100. 防衛基地
防衛基地の内装は白一色で、まるで何処かの研究所の様な印象を受ける所だった。
入口からは一直線に廊下が伸びており、左右に幾つかの扉が伺える。
「プライス、この建物の内装はどうなってる?」
「今共有するわ」
彼女がスカウターをカチカチと弄ると、僕達の目の前にARマップが展開される。
「よし.......さて、当然のことながらここの警戒態勢は現状、依頼を掲示板でかけてる時点でルナティックにも筒抜けだから過去最高水準となっているものと思ってくれーー」
ーー透明化魔法を今掛けているが、これも無効化されるだろうしここからは短期決戦だ。
そう伊集院くんは僕達に告げた。
「正面のエレベーターに入ったら、手分けして装置を破壊する。イエロー、お前は俺と一緒に来い。手当たり次第に施設を破壊して敵の気を引く。プライス、お前は彗と装置を叩け」
4人で進むと、やがて目の前には彼が先程言ったエレベーターがあった。
遂にその時が来たのだ。
「プライス、彗。ここは君たちにかかっているぞ。俺たちはあくまでも陽動だ。【迷彩解除】!」
その呪文で再びお互いの姿が見えるようになった。その瞬間、エレベーター前を写していた監視カメラが氷漬けとなり、破壊された。
それに合わせるかのようにエレベーターホールにピンポーンと言う音が響き、扉が開く。
「ファントム様も一体何を――わわっ!」
「急いで!」
出て来た隊員たちに、プライスが正面から拳を叩き込み沈黙させる。
彼らをそこら辺に放置し、僕とプライスはエレベーターに乗り込み最上階を目指す事にした。
伊集院くんはイエローさんと一緒に階段を登り始め、僕達は別れる事となった。
不安だ。
僕達だけで何とかなるのだろうか。
「そろそろ目的の階に着くわ.......武器を構えて」
「うん」
プライスの一言に合わせて、僕は剣を構えた。
そして扉が開いた瞬間、プライスはすかさず向かい側に居た敵に奇襲を仕掛けたのであった。
「何なんださっきの騒ぎは.......ん、どうしたプライ――」
「【累乗反重力】!」
プライスがピアースに掴みかかり、エレベーター内に無理やり引きずり込んで呪文を唱えると彼は重力で天井に叩きつけられ、そのまま天井に縫いつけられたかのように動かなくなった。
.......ピアース。
案の定スターズが居た。
「貴様.......あの時の地球人と何を――」
「【口封じ】!」
色々と叫ばれたり呪文を唱えられる前に、口を物理的に封じて喋れなくする呪いを掛けると、プライスが此方を一瞬驚いた様な顔で見た。
「やるじゃない」
「だって煩いし」
「だそうですよピアース様」
ピアースが此方を睨む中、僕達はエレベーターを出て先に進む。
さっきのエレベーターには監視カメラが無かった。大丈夫なのだろうか。
「慎重にね」
幸い、さっきのピアースが居たくらいで今の所人の気が少ない。
「人もいないし、監視カメラも見当たらないね」
「ここの監視カメラは大半が球状で巡回してるわ」
「巡回?」
「魔導器具で警備員の様に彷徨いてるのよ。だからいつ鉢合わせるか――【棍棒根】!」
曲がり角に差し掛かった所で、プライスが咄嗟に呪文を唱えると床から樹木の根が湧き上がり、前方を巡回していた丸いカメラを粉々に粉砕した。
「言わんこっちゃないわ」
「あ、危なかったね.......」
「長居はできないわ、カメラを破壊したことによって通信がとぎれちゃうから直ぐに人が来る、急ぎましょう」
「【氷の爪】!」
すぐ横にあった部屋から監視カメラが飛び出したところで、僕は氷の爪を作り出しカメラを切り裂く。
「やるわね!」
人の目玉の様な姿をしたそのカメラが地面に転がると、それはそのまま沈黙した。
「どれぐらいで目的の装置の所に着くの?」
「もうそろそろよ」
急ぐ必要はあるけれど、焦っては行けない。
そう考えていると、突然大きな揺れが建物全体を襲い、僕たちは地に伏せる事を余儀なくされた。
「い、今のは一体?」
「下の方からね.......」
細かい揺れが断続的に起きている中、僕達は立ち上がり進み始めた。
伊集院くんたちだろうか。
人の気配が少ないのも彼らが気を引いているからなのかもしれない。
「行こう!」
2人の努力を無駄にする訳にも行かない。
僕達2人もまた、彼らに応えるべく走り出した。




