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Break Childs  作者: そうしょう
7 相容れぬ二つの理想
41/61

41 衝突

「ワタクシが―――私が、間違っている?」

セトが反復する言葉に、レピートは力強く頷いた。

王座の間で、二人の年幼い少女が向かい合う。

「貴方の方法では、悲しむ人も、苦しむ人もたくさん出ます。…ひとりぼっちになってしまうひとだって、きっといっぱいでます」

一人はとても、寂しいことだ。誰も肯定してくれない、否定もしてくれない。一人で生きていく世界は、地獄のような日々になるだろう。

「コアの力は怖いです。…ええっと、難しい事、わかんないですけどっ!でも、コアを使うことで苦しむ人の多さがどれぐらいなのか!!それぐらいなら、私にも想像できます!!」

「全を救うには個を切り払う必要もある。…コアの力を利用することで世界を守る。私達の考えは―――決して間違っていないと思うけれど」

「全、っていうのは、世界のことですよね?個っていうのは、私たちのことですよね?私たちを切り払って、そんな世界を≪世界≫なんて呼んでいいんですか…ッ私は思いません……私は、私の大事な人を失いたくないです!」


個の為か。

全の為か。


二人の言葉は―――間違っていない、と、ティは思った。

セト達が行なえば、世界全体は救われても、人々は地殻変動に耐え切れずに何万何億というヒトが死ぬ。

追い詰められた世界には、選択肢がそう残されていないのだ。

かつての大戦により―――世界は、もはや戻ることはできない。


(…これが、レピートの答えなんだね)

世界を敵に回しているといってもいいのだろう。それでも、レピートは、無自覚なのか――自覚があるのか。

だがその答えが、ティには随分と心地よく感じる。


レピートの答えに、賛同できる。


「だから…そんなことの為にっコアを使うのであると言うのなら!!私たちが……コアを封印します!!!」

レピートの答えには、行く末も考えられていない、今を守りたいと言う想いだけの答えだ。

意見と意見が衝突する。

セトが瞳を伏せて、小さく息を吐いた。

ややあって、意を決したように口を開く。

「こればかりは、譲るわけにはいかないのです。―――私は世界を守るために、民の、未来を守るために。国家反逆者として、……貴方方を拘束させていただきます」

セトは立ち上がる。

≪グルート≫が各々身構えたのを見て、わぁ、とロズは頭を抱えそうになった。

「やっぱこーなるか…」

「逃げるぞ、レピート!」

レイスの声に、レピートはびくりと肩を震わせる。こちらを窺うように向ける瞳が滲み揺れていた。

どうしても、受け入れて貰えない事。聞き届けて貰えない事、覆すことができないこと――――


無垢な少女は、知ってしまった。


「ば…」

「―――レイス!!」


光の弓矢が降り注いできた瞬間、ティがレイスの体を押し倒す。すぐに二人とも身を起こしながら、レピートに目を向ければロズが抱え込むようにしてレピートを背負いながら、レイピアを抜いていた。

プレネスの足元に術式が広がるが、瞬間弾かれたように消え去る。舌打ちをして、プレネスはレイス達の元まで下がりながら睨み付けた。

「術が発動しない!何よあれ、――あの札のせい!?」

白髪の青年の―――リースの周囲に浮かぶ札が術を阻害しているのか。

再度、光の弓矢を放とうと―――これは術の一式なのか、無数に広がる光の弓矢が浮かんでいる―――ネオが冷たくこちらを見詰めている。

「ちょっとやばいね!」

ロズがレピートを抱えたまま、ウルアの繰り出す斬撃を受け流し―――真っ向から立ち向かうことは無理と分かっているのだろう、受け流すことに専念しているようだ。その状態のまま、こちらに下がりつつ叫んだ。

「…逃げれそう?」

ティが呟き――そのまま、誰にも聞こえないぐらいのか細い声で歌いだした。歌詠詞の術式が仄かに展開されていく。レイスは背後の扉を見た。開いた扉―――隙を突ければ、あるいは。

そのとき、ロズがレピートを突き放した。防ぎきれないと判断し、レピートを庇う為だろうが――ロズの腕を切り裂く大鎌に赤色が宿る。斬撃はそのまま、レピートの首筋を狙いに掛かった。

丸い瞳が斬撃を捉える。ロズが歯を食いしばりながら動けぬ少女に手を伸ばすが――間に合わない。

レピートの口から零れ出たのは、死から逃れるための懇願ではなかった。


「どうして、大好きだって言ってたじゃないですか」


「―――ウルアやめなさい!!!」


セトの叫びが部屋に響いた。ウルアの鎌がまるで術を掛けられたかのように制止する。ロズが痛みを振り払い、レイピアを持ち替えウルアに一閃した。横からの奇襲にさしもの騎士団長も避けざるを得なかったのだろう、後ろへ跳ぶ。ロズは追撃することなく、レイピアを口に加えて動かないレピートの体を抱き上げた。

ティが隙を逃さず―――歌詠詞を発動させる。

「絡めとれ、孤高の戦慄―――≪バインドウォール≫!」

「…歌詠詞か……それは、術式妨害できない…!」

どこからか現れた魔手が≪グルート≫を包み込んだ。張られた札が散り散りに弾け散った。

誰かが合図をしたわけでもなく、全員は後方の扉へ駆け出した。

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