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Break Childs  作者: そうしょう
9 終わりと、目覚め
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57 ガーディアンを産む者

訪れた場所で出会った女性に目を見開いた。

「ロ……むぐぅ!」

「こら」

少しばかり焦ったように、レイスはレピートの口を塞いだ。初めて会ったわけではない。そして、風変わりな格好をしたレピート達を、向こうも覚えてくれていたようだった。穏やかな緑の瞳が細められる。

「あらあら、貴方達」

どうぞ、と、扉の奥に案内される。

ロズの母親――ピクシーの、現時点での実力者だという女性、名をユーリと言った。

緊張した面持ちのレピートの肩を、シプロが軽く叩く。

「お話は聞いているわ。……転移術、ね…場所は王都……」

「はい。……その、やっぱり、一ついいでしょう、か」

「レピート」

咎めるようなレイスの一声に、少しだけ肩を竦めて、わかってます、と返す。興味本位で踏み込んではいけないことがある。

だから、気になっていた言葉を尋ねた。

「…≪産み手≫、って、なんですか…?」


前回、この里を訪れた時、住民は彼女を指さして≪産み手≫と言った。その意味を、未だ分かりかねている。

「ガーディアンを産む者のことを、そういうのよ」

ユーリは、レピートの質問に答える。

「本来、ガーディアンと成る者には、多大なマナが必要となるわ。正確には、コアのマナを受けても平常でいられるような、マナ操作の持ち主。ピクシーにとっても、マナの取りすぎは毒になる。コアに耐えきれるような、そんな能力を持ったヒトは、一般的には≪歌詠詞≫の力を持つ者でなければならないわ。その、≪歌詠詞≫の素質は、代々受け継がれるものなの」

「……ユーリさんは、歌詠詞の素質があるのですか?」

「ええ、そうよ。歌詠詞を引き継がせるために――子供を産んだ。そして、その子をガーディアンの為に、ピクシーの里のために、捧げたの」


それは、ティの話だ。

レピートは思う。

では、


ロズは?


(ユーリさんは、ロズの母親ではないんでしょうか…いえ、そんなこと……だって、こんなにも似ている……)

「子供は……その、ガーディアンとした、子供だけなのですか」

ぽそり、とレピートが呟くと、少しだけ、寂しそうな顔でユーリは微笑んだ。

「そうね。……その子、だけなの」


……

………


見張りが周ってこない内に、と、脱出を果たす。プレネスはかつての騎士団長、エンを向く。

「ここから、出れたのに。どうして……出ないの?」

「ヒトは誰しも、罪を抱えている。その罪を呑み込む方法は様々だ。……抱えて、生きるのは重い。私がここに居るのは、居なくてはならないからだよ」

そう言って、エンは穏やかに笑っていた。


エンの言った通り、上階には武器等を発見することができた。愛用の武器が戻ってきて、ロズとティがほっとしたように息を吐く。

プレネスも、そっと術式を展開してみたが、問題はないようだ。

「どうする?脱出はできたけど、このまま…コアを取りかえしに行こうか」

「目先の目的はそこね。問題は……コアが、どこにあるかよねぇ」

三人が、そう、話した時。


「あ~あ、もう、こんなときにお城の巡回なんて、やんなっちゃうわ」


声がした。

というか。

目の前に、立っていた。


あら、と、少女は目を見開く。あっちゃぁ、と、ロズは頭を抱えた。

タイミングが、悪い。

誰かが来る可能性を忘れていたわけではなかった。それでも、だ。兵士程度であれば、問題なく騙せる筈だった。


――≪グルート≫の一人、ツイッセが来るとは、誰も想定していなかったのだ。


「……あらあら、どうして、ここにいるの?」

パチリ、と、ツイッセは目を丸くして、呟いた。


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