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怯えているのはお前だろ?

アドバイスや感想も待ってます!

「 ーーんで?一体お前は何しに来たんだ?。 」


「 それ今聞くのかよ… 。 」


きっとロクでもねぇ理由なんだろうなと呆れながらハンスが問う。


それに、ハンスのストレス発散に付き合わされたーーボロボロになって膝をついているクレアがどうにか立ち上がって答える。


「 だって久しぶりに帰ってきたらなんかお前の家から知らない気配が漏れてるし。どう考えてもその気配は子供のだし。んだから見に行くっきゃねーなって思って来たんだけど。 」


「 来なくていいわ。 」


「 なんでだよ〜。楽しそうじゃん。 」


「 こっちの迷惑も考え……いやいい。お前には言っても無駄だからな。 」


「 さっすが!分かってるねぇ。 」


「 あぁ。だから次からは予告なしでぶっ飛ばしてやるよ。 」


物凄く綺麗な笑みを貼り付けて物騒な言葉を口にするハンス。


「 ヒェッ⁉︎勘弁してよ〜。 」


「 嫌なら来なければいい話だ。 」


「 はいはい。ーーそれで、いつになったら彼女達のことを紹介してくれんのかな? 」


両手を上げて降参するクレアの視線が、ハンスからリフィリア達に移る。


「 あぁ。お前ら、こっち来い。 」


指を鳴らして結界を解き、手招きするハンスに近づくと、自己紹介は自分でしろと目で言ってきた。


「 え、えっと、私はノアです。 」


「 ルティルです。」


「リフィリアよ。 」


「 ノア、ルティル、リフィリアかー。よろしくなっ。 」


三者三様のセリフにニカッと笑ってクレアが彼女達の頭を撫でーーようとするのをハンスが止める。


「 触んな。こいつらの可愛さが減る。 」


「 かわっ⁉︎ 」


「……ほんとアリスはリフィリア達のこと大好きだよね〜。俺をぶっ飛ばしたのだって、ストレス発散より彼女達を怖らがらせたからの方が割合高いでしょ。 」


「 当たり前だろ。俺はこいつらの養い親だぞ。 」


「 ……ん? 」


「 ……はぁ。 」


ハンスの言葉に、首をかしげるクレアと溜息をつくリフィリア達。やがて納得したように、クレアはリフィリア達に同情の眼差しを向けた。


「 ……あー。そっちね。いやぁ苦労するよ〜コレは。 」


「 分かってます。長期戦になることも覚悟の上です。 」


クレアとルティルの会話に、意味がわからないと今度はハンスが首をかしげる。

ハンスは知らない。

自分の養い子が、彼にそれ以上の想いを向けてる事を。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「 お前は本当の事を明かさないのか?ハンス。 」


「 今はアリスだアホ。 」


その日の夜。

ハンスとクレアは執行人の任務として、女王を殺すために王宮に忍び込んで来た他国からの刺客達を殺していた。


「 いーじゃん。どうせ聞いてる人はいないんだからさー。 」


もはや物言わない屑となった刺客達を見下ろしながらクレアは言う。

そして視線を、ハンスの髪へ。

昼間見た赤ではない。烏の瞳のような純黒。

彼の本来の髪色を指差して。


「 ハンスが正体を隠す理由は…まー想像がつくから良いけど、どうして髪の色まで隠すわけ? 」


クレアはハンスの病気の事を知っていた。

だからこそ、正体を隠す理由を深くは聞かない。

だが、それとこれとは関係ないだろう?と。

問うたクレアを、ハンスはその深紅の瞳に写して。


「 俺が何なのか知れば、きっとあいつらは怯える。 」


「 そんな事…。 」


「 無いと言い切れるか?実の肉親でさえ、俺を見切ったのに? 」


乾いた笑みを向けて。


「 俺たちは……俺と女王はお前を怖がらなかったじゃないか。 」


「 女王は優しい人だからな。あの時、弱り切ってる俺をみて、同情してくれたんだよ。 」


あの人はそういう人だと。そして。


「 お前は論外だ。どうせ面白いかなんかで俺についてきてるんだろう? 」


それに、心が救われたのも事実だけれど。

そう言ったハンスに、クレアはなおも食い下がる。


「 でも、彼女達は髪色の事で迫害を受けてきた。その悲しみなら、わかるんじゃ無いのか? 」


だけどーー。


「 そうだな。あいつらは優しい。枯れていた花一輪のために水をやったり、死にそうになっていた小鳥を治癒してやったり。 」


「 なら! 」


「 でもその優しさは、弱いものに向けられたものだ。 」


そう。だからーー。


「 俺みたいな、強さも地位もある者に向けられる優しさじゃ無い。 」


だから、それを求めるのは間違いだ、と。


「 話は終わりか?なら俺は帰る。報告書は頼んだ。 」


「 ……分かった。 」


クレアの頷きを聞いて、ハンスは自身の帰る場所へ足を進めた。


「 求めるのは間違いーーねぇ。 」

ハンスの後ろ姿を見送ったクレアは、呟く。


「 本当にそう思ってんなら、そんな羨望に溢れた声なんか出ないんだよ。 」


それに。


「 愛に怯えるような奴は、強者って呼べないんだぜ? 」


ハンスはーーあの自分より随分と幼い彼は、きっと気づいてないだろうけど。


「 それなら、俺が一肌脱ぎますか! 」


そういうのは、大人である自分の務めだろうと。

『 面白い 』だけでついてきている?確かに初めはそうだったけど、でも、今はそれだけじゃあ無い。


手のかかる、可愛い弟。

口に出したら殺されるから言わないけれど。

ずっと前から、自分の中での彼の立ち位置はそれで。

兄として、大人として、やれるだけのことはやろうと。

思いついた策を、自身の主人に伝えるべく、クレアは女王の執務室へと向かったのだった。


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