表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/22

第21章 身勝手な宣戦布告

お久しぶりです。またちまちま書いていこうと思います。

 可愛いな、と。

 弁当を広げながら、エナはつい最近友達になった三人の女の子を見て思う。


 ツンっとして、だが懐いた者には途端に甘くなるリフィリアも。

 気弱で、しかし気配りが上手で優しいノアも。

 聡明で、飄々としてて、お茶目なルティルも。

 同性である自分さえそう思うのだ。今や大多数の男子が彼女達を狙っているのは仕方がないと言えるだろう。

 だがしかし、エナは心の中でその憐れな男子達に同情する。

 リフィリア達のそういう視線は、最初からたった一人に向けられている。それは火を見るよりも明らかで、そしてそれを、当の本人であるアリスは気づいていない。

 あれほどの愛を向けておいて、自分に向けられるこれほどの愛には気づいていないのだ。


(難儀よねぇ……)


 と、今はいないアリスと彼が作ってくれたらしい栄養の取れた鮮やかな色彩の弁当を食べる三人の恋路を見てため息を吐く。

 何より問題なのは、彼と話している時、三人の目に懸念の光が宿る事だ。

自分にその気はないのだが、まぁ、仕方のない事か。

 三人が知らないとはいえ、あの屋上での一件で密着し過ぎたことに、罪悪感がないわけではない。

 それに


(……それに、恋バナがしたい!)


 この三人の恋バナなんて、きっと楽しくて可愛いに決まっている。年相応に、エナはそういう話がしたかった。だから、エナはなんとなしを装って、リフィリア達に問いかける。


「ねぇ、リフィリア達はアリスくんの何処が好きなの?」


 げほ、ごほっと。


 その一言に、口に入った物は吐き出さなかったものの、器官に入ったらしい。咳き込むリフィリア達。

 涙目になりながら恨めしそうに見上げてくるのをにこにこと笑いかえす。


「あ、アリスが好きなんて一言も……」


「え、違った?」


「違っ……くは、ない……けど……」


もごもごと言葉を小さくするリフィリア。顔を真っ赤にする三人。


「入学式の時には仲が良かったよね?いつ頃会ったの?」


遠慮せず、さぁ! と訊せば、どもりながらもノアが話す。


「四歳の時、ちょっと色々あって、アリスと一緒に住むことになったの。それでーー」


「えー!? そ、それって同棲じゃん!!?」


 つい遮って、驚きの声を上げてしまう。だが許してほしい。

「ど、ど、同棲じゃない!! 」と叫ぶリフィリアの声は、へぇーと感嘆しているニナには聞こえていないようだ。


(そりゃあ過保護にもなるなぁ )


 四人の間で何があったのか、どうして一緒に暮らしているのかは知らないが、幼い頃からの付き合いならば、あの大きな愛情も不思議ではないのかもしれない。


「エナにはいないんですか?好きな人」


 一人でウンウンと頷いているエナに、熱くなった頰を手で冷ましながらルティルが問いかけた。

 その顔には詰問の色が濃く見える。それにキョトンと瞳をぱちくり。

 そうだ、まだ誤解を解いていなかった。


「いるよ? アリスくんじゃないけどね」


 誰誰!? と問いただす三人に、少し顔が熱くなる。なるほど、質問される側はこんな感じなのかとほくそ笑んだ。

 不快ではないが、ただただ恥ずかしい。

 思い浮かぶのは、無表情。温度のない声で、いつも背後に立つ他称護衛の幼馴染。


 私だけ知ってるなんてフェアじゃないか、と。

 エナは自分の好きな人を恥じらいながら打ち明けた。


◇◇◇


 いやなほど澄み渡る青空の下。もはや定位置となっている屋上に一人、ハンスは寝転がっていた。いつもならリフィリア達と食べるのだが、いつの間にやら仲良くなったらしいエナに追い出されてしまったのだ。

 彼女曰く「女子会」なるものをやるかららしい。なんだそれと聞いたハンスに恋話では?と返してきたのは購買で昼飯を買いに行ったクレアだ。


ーーリフィリア達にも、好きな人ができたのだろうか。


「……」


 よぎった疑問に顔を顰める。誰なんだ一体。どこの馬の骨だ。俺の及第点は高いぞ。

 物騒な考えは止まらない。頭の隅でこれが親の気持ちか……とふける。親バカめと突っ込む人間がいないのだから、歯止めが効かないのも仕方のないことだった。


「やっっと見つけましたわ!!」


「ーーあ?」


 だから、突然話しかけられた相手に対して、絶対零度の視線と声色で対応したことも、仕方のないことなのだ。


「っ!? ま、まだ何も言っていなくてよ! そんな邪険に扱わなくてもいいんじゃなくて!?」


「あー。お前か」


 なんのようか知らないが余程自分を探したのか、大きく息をしてこちらに向かってくるリリーシャ・エチコート。

 絶対零度の次は興味も関心もない瞳を向けられてリリーシャはうぐっと狼狽たが、それを払うようにびしっとハンスに人差し指を突きつける。


「どうして本気を出さないんですの!? 私を馬鹿にしていて!?」


「……いや、別に、そうじゃないが、お前としては首席が維持できていいんじゃないか?」


 その橙の瞳に映えるのは怒り。それを冷めた目で見返して応える。あの一件以来関わることは無かったが、そういえば授業に退屈して寝ていると決まって睨んでくるのはこの瞳だったと思い出す。首席を保持したいのなら余計な敵など増やさなければ良いのに。


 言外に今後も関わる気がないと伝えれば、わなわなと肩を怒らせる。リリーシャは屈辱だといわんばかりに眉を釣り上げた。


「ぜっったいに本気のあなたに勝って、私の実力を証明して見せますわ!」


 リリーシャは噛みつくようにそう吠えると、ハンスの返答も待たずにくるっと踵を返して帰っていった。


(面倒なのに目をつけられたな……)


 ため息をつく。さらに輪をかけて面倒臭いのは、彼女が護衛対象のうちの一人だということだ。


 ーーリリーシャ・エチコート

 あんな高飛車で傲慢な性格であるが、出は貴族の中でも下位の出身だ。規模も少なくせいぜい村一つをまとめるくらいの権力しかないだろう。通常なら最高暗部の護衛など必要無いのだが、それが例外なのは彼女の髪に理由がある。

 力の大きさで次点に置かれる真紅は、黒ほどまでとはいかなくても少なく、貴重である。加えてここククロックは魔法大帝国として名を挙げている。十二分な未来の戦力を守ろうとするのは当然の結果と言えた。


 ごろんと再度寝転がる。微睡んでいるように見えて、ハンスは護衛対象の居場所を確認していた。自分の認識範囲を広げ、異常がないか確認する。そうしてこちらに向かってくる気配、購買で買ったものを抱えるクレアに、

「おそい」とぶっきらぼうに言い放ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 良かったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ