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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第9章〜Stagnant Saga〜
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113. カウントダウン

「じゃあ皆さん各部署別に別れて上長の指示に従ってくださーい!依頼を受けてここにいる人達は私の所へ!」


 こなの一声で人々が一斉に動き出す。


「ねえ」

「んー?」


 僕は目の前にいる犬に、素朴な疑問をぶつけてみた。


「こなって今拡声器みたいな魔法使ってるみたいに大きい声を出してるし熱気も凄いけど、ルナティックにバレない?」

「ああ、それなら大丈夫よー。今この一帯は空間魔法使って内外のアクセスを全て遮断して隔離してあるから、空間隔離魔法の範囲外には聞こえてない」

「ふうん」


 最近頻繁に聞く空間隔離魔法は、耳にしている分では非常に便利そうな魔法だ。難しそうだけれども、その内魔導書を開いて覚えてみよう。


「さ、行くわよー、こなの所ー」

「あ、うん」


 ぼんやりとナナに従ってこなの所へと向かうと、彼女はいつの間にか平服に戻っていて、周囲には大きな人だかりが出来ていた。

 地上に彼女が降り立つと共に、壇上が出現し彼女はその上に降り立つと辺りをざっと見回した。


「みんな集まった?」

「こな~、どっからどう攻めるのー?」


 ナナがこなに親しくタメ口で話しながら、壇上に跳んだ。すると皆が驚愕の目つきでナナを睨む。


「……いやいや、みんな私以外の幹部の顔ぐらい覚えなさいよ。こちらは『四天王』のナナ、貴方達の指揮を直接取る部隊長よ」


 見かねたこながナナに降り注ぐ殺人視線を権力で振り払うと、ナナは緩い声でどうも~、と続けた。



「ナナ、私たちはマヨカの正規兵が正門を爆破したら後に続くわ。各部隊を補佐しつつ、目指すは管制室よ」

「ふーん」

「正規兵が前衛であるのに対してこの部隊ーーさしずめ『遊撃隊』ーーは中衛として前衛のサポートをしつつ必要とあらば前衛をカバーし、後衛のサポート部隊と連携して隊列を崩さないようにして」

「了か――あ、正規兵がもう移動し始めてるわね~」


 ナナが声を上げて指摘する方向を見ると、そこには初めて見る装いのマヨカが部隊を引き連れて前進していた。

 黒いスカウターを掛け、左耳の上にピンク色の貝の様なものを乗せ、黒い戦闘服にまとわりつく様に、ジャラリと銀色の鎖が巻きついていた。

 銀色の鎖は彼女の背中で結んであり、その先端にトゲ付きの鉄球が付いていたことで、それがモーニングスターであると気づいた。


『各隊長、作戦開始前に速やかに上空に集合のこと』


 こなが耳元を抑えながらそう呟くと、一瞬透明化されている彼女のスカウターの輪郭が目視出来た。

 彼女とナナが飛び上がると同時に、正規兵の進軍が一時中断されマヨカが飛び上がり空中で幹部たちと集合した。


 集合した幹部たちはグレイス、ピンキー、ナナ、レメディ、マヨカ、そしてピーカブー。


 レメディは血の様に真っ赤なノースリーブのワンピースを着ており、その上から白衣を腕まくりして羽織っていた。

 腕まくりされている白衣の下からはいつものように彼女の腕となるリボンが腕に巻かれていた。

 ただし、白衣の裏側はメスと思わしき刃物や試験管、注射器等がビッシリとぶら下がっている。


 また、グレイスはいつもの装いと明らかに違うものを着ており、紫色のフード付きのマントを羽織り、その下に灰色の服を着ていた。

 いつもは明るく穏やかな色の物をよく着ていたので、その姿に違和感を覚えた。


 それ以外の人々は、いつもの服装であった。



「……、……!」

「…………」


 流石に上空にいる彼女たちの会話は僕には聞こえない。

 しかし、彼女たちは短く会話をした後に全員で頷くと、各々の部隊へと戻って行く。



「さ、正門ぶっ飛ばしてとっとと制圧するわよ」



 マヨカの声が聞こえると同時に、ピーカブーの声がスカウター越しに聞こえる。


『こちらサイバー部隊、これから各部隊にルナティック本部のマップを展開する。マップデータを解凍の上次の指示を待て』


 突然目の前に、ダウンロード率を示すバーが現れると、瞬く間にそれが充たされ目の前に2Dのマップが展開される。


『こちらグレイス、これよりサイバー部隊より正規兵の進軍ルートを反映した更新データを展開します。遊撃隊と後衛サポート部隊は正規兵の進軍に従い、極力ルートから逸脱しないようにしてください』


 その一声と共に、半透明な白いマップに真っ赤な矢印が上書きされ、僕達の進軍ルートがマップに表示された。


『こちらサイバー部隊、広域空間隔離魔法解除まで残り30秒』


 若い女性の声が聞こえると、場にいた全員が息を飲み、身を引き締める様な音が聞こえた。

 それまで若干あった喧騒の声もピタリと止み、耳鳴りのする静寂が辺りを包んだ。


『広域空間隔離魔法解除まで、残り10秒』


『全軍に告ぐーー』


 カウントダウンに被せる様に、総大将のこなの声がスカウター越しに、静かかつ穏やかに、呟く。

 それに合わせて近接武器を持つ人達はその武器を取り出し握り締め、いつでも突撃出来るように脚で地面を踏み締めた。

 それに対して、遠距離武器持ちもまた一斉に武器を取りだし、いつでも攻撃が出来るように構えてみせる。



『5秒前、4、3、2……』


 こなの呟きが、まるで轟くかのような錯覚に襲われる。


『ーー状況開始』




 背景であったはずの空の色が一瞬黄緑色の迷彩柄に染まり、世界が歪む。

 次の瞬間、目の前には存在しなかったはずのルナティック本部が出現する。


 これに合わせて、遠距離武器持ちが一斉に火の玉、氷の槍、電気の束、闇の弾丸など、あらゆる魔法を放ち本部に攻撃を仕掛ける。


 攻撃が建物を襲う瞬間、薄い緑色の障壁が出現し、轟音と共にそれらの攻撃を受け止め始めたのだ。



 こうして、ルナティック急襲戦が開始した。

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