プロローグ
これなら、と思い僕ははやる気持ちを抑え、走って病院へ向かっていた。
ここならばもしかするとこの不治の病が治せるかもしれない。
万が一治せなかったとしても、こんなに疑り深く出不精な僕が足を使って行動に移した、と言うプロセスが重要になってくる訳で。
いや、ダメだ。
やっぱり治らなかったら、そのプロセス自体無駄なものに成り下がるだろう。
もうそんなことなら、消費者金融のプロ○スの方が、生活を成り立たせると言う観点からは役に立つ存在かもしれない。
現状最速のスピードで交互に動かし続けている足を、無人契約機へと向けた方がこれからの生活には余程いいプロセスだとも思う。
待て待て、それはダメだ。
僅だが、金には困っていないし、ご利用を計画的にできる自信が米粒ほどしかない。
この、意味のわからない病気のせいで廃人と言う勲章を受賞する一歩手前だというのに、受賞式を早めてくださいと催促の電話を掛けるようなものだ。
と、改めて考えてみると、医療費はどうしたらいいのだろう、と言う考えが僕を暗い闇に包み込む。
現状最速ラップを叩き出しているこの状況で暗い闇に包み込まれるのだから相当危険なことである。
前例のない病気など、一体どれぐらい出せば治療してもらえるのだろうか。
皆目、見当もつかない。
病気が治る確約もないままに、検査と言う名目の福沢諭吉量産機で、どれほどの費用が出ていくのかと言う恐怖が、ボディブローのようにじわじわと効いてくる。
しかし、ああ、やっぱり無人契約機に行くべきなのかな、と、廃人の思考をフルに活用したところで、僕はバイトもしない優良学生なのでたとえ有人契約機だとしても契約はできないのだ。
そんなことを考えているうちに、僕は目的地の前に到着していた。
『MP回復受け付けます』と書かれた看板のある病院の前に。