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深い森の彼方に 改訂版  作者: とも
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-1-

(当初の前書き)

前回投稿して9話まで続きその後中断、5年間も間があいてしまいました。申し訳ありません。ストーリーの終息がイメージできなかった結果です。

ようやくイメージが何となくできあがりましたので9話に続いて再開するつもりでしたが、最初の部分も少し書き直したいところもあったので、書き直しとすることにしました。

したがってこれより「深い森の彼方に 改訂版」として連載を開始します。

旧作は9編で終結とします。しばらく掲載しておきますがいずれ削除したいと思います。

よろしくお願いします。



(今回の前書き)

二度の警告で徹底的に削除してあります。

特に冒頭部分の削除は、結末の削除と含めてキモになる部分だと思っています。

是非「アルファポリス」で完全版を読んでいただければと思います。

なお、旧作は自然消滅の予定です。


いつのまにか疲労と空腹で倒れていたのだろうか、ふと気が付き体を起こし辺りを見回すと、気が遠くなるほど続いていた鬱蒼とした森が途切れ、明るい日が地面を照らしていた。そして、前方を見るといきなり現れたのは西洋風の巨大な城郭、左右を見渡しても果てしもなく城壁が続いている。世界遺産に指定されてもおかしくないような堂々たる建造物だ。21世紀の世界に唐突に出現した全く現実味のない古色蒼然とした石造りの建造物に向かって、私は疲労と空腹に崩壊寸前の体に鞭をうって最後の力を振り絞り立ち上がった。足を引きずるように近づいていくと、ロココ調の複雑な装飾に飾られた門が音もなく開いた。

「何者だ。」

ライフルを手にした兵士が二人、姿を現した。

「道に迷ってしまって、もう何日も飲まず食わずで森を彷徨っていたんです。」

「城に近づいて何をしようとしていたのだ。」

「食べ物を恵んでいただこうかと・・・」

一人の兵士が私のそばに近づくと、いきなり私の両手に手錠を填めた。そのうえ、腰縄を巻かれ城門の脇にある小さな部屋に引きずられていった。そこで身に着けている全ての者を力づくで剥ぎ取られた。

「何だこいつの着ている下着はおかしな形をしているな。前に何でこんな穴が開いているんだ。」

一人の兵士が下着を剥ぎ取ると、二人は私の身体を見て一瞬怪訝な様子を示した。

「不思議なやつだ。大人のくせにまるで子供のような体形をしている。」

「おい、こいつの股間を見ろ。おかしなものを股につけていやがる。」

「体に不審なものを装着しているようでもない。恐らく奇形だ。まあ、いいだろう。」

「リーダーが取り調べに来るから、それまでおとなしく待っていろ。」

兵士たちは腰縄の一端を部屋の柱に結びつけ部屋を出て行った。彼ら二人とも中肉中背で鍛えられた様子が伺えたものの、肩幅は狭く臀部もふっくらとしていた。それに、異様に声が甲高く、まるで女のようだった。

壁に寄りかかっていると、疲労と空腹で意識が遠のいていった。


***


私はうんざりしていた。

私は、中流家庭の一人息子として生まれ育ち、何不自由なく育った。人付き合いは得意でなく友人は多くはなかったが、何の悩みもなく成人した。

学校を卒業して数年たつ頃から、両親は「彼女はいるのか?」「結婚は早いほうがいい。」「知り合いにいいお嬢さんがいるんで会ってみるか。」とそんな話ばかりするようになった。

何で結婚しなくてはならないんだ、何で妻と子供と年老いた両親を自分が支えていかなきゃならないんだ、自分が男だからか。結婚したいやつがすればいいじゃないか、自分の人生ぐらい好きにさせてくれ。

職場にも馴染めなかった。男だらけの職場で、誰もが会社と自分の業績を上げることに全精力を傾け、出世競争に励んでいた。彼らは、それを自分勝手な気持ちとは全く認識せず、世の為人の為に額に汗して働いているんだという自己満足に溢れていた。傍から見れば活気のある職場かもしれないが、私は同僚と一緒にこのような男らしさを演じることに疲れはてていた。

だからといって、男であることが嫌になって性転換して女になろうとか、そこまでいかなくてもフルタイムで女装して女性として暮してみようとか、いくらなんでも踏み切る気にもならなかった。ただ、脂ぎった男たちと一緒にいるより女性に囲まれているほうが居心地がよかった。

町を歩く女性たちが眩しかった。自分もあのようになってみたい、せめてロングヘアをなびかせ、スカートをはき、ヒールの音を響かせて町を歩いてみたいと思った。通販で手に入れたランジェリーや、大型スーパーで店員の蔑みと好奇心に満ちた目に怯えてサイズも確認しないまま買った婦人服も、身に着けて外出するなどととてもじゃないそんな勇気もなく、帰宅後の自室で身に着けることが精いっぱい

だった。でも、身につけるだけで自分も女性の一員になれたかのような錯覚が陶酔を呼び起こした。

そのような性癖の本質がどこにあるのか、自分でも確たるところはわからない。少なくとも、イケメン男優に憧れたこともなければ、男に抱かれたいなどとまかり間違っても思ったこともなかった。自分が男であることに極端な違和感を覚えているだけなのか、それとも、ヒーローに憧れる少年が真似をするのと同じように女への憧れが強すぎて自分も同一化したいのか、よくわからなかった。


今日もいつものとおり終業のチャイムが鳴ると、残業している上司や同僚の冷たい視線を尻目に逃げるように職場から飛び出していった。急いで行くところもなければ、家で誰かが待っているというわけでもなかったが、男だらけの職場から少しでも早く逃れたい、その一心で毎日終業と同時に職場を飛び出している。

職場を逃れた安堵感で、ようやく自分を取り戻した。特に何をする宛もなかった。周りを闊歩している流行の服に身を包んだOLをいつものようにうらやましく眺めていた。駅に通じる商業施設にある明るいブティックを横目で見つつ、あのワンピースを着てみたいと思いながら、店に入る勇気のない自分にため息をつきつついつもの帰路を歩いていた。

駅までこんな距離があったっけ、と何となく違和感を感じ、妄想を振り払ってあらためて周りをよく見渡してみた。違う。雰囲気が違う。でも嫌悪感はない。好ましい雰囲気だ。改めて、よく回りを眺めた。男性の姿が全く見えなかったのだ。廻りの帰宅を急ぐ大勢の人たちは全て女性だ。中には自分の親よりも年上かと思われる年配の人もいたが、お婆さんだけだ。子供たちの嬌声が聞こえ、見ると幼稚園児の集団だったが女の子ばかりだった。道を歩く人ばかりでなくコーヒーショップの客も居酒屋のビラ配りも女性だけだった。若い男で溢れかえっているPCショップも商品を見ている客は全部女性だった。いつもいかつい警察官がにらみをきかせている交差点の交番も今日は婦人警官だった。いつも大勢のサラリーマンにもみくちゃにされながら駅に向かっているのに、今日はOLだらけだった。それでも女性に囲まれていることでほっとする気持ちになってきた。

オフィス街から繁華街を抜け駅に向かって歩いていたはずなのに、いつの間にかケバケバしいネオンが見当たらなくなっていた。歩く道筋の周囲は住宅街に変わっていた。職場の近くにこんな住宅街があるとは知らなかった。私の周りを歩いていた人たちの顔ぶれも変わってきた。帰宅途上や買い物帰りの人、犬の散歩やジョギングをしている人、だいぶ少なくなってきたとはいえ大勢の人がいる。しかし、相変らず女性の姿だけで男性は全くいなかった。自分の歩く行先がどちらだったのか分からなくなり、恐らく人の来るほうが駅なのだろうと当たりをつけ、人波に逆らうように歩き続けた。繁華街に向けて歩いているつもりだったのに、マンションやアパートは次第に少なくなり、やがて人家は古い一戸建ての住宅が立ち並ぶ閑散とした住宅街になってしまった。途方に暮れたものの、廻りの女性たちもまばらになり、現在地の確認もしようがなくなってきた。そのうち、徐々に人家も減り道幅も狭くなり荒れ果てた農地や潅木が目立つようになった。周りの女性たちも、自宅に帰りついたのか更に少なくなり、ほとんどいなくなった。

いつの間にか人家が途切れ荒涼とした風景が広がっていた。舗装は途切れ石ころだらけの道を歩いている私以外の人は、恐らく繁華街を歩いていたときから私の後をずっと歩いている女性一人になっていた。一流企業のOL風の若い美しい女性だった。振り返ると目があった。微笑をかえしてくれた。こんな妙齢の女性が、どうしてこんな人気の全く途絶えた原野の中の道を歩いているのか不思議だった。

日暮れ近い薄暮がいきなりほとんど闇になった。いつの間にか鬱蒼とした深い森に彷徨いこんでいた。

「道を間違えてしまったようですね。」と、後を歩いているはずの女性に声をかけた。

返事がなかった。足を止めて後ろを振り返ってみたが女性の姿はなかった。ついさっきまで歩きづらそうなヒールの靴音が聞こえていたはずだ。分かれ道もなかった。森の中に人が入りこむような民家どころか、中に隠れるような廃屋や祠すらもなかった。その女性は忽然と姿を消していた。


私はどこを歩いてきたんだろうか。どこに向かっているのだろうか。自宅のある郊外に通じる鉄道の駅に向かっていたはずなのに。前後左右どこを見渡しても森の途切れ目はなかった。ただひたすらに鬱蒼とした濃い緑が続いているだけだった。そして下草に覆われた獣道がずっと前に続いていた。私はその道に沿ってひたすら歩き続けるしかなかった。

たしか職場を出たのは夕方だった。住宅街に入ったところで日暮れが迫り薄暗くなっていた。そのあとほとんど暗闇のような森に入ったはずだった。しかし、いつのまにか明るくなっていた。しかし太陽が差し込んでいるわけでもなく、ただひたすら続く獣道が視認できるだけの薄明るい状態だった。

ひたすら歩き続けた。立ち止まって傍らの岩に腰を下ろしたとたん二度と目覚めのない眠りにつくのではないかとの脅迫感から、足を止めることもできなかった。足の疲労はとめどもなく進み、時間の観念もなくなった。一日山歩きをした経験と比較しても、丸一日以上歩き続けたような疲労度合だった。日が暮れる様子も無かった。燦燦とした日光が木の葉の間から差し込んでくることもなかった。ただぼんや

りと薄明るい状態が延々と続いていた。鳥のさえずる声も聞こえず、わずかな風にざわめきをたてる森の中の獣道をひたすら歩き続けた。空腹とのどの渇きも激しかったが、食べられる植物や水分を求めて道を外れ森の中に踏み込む勇気もでなかった。

どれだけ歩き続けても変化のない深い森に、何日経ったのかもわからなくなっていた。空腹と疲労は極限に達し、自分が生きているのか死んでいるのかすらよくわからなくなり、足はまるでゼンマイ仕掛けの人形のようにただ繰り返し前後によろよろと動き続けていた。


***


「お前か、混沌の森から抜け出て我が国に入ってきたやつは。」

城門の隣の小部屋で腰縄に繋がれたまま夢うつつの中にいた私は、突然甲高い大声で目が覚めた。

部屋に入って来ていたのは、ロングヘアーで黒の細見のジャケットとタイトスカートに身を包んだ30歳ぐらいの女性だった。

「私がこの国のリーダーだ。お前は何を求めて我が国に来た?」

「いえ、森で道に迷ってしまったんです。もう何日も飲まず食わずで、少しでいいですから食べるものを恵んでください。お願いします。」

化粧は薄かったが美しい女性だった。しかし私に向ける口調は、女性とは思えない厳しいものだった。

「お前は私たちの国を求めてやってきた。そして我が国に侵入をたくらんでいるのだ。誘導員たちの連絡ではそうだった。」

「そんな、このような国があるとは全然知りませんでした。ただ、藁をもすがる思いでこの建物に近寄ったんです。侵入しようだなんて。」

「心にもないことをいうんじゃない。我々は、お前の心の底を読み取っているんだ。」

「・・・」

「本来、おまえのように股間に余計な物をぶら下げている人間は我が国に一歩なりとも立ち入ってはならないのだ。まして我が国の大事な生産物を恵んでくれなどととんでもないことだ。」

「いえ、これ以上中に入れていただかなくても結構です。何か食べる物をいただけたらすぐに立ち去ります。」

「既にお前は我が国の領土に立ち入ろうと自ら城門に近寄ってきた。これは紛れも無い事実だ。それに、ここからあの森に再度立ち入ったら抜け出すことはできない。立ち去るなどということは不可能だ。したがって、お前は不法入国したことは厳然とした事実だ。そのような大罪を犯してこのまま許してくれなど、ありえないことだ。」

「そんな」

「大罪の罰として、それから入国してしまった後始末として、お前の始末をする。始末といっても我が国は平和な国だ。いきなり銃殺するなどというような野蛮なことはしない。命の保証はするから安心しろ。そこの台に横になれ。」

私は傍らにあった木製の寝台に横になると、いつの間にか彼女の背後に控えていた二人の兵士に手足を寝台の支柱に繋がれ大の字にあおむけにされた。そこで突然思い出した。私は女性の面前で全裸だったのだ。


*********** 削除****************


彼女に頬をたたかれ目を覚ました。猿ぐつわをかまされ、硬い木の寝台に手足ばかりではなく体もしばりつけられ身動きもできないように固定されてしまっていた。彼女は

「死ぬようなことはない。」

と一言言葉をのこし、兵士たちとともに部屋を出て行った。

私は部屋に放置された。股間からは1本の細い棒が飛び出していた。


激痛は間断なく股間を襲った。最初の二日間は激痛で目が覚め、再び激痛で失神した。それでも、深い森の中では存在しなかった昼夜の訪れをこの部屋では感ずることができた。日が暮れそして夜が明けることが繰り返された。1日に2〜3回、兵士らしき人が部屋に来ると股間に刺さっている棒を指ではじき、切断時と同じような激痛に見舞われた。激痛であえぐの口に少量の液体を入れた。その液体にむせようが何となろうが、一切取り合わず入れ終わると無言で出ていった。拘束は解かれることはなく、食べ物や飲み物は一切与えられなかった。

四日目になると、激痛はやや収まってきた。兵士による激痛のお見舞いは変わらないが、日中は覚醒したまま色々考えることもできるようになってきた。

ここはいったいどこなのか、こんな非人道的な扱いを平然と行える国が本当にあったのか、どんな発展途上の国でもこんなことはしないのではないか。

あの女性が言っていた「お前は私たちの国を求めてやってきた。」「お前の心の底を読み取っているんだ。」と言ってことを思い出した。私の性癖を知っているのだろうか、いきなりの切断はその性癖とかかわりがあるのだろうか。

そもそもあの切断方法は、100年以上前に中国で行われていた「自宮」そのものではないか。下級官吏だった刀子匠が青竜刀ような刃物で切断していたのが、女が軍用ナイフで切断するようになった。後処置も似たりよったり。灰で切断面の処置と止血をしていたようだが、尿道閉塞を防止するため棒を差し込むなど全く同じだ。安静期間終了後、棒を抜き取り尿が噴出して手術終了というのも同じだろうか。違いといえば、自給は玉も竿も一気に切断したが、自分の場合は竿だけだということだ。


五日目になると激痛はかなり弱まってきた。すっかり窓の外が明るくなってきたころ、リーダーと言っていた黒いスーツに身を包んだ女性が部屋に入ってきた。無言で私に近寄ると(中国の宦官と同じように)股間の棒を抜き取った。尿が噴出した。(手術成功ということか)彼女が消毒液を浸した布で傷口を荒々しく拭くと痛みが治まりかけていた股間にまた激痛が走った。

寝台に私を括りつけていた縄や手錠を外し、激痛に苦しんでいる私を無理やり立たせた。私は立ち上がると自分の股間に目がいった。竿は根元深くからそぎ落とされ、玉の入った袋だけが醜くぶら下がっていた。

彼女は持ってきた紙袋を私の足元に放り出した。

「国内での居住を許す。だが、全裸はだめだ。町に連れて行ってやるからこの服を着ろ。」

紙袋に入っていたのは服だった。それも全部女性用だ。下着は真新しかったが何の変哲もない白い綿のショーツにブラジャーだった。白いブラウスと濃紺のサージのスカートは、まるで一昔前の女子高校生の制服のようだった。しかし、かなり着古されていてブラウスに黄ばみがあり、スカートのはプリーツはきちんとついているが、おしりの部分はテカテカでホックは何度も付け直した跡があった。

「なんだ古着か・・・」

いきなり拳が飛んできた。女性とは思えないような力だった。

「生意気をいうんじゃない、新入りのくせに。早く着るんだ。」

あわてて下着をつけた。

「おまえ、やっぱりそうか。男だったらふつうはブラジャーの着けるのに一苦労するはずなんだがな。」

また、殴られた。確かに家で密かに女装していたことは事実だ。よくブラジャーをしたまま寝たものだった。しかし、それに女性に見られながら女装するのは始めてだった。気持ちが高ぶってきた。しかし、刺激を与えるべきモノは既になかった。ブラウスを着て、スカートをはくと、いきなり彼女にスカートをめくられた。切断面からカウパー腺液が溢れ出しすっかり濡れたショーツが丸出しになった。

「股間から何をたらしていやがるんだ。」

また激しく殴られた。

塩味がついただけのお粥を食べさせられ、初めて城郭の内部に連れ出された。

入り口の城門付近は軍隊の駐屯地のようだった。警備をしている兵士や、戦車や装甲車の運転訓練をしている兵士が見られた。きびきびした行動は軍人らしく、迷彩色の服にヘルメットや銃剣、軍靴を装着した様子はこれまで見たどこの国の軍人と変わらなかったが、誰もが小柄で、甲高い掛け声からすると全員女性のようだった。

駐屯地を過ぎ、更に奥まったところに明るい町が広がっていた。最初は住宅地、徐々にちょっとしたビルや商業施設も見て取れた。町を歩く人々、働いている人々、寛いでいる人々、年老いた老人も幼い子供もすべて女性だった。男性の姿は全くなかった。

職場を出てあの深い森に入るまで、女性しかいなかったあの光景と同じだった。この国は女性だけが成り立っているのだろうか。再び最初にあの女性の言葉を思い出した。「お前は私たちの国を求めてやってきた」「お前の心の底を読み取っているんだ。」私の男への嫌悪感や女性だけの世界で暮したいという深層心理のおかげで、こういう夢を見ているのだろうか。それにしては切断の記憶は生々しかった。あの激しい痛みは夢とは思えなかった。まだずきずきと切断面が痛む。深層心理が現実を呼び起こしたのだろうか。そんな馬鹿な。そんなことがあるわけがない。

「あの、この国には・・・」

前を歩く彼女におずおずと声を掛けた。リーダーは足を止め振り向いたとたん拳が私の鳩尾を直撃した。

「余計な口を聞くな!」

強烈な一撃で一瞬息が止まった。

「私にどうしても呼びかけたいのなら、リーダーと呼べ。」

地面に蹲ったまま暫く動けなかった。

「馬鹿野朗。止まるんじゃない。」

後から蹴り上げられ股間の切断面に激痛が走った。私の髪を掴んで引き起こされた。リーダーに従って歩くしかなかった。


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