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Break Childs  作者: そうしょう
8 道行く仲間と最後のコア
50/61

50 VSガーディアン

確かに、地下は遺跡となっていた。壁には古代文字だろうか――レピートからしてみれば、ただの模様にしかみえない文字の羅列が並んでいる。道は一本で、歩いていくうちにティに追いついた。

「これは……古代文字……ふむふむ……全く読めないけれド!いやぁなんて書いてあるんだろウ?!」

「…テンションたか……しかも読めないのかよ…」

「ティ殿は愉快な方だ」

ふふ、と笑うシプロにロズは若干うんざりしたような目を向けた。シプロの言葉に悪気はないのだろうが、如何せん、天然気が強い。レピートは文字の一句をなぞった。

「師匠読めます?」

「えー………」

面倒くさそうな様子で軽く屈んで、レピートの文字を見詰める。

しばし何事か口の中でもごついたあと、ぽつりと言った。

「…≪復讐≫」

「うわっ早速物騒ですね」

「≪あなたをゆるさない≫」

「え」

「≪地獄におちなさい≫」

「なんなんですここ?!」

思わずレピートが叫ぶと、レイスが軽く笑みを浮かべた。それで、気付く。

からかっているのだ。

「師匠!!!」

「おっと、ティどっか行くぞ」

「ええ…?!あ、待ってください、ティ!!」

スタスタ、とティが進んでしまうのを見て、慌ててレピートは背中を追う。服をはたいて立ち上がったレイスを見、プレネスは肩を竦めた。

「あんまりからかってあげるのやめなさいよ…」

「≪あなたを信じている、いつまでも大輪で在れ≫」

レイスは文字をなぞった。

古代語は散りばめられているし、これが目についたのはたまたまだろう。それでも、レピートが図らずとも差した文字は美しい。

行くわよ、とプレネスに声を掛けられたレイスは、遠ざかりつつある背中に足を向けた。


ようやくティが勢いを止めたのは、最深部だった。

やはり古代文字が散りばめられている。ロズが眉を寄せて汗を拭う。

「凄い、密度が高いマナを感じるよ……」

レピートにはさっぱり分からないが、それぞれ感じているようで、警戒心が瞳に映っている。感じ取れないレピートにとって、目の前の台座に掲げられているコアに目がいった。

「あれが、桃色……コアですね」

「割と安易に置かれているネ……どれ……」

呟きながら、ティが足を一歩踏み出した。


そのときだった。


宙に陣が浮かぶ。魔法陣、と思う間もなく、光がティに降り注いだ。げ、と顔を顰めるティが防御姿勢を取る前に、プレネスの結界術が発動する。

辛うじて間に合ったソレは光を振り払うが、陣は消えず、むしろ歪みを発しながら――やがて形を作っていく。最初に生まれたのは腕だった。二本、否、四本の腕が浮かび、それから頭と、胴体、足―――生み出された、存在。

「まさか、ガーディアンか……!?」

「っぽい、な……くるぞ」

シプロが剣を振り払う。腕には四つの刀が握られていた。一気に間合いを詰めると、振り下ろされた二対の刀を弾き返す。大剣、とも呼べる太刀を払う――残りの二対を、それぞれロズとティが対応する。

「動きは単調だけど、ものすっごい重い……!シプロ一人で」

「問題ない!それより、ガーディアンはどうすればいいのだ?!古代の産物だろう、壊してとめるというのも…!」

ロズに叫び返すシプロの言葉を聞いて、ティがくわりと目を見開く。

それから慌てたように術の詠唱を止めて後ろへ跳んだ。

「だ、ダメダメ!!産物を壊すなんテ、絶対ダメだ!!!」

「えええ…っじゃ、じゃあどうすれば…?!」

続けようとしたレピートも、悲鳴のようなティの言葉に躊躇う。その躊躇いを逃さずに、刃が走った。間一髪のところでプレネスの炎系の術が爆発する。

「動きを封じれば……でも、バインド系の術は効かなそう、なんだけど?!」

炎が薄れ、消えていく――術を吸収する魔物の類に似ている。術の影響をほとんど受けないのだろう。そこで、ティがレピートを見た。

「ラックの展開術で、ぼくとレピートを繋げよウ。レピート、うまく動いてくれル?」

「ふぇ?うご……はい!動くのは、得意です!!」

後半部分を聞き取りながら、レピートは自慢げに頷いた。その様子をからりと笑ってから、ティはラックを見る。

「いくみよ!」

ラックの展開術が発動した。グン、と上昇するような高ぶりに、むせ返りそうな程のマナの圧力が加わる感触。ふ、とレピートは自身の身が酷く軽く――羽を持っているかのように――軽く感じた。


跳べそうだ。


「――天昇水!」

短剣で一対の刀を切り落とす。威力は先ほどと桁違いのもの、刀身が折れ、少し離れた場所に突き刺さった。この調子で、と見上げ、ガーディアンを睨み付ける。

一方のティは紐を振りほどき、ゆっくりと声を響かせた。

「―――……、………――」

澄み渡る歌が遺跡の中、響き渡る。聞いていて心地がよくなるような歌だった。レイスがやや小首を傾げながら呟く。

「…前に聞いた歌とは違う……二番、か?」

「――歌が、聞こえるんだ」

ぷつり、と息を吐きながら、ティがぼやく。どこか遠いところを見て、静かに。

「――眠りへ誘え、旋律の日」


ガーディアンの動きが、止まった。


「――刀を折れ!」

シプロが叫びと同時に、一本を手折る。音を立てて割れたそれを見ながら、引きつった表情でロズはレイピアを構えた。

「いやいや…そんな簡単に折れるもんなの………」

逆手に抱いた独特な構えで、ロズは風のマナを埋め――解き放つ。踊るかのように――されど、一瞬で。

「――(ナガレ)、二つ星」

「最後ぉ!!」

レピートが短剣を突きつけたと同時に、刀が全て手折られた。その隙にプレネスはコアに手を伸ばす。白い指先がコアを掬い取るようにして奪取すると、すぐさま後方へ跳んだ。

ぐぐ、と、ガーディアンが動き始める。

「急いデ!歌の効果が途切れル…!」

「ああもう、マナが多いわよこれ!!重い……っ!!」

悪態をつくプレネスに、レイスは皆に倣い駆け出しながら手を差しだした。

寄越せ、という意味だろう。

プレネスは眉を寄せ、――息を吐いて、コアを渡す。

「本当に、何ともないわけ?」

「あったら、言っている」

轟音を起こす中、一行は地上を目指して走り出した。

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