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Break Childs  作者: そうしょう
9 終わりと、目覚め
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58 再会


ユーリが転移術を詠唱すると、足元に陣が浮かんだ。レピートがぎゅぅとレイスの服の裾を掴む。

「今から、貴方達をお城へ送るわ。……幸運を」

ユーリはそうして、レピートを見る。

どこか愛おしそうな表情で、微笑んだ。

「……さっきは、嘘をついちゃった。……でも、私、その子に酷いことをしてしまったの、だからね。きっと、その子は私のことを恨んでいる。だから、忘れて頂戴」

光が、強くなる。

どうして、ユーリがレピートのそれを伝えたのか。

ただ、レピートは強く言い放った。

「そんなこと、ないです!!!」


恨んでいる、とか。

分からない。人の感情程、分からないものはない。

でも、ロズは誰より優しいことぐらいは、分かっている。


そんな優しい彼が、実の母親を恨むなんて、できるわけがない。


「きっと…きっと、ユーリさんの、その子供だって!ガーディアンとして今を生きている子供だって……ユーリさんのこと、恨むはずがない!だって、貴方は母親です、お母さんを……お母さんを嫌う子供が、いるわけないじゃないですか!!!」

レイスが目を見開いた。

ただ、何か紡ごうとして、結局口を閉じる。代わりに彼女の頭に手を置いて、少女の名前を小さな声で呼んだ。

「そう、そうかしら……ええ、そうだと、嬉しいわ……」

ユーリは、泣いていた。


光が一面を包んだ時、レイスが呟いた。

「お前は、……≪お前≫は、そうなんだな」

その意味は、わからなかった。


……

………


ツイッセは小首を傾げたまま――まぁ、いいか、と口を開いた。

「とりあえず、吸血鬼はココ、立ち入り禁止なのよねぇ」

「参ったわね、貴方、いつもいつもタイミングが悪い」

そうして、向かい合った、そのとき。


光が、部屋を覆った。


最初はごく小さなものだ。だが、徐々に強まったそれが、部屋を覆い尽くしていく。思わず身を庇うように両腕をクロスさせて、隙間から光の中を見詰めた。

「なに……!」

「う、あああ……!なんですこれ、きもちわる……」

声。

年幼い少女の声に、思わずロズは「レピート!?」と声を荒げた。

光が細まった、後、そこにはレイス、レピート、シプロの姿があった。

「転移術ね…」

「うう、なんで、今までこんなこと…」

「マナが…この空間全体を覆ってるから、か。しっかりしろ、状況は割と最悪だぞ」

「ふぇ」

レイスがレピートの肩を叩いて、ようやく、レピートもロズ達に気付き、目を丸くした。ティは安堵のあまり、息を吐く。

無事だった。

そして、また、集えた。

「ツイッセ……!」

「お仲間?どちらにせよ相手をするだけね!さぁきなさい!」

ツイッセが召喚魔法で、魔物を呼び寄せた。ウルフが嘶く。シプロが剣を抜いた。

「ここは私が相手をする!レピート、レイス、先に行け!」

「……あたしも残るわ。こいつの狙いはどうせあたしだしね」

プレネスが続けた言葉に、ロズは口を開こうとした。――そのとき、地震のように、足元が揺れた。


何かが起きようとしている。


ロズは、言いよどみ、それから、ぐ、と拳を握りしめる。迷ったのは一瞬だけだ。くるり、とレピートを向くと、叫んだ。

「レピート!」

「……っ行きます!待ってますから!」

脱兎のごとく、レピートは駆け出した。

ここは地下らしい。王の間は一階だ。が、そこでティが声を張った。

「マナの感覚……もっと、上、最上階ダ……よ!」

ティが紐を、鞭のように撓らせて、こちらに気付いて向かってきた兵士を打ち倒した。ロズがレピートより前に跳びだす。

「――う、ぁ!?」

「ははっ、騎士様は…動きが単調だ」

ロズの動きに翻弄された騎士が、ぐらりとバランスを崩した。その横をレピートとレイスが駆け抜ける。階段を昇り、上へあがっていく二人を見送ってから、ロズはレイピアを構える。

ティが眉を寄せた。

「……なんダ?何か……様子が、おかしイ……?」

騎士が、ふいに。

剣を取り落して、体を震わせた。

苦悶の声が聞こえる。

そうして――二人の目の前で、騎士は、魔物へ変わった。音と共に腕が異質に変色し、体が組み変わる。


「……マナ中毒か……!」

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