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Break Childs  作者: そうしょう
7 相容れぬ二つの理想
42/61

42 救け

突然飛び出してきた五人の姿に驚いたように騎士がたじろぐのを、理解が早く武器を構えた者のみティが打ち払い、駆け抜けていく。抱えながら走るのは苦しいかと、ロズが迷っていると、レピートは「おろしてください」と声をあげた。一瞬だけ考え込み、ロズはレピートを下した。

「城を出て…街まで行けば向こうも手は出せないでしょ…!」

少なくとも、彼らは街人を傷つけようとは思っていない筈だ。

プレネスの言葉に同意しながら走り抜け―――待ってください、と声をあげたのはレピートだった。

「わ、…私、まだ、セトと!!」

「レピート……今は逃げるのが先だヨ」

ロズにおろして貰って、レピートはぐっと拳を握りしめている。

レイスは髪の毛を掻きながら、何も言わなかった。

「…急ごう、すぐに追ってくる」

「―――なぁにこの騒ぎ?」

前から聞こえてきた声に、息を呑む。

聞き覚えがある声は不愉快そうにこちらを睨み付けて、そこに立っていた。

「……ツイッセ」

「ごきげんよう、憎き吸血鬼め。私が席を外している間に―――随分と色々やってくれちゃっているみたいじゃない?」

≪グルート≫四核の内、最後の一人―――ツイッセが鞭を掌に乗せた。

戦うしかない。

覚悟を決めて、ロズがプレネスを守るように立ってレイピアを引き抜く。レピートはレイスの服を掴んだ。

「私………師匠っ、私!!」

「レピート……」

縋りつくような小さな手は揺れ動いていた。レイスは息を吐いて、彼女を下げさせる。

その様子に、プレネスが場を離れたからだろう――術式を展開させながら、レイスに言った。

「巻き込まれないようにしなさいね」

「…分かってる」

「―――とりあえず、吸血鬼から―――」

ツイッセが宣誓しながら、鞭を振り上げようとした。


「やらせないさ」


ソレは、まるで風のように鋭く、なおかつ素早く、ツイッセの背後を取ると同時に峰に当たる部分を鞘で打ち払った。ツイッセが愕然としたように目を見開き、体をくの字に曲げさせる。

しかし、彼女の意地があったのだろう―――魔術を解き放ち、氷の礫が吹き荒れた。翻弄する間にツイッセは腹を抑えながら距離を取る。

「~~~っのぉ…!!」

「すまないが―――少し眠っていてくれ」

声が言い終わるより早く、一閃が抜き放たれ、ツイッセに叩きつけられた。圧倒的なまでの速さと重みに、ツイッセは壁に体を打ち付け、そのまま床に蹲る。

現れた人物は一同を―――レイスとレピートを見て、叫んだ。

「こちらに!避難用の下水道がある。外に繋がっているんだ―――ウルア達に追われる前に!」

「…シプロ」

金髪の騎士、シプロは一刀の刃を収めながら、レイス達に道を示した。


……

………


拘束術を解き、トントンと肩に鎌を乗せたウルアは自らの王を見上げた。

「…どーして止めたんですかぁ」

不満げに口答えをするウルアに、やや眉を寄せてセトは言い放つ。

「殺してどうするのです。確保をせよ―――との命でしょう」

「あー…」

納得した、そう言い捨てて、逃した獲物を追う為に歩きはじめる。優雅に礼をしながら、ネオもまた身を翻そうとした。

「ネオ」

「…はっ」

セトは玉座に腰を下して、重鎮の名を呼ぶ。

「コアの捜索を、急いで。…誰にも譲れないわ」

「…かしこまりました。ブローカーの件は」

「リースとツイッセに頼みます。だから―――前線に出なさい、私の≪盾≫」


鋭利で冷たさを伴った少女の声が、ただ空気を凍てつかせるように響き渡った。

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