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死んで死んでダーリン

ブックマークしてくれた方々、ありがとございます!これからもよろしくお願いします!!



「 俺直々に引導を渡してやる。感謝しながら死にやがれ。 」


ある日。

どす黒い殺意がこもった声に続いて、いつもは静かな森に響き渡ったのは豪快すぎる爆発音だった。

立ち込める炎と煙。

普通の人間にあてたら確実に焼死体となって発見される程の魔術を撃ち込んだ張本人、ハンスが肩で息をしながら、口の端を吊り上げ、殺意しかない瞳を前に向ける。

なぜこんな事になったのか。それは、十五分前にさかのぼる。離れた所から見ていたリフィリア達は、記憶を思い起こしていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ハンスは六歳という幼い歳でありながら、魔法界最高峰の実力と、女王に次ぐ権力の持ち主である。


執行人というのは、女王が彼の生きる理由のために立ち上げた、暗部の中でも異質の部署。

国の裏を仕切りとり、他の暗部には処理できない事柄を受け持つ。

女王の懐刀。

ククロックの最後の切り札。

だがその姿を見たものは少なく、最早伝説にもなっているその存在。

その隊員は、執行人『アリス 』であるハンスと、『 ドロシー 』というもう一人。

そしてその仕事量は、過労死すると言っても過言では無い程の量。

だから、リフィリア達が来た後も、彼は彼女達に留守番を頼み、仕事場である王宮へと足を運んでいた。


「 大変そうだね。アリスさん。 」


屋敷でそう零すのは、今しがた家を出た彼を見送ったノア。


「 そうねこれで……彼、一週間以上も寝てないわよ? 」


よく死なないわね、というルティル。


「 まぁでも、それも今日で終わりみたいだから、しばらくはゆっくりできるんじゃない? 」


続いたリフィリアの言葉に、ノアが「 そうだね 」と頷こうとしたーーその時だった。


「 おーい。誰かいるかー? 」


「 ‼︎ーーッツ⁉︎ 」


玄関から聞こえた、ハンスとは違う男の声。

それにビクリと肩を弾ませ、屋敷の奥の部屋へと引きこもる。それはもう、脱兎のごとく。


「 だ、誰!? 」


「 どうやってアリスの結界を抜けて来たのかしら。 」


「 ど、どうする⁉︎ 」


上からリフィリア、ルティル、ノア。

ひそひそ声で話す三人に、誰とも知れない足音が近づく。

誰も入ってこれないようにと、ハンスが作った結界を抜けて来た者だ。

自分達じゃ太刀打ち出来ない。

そして足音の主が、彼女達が身を寄せ合う部屋の扉を開けた。


「 よぅ!俺はクレア。あいつの同僚で兼保護者だ! どうやって結界を抜けて来たかっていうのは、まぁ物理的に壊させてもらったぜ! 」


リフィリア達の前に立って、一気にまくしたてたのは、紺に近い猫っ毛の青髪に、満月のような金色の瞳を持つ青年。

どうやら全部聞こえていたらしい。

それよりもーー


「 ほ、保護者? 」


「 ぇ?なにそれ初耳。 」


「 同僚ってことは、貴方が『 ドロシー 』ですか? 」


「 あれ?あいつ俺の事何も言ってねーの? そうだぜ!俺がドロシーだ。 」


リフィリア達の困惑からきた質問に答えたクレア。


ーー刹那。


「 どうやら命はいらないらしいな。クレア? 」


クレアの背後から聞こえる声。

それにクレアが振り返る暇すら与えず。


「 え?ちょっ!う、うわァァァア‼︎ 」


「「「 アリス‼︎ 」」」


リフィリア達の声に、クレアに魔術を撃ち込み、その断末魔を見送った人物ーーハンスが振り返る。


「 待ってろ。すぐ片付ける。 」


「 へ? 」


真顔で三人に告げると、クレアが吹き飛んだ方ーー屋敷の外にある簡素な庭に足を向けた。


「 ちょっ何でお前がここにいるんだよ‼︎王宮の部室に行ったんじゃねーの⁉︎ 」


「 あぁ。行ってきたぜ?その後すぐに女王からお前が任務終了後も顔をださねぇって連絡を受けてな。連れ戻すように言われたんだよ。 」


「 へ、へぇ〜。でもよく俺がお前の家に居るってわかったな? 」


「 自分の家に見慣れない気配があったら普通に気づく。嫌な予感がして戻ってきたら、結界は殴り壊されてるし、リフィリア達は怯えてるし……いつから幼女趣味になったんだ?俺はお前が何の好みに走ろうが仕事をこなしてくれればなにも言わない。だがな、俺の身内に被害が出るなら話は別だぜ? 」


ーー俺直々に引導を渡してやる。感謝しながら死にやがれ。




そして今。冒頭に至るわけだが。

自分達には、彼に聞きたいことがあるわけで。


「 ね、ねぇ、アリスはクレアの子供なの? 」


「 そうだよん 。 」


「 ちげぇよ 。 」


肯定と否定。

二人の間には明らかな温度差が誕生していく。


「 俺はこいつの子供じゃねーし、こいつは俺の保護者でもねー。自称だから気にするな。 」


「 うわぁもうお父さんショックだよ! 」


「 誰がお父さんだ。 」


「 えー。じゃあ……。 」


言葉を切ったクレア。彼の雰囲気が、おちゃらけたそれとは変わる。

視線だけで殺せそうなその殺気に、リフィリア達の体が固まる。


「 恋人にでもなれって?結構大胆だなぁ。ハニー? 」


「 気色悪いことを言うな。お望みならなってやるよ。お前が死んだらな! 」


瞬間。双方から放たれるのは自然災害よりも恐ろしい魔術。

いつの間にかリフィリア達の周りは強固な結界で守られていて。


「 お前が任務後も遊んでいる間、俺は一週間とプラス三日完徹だったんだ。しっかりストレス発散させてもらうぜ。 」


そして何故か、魔法界トップの実力を持つ二人の『 お遊び 』が始まってしまったのだった。


新しいキャラクターが登場しました!

クレアについては、「世界観と登場人物達の説明」に載っているので、良かったら見てみて下さい。

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