見つめていた。


「こ、これは一体……」

「クローン? いや、でもそれにしては魔力の質が……」


 言われてみて改めて確認すると、確かにそのグレイスは本来のグレイスと違い、魔力の質が変質していた。

 (よど)んでいると言うか、不純物が混ざっているというか。


「此方ナナ部隊、グレイスの姿をとる敵と接触。これより交戦を開始する!」


 それを合図に、敵のグレイスが斬りかかってくる。

 僕達は研究室の中で戦闘を開始した。

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