とりあえず臭いから風呂入れ
これ!このやり取りが描きたかったんですよ‼︎
「 到着っと。 」
女王の王宮から、ハンスが空を飛んで降り立ったそこは、森の中にぽつんと存在する小さな屋敷。
女王が自分のためにと人知れず作ってくれた家。
「 ……ん。 」
「 ……起きたか。 」
王宮に行く途中、安堵からか疲れからか、眠ってしまった三人の少女。紫の瞳の少女が起きると、後の二人も目を覚ました。
「 ここは…? 」
首をかしげる三人を扉を開けてすぐのところにあるリビングに降ろす。
「 あー。ここは俺ん家で、お前らの家だ。 」
「 どういうこと? 」
わけがわからないという彼女達に、だがハンスは爽やかな笑顔で。
「 その説明は後だ。とりあえず風呂入ってこい。ぶっちゃけてめーら臭いんだよ。 」
後半の言葉に三人が固まる。言葉を返したのは桃色の少女。
「 し、しょーがないでしょ⁉︎お風呂なんてまともに入れてくれなかったんだから‼︎ 」
「 だから入ってこいっつてんだろーが。 」
「 そういう問題じゃないでしょ!言葉を選びなさいよ言葉を‼︎ 」
「 臭いので風呂に入ってもらえますか? 」
「 そうじゃなーい‼︎ 」
「 ……お前歳の割には口が回るんだな。 」
「 関係ない褒め言葉どーも!あんなところに入れられて、まともに育つわけないでしょ! 」
「 それもそーか 」
「 そうよ!じゃぁ入ってくるから!場所どこ⁉︎ 」
「 部屋出てまっすぐの突き当たり。」
「 分かったわ。行くわよ。二人とも。 」
「 ま、待ってよ〜。 」
「 走ると危ないわ。歩いて行きましょう。 」
ぱたぱたと。三人の少女が部屋を出る。
足音が聞こえなくなって、ふっと肩の力を抜いた。
「 ったく。面白い奴ら。 」
自分の言葉に突っかかる桃色の少女も、おどおどと、だけど必死に状況を理解しようとする蒼の少女も、冷静に見えて、頓珍漢な言葉をかける紫の少女も。
それは、退屈だった日常を変えてくれる気がして。
女王が何を思って自分に彼女達を預けたかなんて知っていた。
それでも。
「 それでも、結果は変わらない。 」
自分はどうせ死ぬのだと。
その途中に何があったとしても、根本的なことは変わらない。
呟いて、ハンスは風呂を済ませた少女達の、帰りの途中で買い揃えた服を脱衣室に置き、
料理を振るうべく台所に立ったのだった。