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Break Childs  作者: そうしょう
9 終わりと、目覚め
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59 異変


階段を駆け上がっている内に、レイスもまた、異変に気が付いた。


「レピート、足、止めんなよ」

「…っはい」


体を震わせ、魔物へ変わる――残虐ともいえるその光景に、レピートは息を詰まらせた。何が起きているのか、何が、思考が悲鳴をあげそうになる。

それでも、今、レピートがしなくてはならないことは。


「セトを、止めないと…!」


飛び込むようにして、その部屋へ入った。


……

………


「……なによ、これ」

ツイッセが――呆然、としたように呟いた。

プレネスとシプロも、ただ、息を呑んで情景を見詰める。上階から降りてきた騎士が、魔物へ変わり、こちらに刃を向けている。

「……ツイッセ!いったい、どういうことだこれは!」

「あ――アタシだって、わからない!どうして……魔物に?!」

「戦っている……場合じゃなさそうね」

プレネスは階段を駆け上がった。シプロもそれに続く。後ろを省みると、ツイッセは唇を噛みしめたまま、動かなかった。


階段を昇った先で、どさり、と音がして首が飛ぶ。思わずプレネスが足を止めた先で、ロズが苦笑していた。

「ごめん」

「びっくりしたわよ……」

ティとロズ、四人は上へ続く階段を見上げた。

先の昇って行った、二人。

今頃セトの元へ辿り着いているだろうか。

「……行こう」

ティの言葉に、一行は頷いた。


……

………


部屋に入って、まず、目についたのは――座する五つのコアだった。

中央に赤いコア、それらを囲むように、四つのコアがある。

そして、セトは、コアでつくられた陣形の最奥で佇んでいた。


「……来たのね、レピート」


傍で控えるネオが、厳しい目つきで二人を見詰めている。ウルアが退屈そうに眼を細めていた。リースの姿はないが、恐らく、近くには居るのだろう。そして、セトの傍には大臣が控えていた。

ネオが持つ盾――ピクシーの長老の話によれば、宝具――は発光し、輝いていた。


セトを真っ直ぐにとらえたレピートが、息を吸い込む。

「コアの力で、世界を改変するなんて、やめましょう」

「準備は整いました。陣を書き終え、もう、誰にも止めることはできません。このまま≪世界神≫を卸します」


世界神。

この世を統べる、守護神ともいえる、神様。


その力で、この世界を新しいものとする。

地殻変動による被害は、尋常ではない筈だ。だが、セトが見詰めるのは、その先の国民の未来。


レピートは強く言い放った。


「私が、絶対、絶対にとめます!!!」


ふ、とセトの瞳に影が落ちる。

「……どうして、分かって貰えないのでしょう」


その、言葉を合図にしたかのように。

コアを中心に、光が瞬いた――強く、五色の色が、光を放ち。


「………え?」

セトと、レピートの声が、重なった。

赤い光は、レイスからも滲み出ていた。

「…な……んだ、これは……」

レイスは目を見開いて、自らを見詰める。中心、赤色のコアもまた、同じ光を発していた。

近づくな、と、レピートを目で制し、眉を寄せる。

「共鳴……?俺が、コアと共鳴している……?なんで」


なんで。


――大臣が、嗤った。


その目を見た瞬間、笑みを、見た瞬間、レイスはゾクリ、と背筋が冷えて息を呑む。脳が警鐘を鳴らしている。

何だ。

まずい。


・・・・

良くない。


「――おかしい、これ、陣が組み代わっている…!!」

セトが叫んだ。

陣――いや、レピートにはちっともわからない、が。セトが咄嗟に陣に手を伸ばしたそのとき、大臣が動いた。間一髪でウルアが大鎌を振るい、大臣を切り裂く。

その手には、小さい刀が握られていた。

「…なにしてんのぉ」

「陣を書き換えたのは、お前か!」

セトが怒鳴ると、大臣は声にだして、嗤った。


哄笑が、響き渡る。


「――待っていた!ここに、マナが満ちる、この瞬間を!!!そして……鎖となる者が現れる、このタイミングを!!ああ、400年、400年も掛かってしまった!!!!」


「………まて………」


レイスは、小さく、呟く。

ピシリ、と、音を立てて――中心の赤いコアに罅が入った。ソレは徐々に広がっていく。そして、光もまた、更に強くなっていく。

マナの気配が濃密なものへ変わっていく。


「ようやく………ようやく、あのお方を、この世に目覚めさせることができる……!!!」


一人の少女が、眠っていた。

脳裏で瞬いた光景は一瞬だ。

レイスは咄嗟に、叫んだ。


「―――ふざけるな!」


引き絞ったように飛び出した声が掠れる。大臣が――否、異形のものが、レイスを向く。

その目を、知っている。

人ではない、魔物の目。

「今、ここに、目覚めの時を」


コアが、音を立ててはじけ飛んだ。瞬間、パキリ、と、耳障りな音を立てて、レイスを包んでいた光もまた、罅割れる。足元がグラついた。

そして――


ソレは、起きた。


生じた歪みが、徐々に、広くなっていく。薄暗い底のようなものが視界に映った。

どす黒いナニカが零れ落ちては、積もっていく――ヒタリ、と。

足をつける、それは、最初こそ白い肌だったものの、装飾がつき、足から、胴体、腕、そして――頭が。

歪みから現れた、ソレは、ゆっくりと瞳を開いた。


ガラス玉のような瞳が、瞬きをする。


「……………、…………ああ、よく、眠った」


そうして、ソレは、呟いた。


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