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Break Childs  作者: そうしょう
2 種族
9/61

9.探索、襲撃

夜にツイルバードが徘徊するため、巣は手薄になるから、というのはロズの理由の一つでもあったが、プレネスは昼よりも夜の方が体調が良いらしい。

念のため、何か手がかりが掴めるかと思いコアのことを二人に聞いてみた。しかし、二人はコアについても、コアの伝承についても知っていたがこの付近にコアが紛れているとは考えられないと言った。

「そもそも、コアっていうのはマナの塊なんでしょう。…こんな場所に強いマナの気配なんて感じないもの」

ただ、とプレネスは続けた。

「もし、そのコアがある可能性があるならやっぱりトリエ鉱山でしょうね」

「なるほど…………ところで」

ぜぇ、とレイスが息を吐いて手近な木に手をついた。

「何でこんなに遠いんだ……」

「ししょうー、頑張ってください、ほら、もう少しです!」

年下の少女に言われるとは、何とも情けない。だがレイスは自分が体力もそこそこのものでしかないというのは自覚しているし、何というか、子供は元気だなぁ、とまあそんな感じだ。

鉱山に辿り着くと、やはりうようよと魔物は居たが迅速果敢にレピートとロズが片付けていく。その間、レイスはプレネスの傍についていたがプレネスが深々とため息をつくのに気付く。

じ、と彼女の紅の瞳がレイスを映す。

「あなた、…かなりの魔力所持者ね」

「………まぁ、それなりには」

「そんなに魔力を持っているのなら、どうして援護しないの?」

戦闘にも参加せず。

暗に詰められた言葉に、ふ、とレイスは息を吐く。

「魔力を使うつもりはないからな」

わずかに伏せた瞳の奥に、プレネスは赤く光る炎を見た気がした。


そうして四人は奥までたどり着く。鉱山の最深部は、意外にも天井が貫かれており夜空が見えた。

「…しょくぶつ、って………」

レピートが呆然と呟く。

―――一面、石と枯れ葉が広がっていた。

「マナが…絞りつくされている………」

確かに、最近はマナの変動がおかしいと思っていたけど、とプレネスは顔を歪める。それもやはり、コアの影響だろうかとレピートは唇を噛みしめた。

ロズが口を開く。

「探そう」

毅然とした瞳で、周囲を見渡した。泥水の中、怯む気配もなく踏み込んでいく。

「絶対、どこかにあるはずだ」

「ロズ…」

レイスがやれやれと体を揺らし、レピートは走り回る。枯れていない、多少なりとも生きている、植物があれば。

――プレネスは貧血を起こしかけている頭を振って、目を閉じる。

迷惑をかけている自覚があるからこそ、もういい、などと言えない。

――ここまでしてもらって、そんなこと口になんて出せない。

「大丈夫、見つけるよ」

ロズが笑って言った。


影が、差した。


―――ばさりと、羽の……いや、羽などと生易しいものではない。

翼が。

――翻る、音。


ぞっとするほどの寒気を感じ、レピートは空を仰いだ。


――――その、大仰な、ドラゴン、とも呼べるような姿は。


「………ツイルバード」

ぽそりと呟かれた言葉に、呼応したわけではないだろうが―――咆哮をあげる、ツイルバードの姿がそこにはあった。

ちっ、とレイスは舌打ちをこぼす。

「≪巣≫に異変を感じて早々に帰ってきやがったか…」

「ロズ、逃げよう…!」

プレネスは振り絞って声を出したが、体が否応なしに震えていて立てそうになかった。

――それほど、圧倒的な、存在。

レピートも震える膝を叱咤して、軽く笑みを浮かべてみる。引きつった。

「………やばい、ですししょー」

だって。

こんな、こんな―――おおきな、存在。

勝てるわけ、ない。

ロズは枯れた植物を握りしめ、くそ、と苛立った声を上げた。ダメなのか、ここまできて、ここまできて―――諦める、のか。

「ロズ………」

レピートは短剣に手を伸ばし、それから―――息を呑んだ。

光っている。

愛用の、短剣ではない。

―――アマラントだ。

「………師匠、これって」

「アマラントがマナに反応してるのか……?レピート、」

「はい!」

レピートは踵を返して走り出した。

植物にも、マナは宿る。――だが、ここら一帯は枯れ果てて、マナの気配は感じない。だというのに、アマラントが――マナに反応して輝きを帯びるアマラントが、察したということは。

ぱしゃ、と足元の泥が跳ねた。

「―――っ!」

瞬間、背中に強烈な殺気を感じ、思わずレピートはつんのめる。――が、かろうじて立て直し、ちらりと後方を見た。

―――ツイルバードが、こちらを睨んでいた。


「………レピート、走って」


と、

ロズが、レイピアを抜いた。

目を見開くレピートに、ロズは笑う。どれほど探し回ったのか、頬を黒く汚して。

「時間稼ぎぐらい、僕にもできるよ―――ほら、」

巨大すぎる嘴を前に、ロズは――叫んだ。

叫ぶより早く、レピートは駆け出す。

「―――こい」

後ろから聞える、鋭い声を背にして。


ぱしゃ、ぱしゃ。

泥が足にへばりつくのも構わず、奥へと走る。淡い輝きはまだ失っていない。

ロズの、想いと――プレネスの、想い。

どちらもそれは、かけがえのない、美しい想いだ。

光が、どうしてこのタイミングで走ったのか―――レピートにはわからない。

ただ、と思う。

自分も――彼らを、彼等の想いを無駄にしたくないというこの想いは、紛れもなく本物だ。


「あった…?」

これ、が。

光を帯びたー――それは、枯れておらず、多少やつれてはいるが――。

グローブで優しく摘み取る。棘もないので、感触は優しかった。

――ふと、耳に弱弱しい生き物の鳴き声が入ってきた。

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