103. 死神ファントム
「【光の玉】!」
「【闇の玉】」
僕が光の玉を放つと、ファントムはそれに対して闇の玉を放ち僕の攻撃を相殺する。
「【ブラックバリア】、【闇の魔装】」
「【帯電付与】」
伊集院くんは片膝を付き床に片手を置くと、黒い闇のバリアが彼を包んだ。
それと同時に、闇で出来た腕が彼の背中から4つ芽吹き、それらも一斉に叩くような音と共に床へと伸びていく。
イエローさんが武器を帯電させると同時に、伊集院の腕のうち、床に触れている全ての手から点滅する光が零れ始めていく。
「面倒だ」
リーグが剣を振るうと、真空の刃が剣から放たれ傍から見れば無防備な伊集院くんへと伸びていく。
すると闇で出来た腕が更にひとつ彼の背中から伸びるとその衝撃波を掌で受け止めて見せた。
合わせるようにイエローさんが刃を剥き出しにしてリーグに向かうと、彼は瞬時にイエローさんの斬撃を刃の背で受け流し、そこから反撃を試みた。
刃がイエローさんの喉元に差し掛かった辺りで、黒い魔法陣が突如現れ、切っ先の速度が減衰する。
この瞬間を逃さないイエローは頭部を引き、その攻撃を躱した。
「【ウインドブーマー】!」
「【竜巻】」
自分も続け様にファントムへ風の砲撃を放つと、カウンターする様にファントムは部屋の中に竜巻を発生させてみせた。するとその竜巻の根元に、また黒い魔法陣が現れると竜巻が消滅する。
「リーグ、これではまともに動けませんよ」
「鬱陶しい奴め.......!」
「お褒めに預かり光栄だ」
そこら中にデバフと呪いを静かにばら撒く彼にリーグが舌打ちをすると、彼は床に剣を突き刺して見せた。
「【ダークタワー】!」
リーグの呪文と共に伊集院くんの足元から闇が勢い良く噴き出す。
これに対して流石に飛び上がって伊集院くんが回避行動を取るとファントムから半透明な水色の珠が次々と放たれ、彼へと向かう。
「【炎の壁】、【ブレイクソニック】!」
伊集院くんへの攻撃を僕が炎の壁を使いブロックし、続け様に剣を振る。
僕の剣から障壁破壊を付与した真空の衝撃波が発生し、ファントムへと伸びていく。
「障壁破壊の魔法、『ブレイクソニック』ですか」
ファントムはそれをユラリと避けると、その後方からリーグが剣先でクルリと魔法陣を描き、魔法陣の輪郭から炎の束が次々と放たれていく。
対抗するようにイエローさんの足元から水しぶきが吹き上がると、それは急速に凍っていき氷のダストとなって敵を無差別に攻撃していく。
「【エレキネット】!」
僕はすかさず電気の網を放り投げ追撃を行うと、たまらずリーグとファントムが下がる。
「以前より大分マトモになったようですね」
ファントムはそのまま一瞬浮き上がったかと思いきや、すぐ様重力に任せるかのように僅かに落下する。
その生き物がフワッと沈むと、その尻尾が物凄い重量音で床に落ち、そこから地を這う衝撃波が襲いかかった。
「うわっ!」
「私は常に浮遊していますから.......ちょっと力を抜いて落ちるだけで尻尾の重たさから衝撃波が出て便利なんですよ」
その言葉と共に、再び地を這う衝撃波が僕達に向かって伸びて行く。
「くっ!」
魔法で僕達は飛び上がりそれを回避すると、リーグはそれに合わせて剣先から細いレーザーを放つ。
そのレーザーが飛来すると共に黒い魔法陣がまた出現しレーザーの速度が大きく減衰していく。
「これだけデバフばら撒きゃあもうそろそろ良いだろう」
伊集院くんから生えている闇の手が点滅を止める。すると彼は武器として杖を出現させると氷の結晶をバキバキと作り出しそれを放つ。
「【痺れ針】!」
自分も彼に合わせるように麻痺効果を持った針を浴びせる。
「なかなか特殊な魔法を使いますね?」
リーグが樹の障壁を展開する中、ファントムはその巨大な曲剣の尻尾を持ち上げ、顔ーーと言うか全身ーーを守る盾のように扱い、針を防ぐとそのまま舞い上がり高速回転を始めた。
「【円月断頭】!」
縦に高速回転していたファントムが隕石の如く降りかかる。それを後ろに引いて躱そうとすると、ファントムが着弾した所からその前方に衝撃波が展開されて僕はモロに被弾した。
「くっ」
自分の足が浮き、壁に激突する。
左腕に激痛が走り、プライスの死体に重なる様に腕から血が噴き出し始める。見れば瓦礫によって切り傷が出来ていた。
「いつつ.......【フレイムリフト】、【ブレイクソニック】」
火炎を放ちガードさせ、ガード破壊の剣波で切り付ける。ファントムが思わず後ずさりすると、そこにイエローさんから電撃の束が注がれ、ファントムのダメージが加速して行く。
「くっ」
「【ダークスターブラスト】!」
すかさず逆五芒星のビームがリーグより放たれ、イエローさんに直撃する。
「【黒輪】!」
リーグが呪文を唱えると、闇で出来た車輪のようなものが出現し転がり始める。それを剣で受け止めると、車輪が激しい摩擦音を奏で始め剣から煙が上がり始めた。
「くっ、ぐう.......!」
車輪が回転するごとに加速していき、回転と推進力が上がっていく。
凄い威力で、力負けしそうだ。
「うあっ!」
車輪を受け流せずに居ると、ファントムの大剣の様な尾が宙を斬り、円を描くように真空波が飛来し僕を裂いた。
その痛みが体に走り一瞬怯むと、黒い車輪がそのまま僕を轢いていく。
更に鮮血が自分の既に負傷した腕から散り、プライスの血と混ざり凝固を初めて行く。
「有能だとしてもこれでは宝の持ち腐れですね。【暗月斬】!」
三日月状の剣波のブーメランが襲い掛かる。
「くっ!」
剣では相性が悪い。
そう判断した時、僕はポケットから武器の入っているカプセルを取り出した。
「【濃霧】!」
霧を発生させ視界を塞ぐ。これに呼応する様にイエローさんがガンソードを天井へと構え、雨雲を作り出していく。
「穿て!」
彼のその声に轟音が轟く。
雷と濃霧の中で動きを感じ取り、新たな武器を使って辺りを凪払うと、何かに当たる音がした。
「ぐっ!」
ファントムの声だ。
「【クロスソニック】!」
持ち替えたブレードトンファーでクロスするように切りかかり、刃と真空波で二重に裂くとそのまま僕は至近距離で打突を放つ。
その打突でファントムと思わしき影が怯むのを確認し、僕は掌を翳して呪文を唱えた。
「【光の螺旋】!」
大きく弧を描いて吹き飛ぶ死神のシールドが、静かに崩れ去る。
「ば、バカな.......」
「情けない奴め」
リーグの声が霧の中聞こえると、紫色の炎が吹き上がり僕は宙に投げ出される。
「そこだ!」
そしてリーグが霧の中から飛び出し、伊集院くんのバリアを切り付ける。
破壊されたのを確認し、彼は続け様にもう一閃浴びせると、伊集院くんの身体が真っ二つに切れる。
「やはりな」
「ああ、まあ目的は果たせたからいいか.......」
それだけ言うと、伊集院くんの姿が薄くなって行きやがて消滅した。
床を見てみると、そこには人型の紙切れが1枚。
式神だ。
「本体はおおかたネズミを追って屋上か」
「よく式神だと分かったね」
「あいつは式神を行使する時に闇のバリアを纏うから分かりやすい」
リーグが闇を剣に纏うとイエローさんのガンソードを薙ぎ払う。
流れるような手つきでそのまま刃を返し、彼が間髪入れずにイエローさんに二撃目を入れると、イエローさんはよろけながら後退した。
「星野くん、そろそろ撤退だ」
「えっ!?」
「もうこれ以上ここでこいつらを相手にする必要はない」
そう言うとイエローさんの腕が僕を乱暴に掴み、バチりと電流が彼の体に走ると一瞬で僕達は部屋の反対側へと移動した。
「舐められた物だな」
「舐めていないから撤退するのさ。それに当初の目的はもう君たちが来る前から既に達成している」
プライスの死体を掴むと、彼の身体に再び電気が走る。
木っ端微塵に破壊されているサーバー郡をちらりと見やると、リーグはため息をついた。
「でも2人居ると流石に逃げれる自信が無かったから1人倒せるまで粘っていたのさ」
それは今初めて聞いたぞ。
抗議の意を込めてイエローさんを睨むと、リーグが呆れたように武器を収めた。
「X-CATHEDRA総出で潰しに来ると言いたいのか」
「もちろん。まさか我々が大々的に依頼掲示板に出している情報を知らないとは言わせないよ」
イエローさんがニヤリと笑うと、ファントムがゆらりと前へ出て最後にこう言い残した。
「次は何れかの命を取る戦いですね。私はそれが楽しみでなりません」
「だろうな」
ファントムが黒い闇の穴を生み出すと、それに包まれてファントムが消滅する。
そしてリーグが見ている中で僕はイエローさんに連れられ空間転移で場から離れた。
「.......さて、もう1人のネズミを見に行くとするか」




