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Break Childs  作者: そうしょう
6 理想(ユメ)を持つ者達
35/61

35 秘密の丘

セトと共に道を歩いていく。賑やかすぎる街並みは、子供だけの足ではすぐに攫われそうになってしまう。

「レピートは、旅をしているのね」

「はいっ!雪が降る街も行きましたし、暗い洞窟も行きました!」

それでも、まだ世界は広いのだと感じる。

レピートが歩んだことがない道はたくさんあるのだ。

セトは興味深そうに頷きながら、街並みをぐるりと見た。

「私、ずっとここにいるの。でもこの街は美しいでしょう?」

「…はい!活気にあふれて、どこの街よりも賑やかです!!」

ふふ、とほんの少し唇をほころばせるセトの瞳は、何とも優しい色をしていた。

どこかに向かっているわけではないので、ずっとここにいるのなら、と思い、レピートは尋ねる。

「セトのおすすめなところってあるんですか?」

「おすすめ………?そうね………」

たどたどしい足取りで連れられたのは、街を少しずれたところだった。あまり遠くに行けば、魔物も襲ってくる。若干の警戒をしながら、セトの背中を追う。人ごみからずれたからか、喧騒は遠ざかり、静けさが立ち込めだしていた。

「ここがね、好きなの」

――連れられた先は、静かで、海の音だけが響く、丘の上だった。

立ち込める花々と、草が足元を覆っている。目の前に広がるのは海だ。

「…静かです」

「そうでしょう?…賑やかなのも素敵で楽しいんだけど、…静かな所も、とっても好きなの」

風に靡かれ、フードが揺らぐ。それを押えながら、セトは見詰めている。海を、いいや、もっと遠くなのかもしれない。金髪が艶やかに流れていた。

「…ファレストは、街は、美しい。…でも、誰も彼もが貧窮に困っていないわけじゃない。痛みも、苦しさも、皆が抱えていないわけじゃない………レピートは、どうして20年前に大戦が起こってしまったか、知っている?」

彼女も生きていなかっただろう、時代。レピートは首を振る。

セトはレピートの菫色の瞳を見ながら、囁いた。

「…平等じゃないから、よ。皆が一番になろうとする、…ただ、それだけのために、争いなんて起こる………自分勝手に、自分だけの為に…意味なんて、ないのに」


セトの言葉に、レピートは自然と言葉を出していた。


「それだけじゃないと思います」

レピートは知っている。

大戦の悲惨を、レピートは書で知った。プレネスから大戦について、教えて貰った。

確かに、誰も彼もが傷つけあい、奪い合った。結果としてはそれが全てになるのだろう。でも。

「誰もが………守ろうとしていたんです」

自分だけじゃない。誰かを、何かを、他者多用でも、自らの信念を賭けて戦った。失った物の方が大きかっただろう。だが、結果、得れたものもあるはずだ。

生き延びて、自身の力を失ったプレネスが、地に伏したロズと出会ったように。

「意味がなかったはずはないのです。意味はあったはずなのです。…もちろん、大戦が起こっていい、なんてわけじゃないですけど!」

は、と我に返って否定すれば、セトはしばし呆気にとられた後、くすりと微笑んだ。

一際強い、風が吹く。

「…そう、―――そうかも、しれない」


目を伏せて、セトは囁く。

「だからこそ、…世界は誰かが導き、変えなければならない」

風に掻き消された言葉を、今一度聞き返そうとした、そのとき。


大通りで爆音が轟いた。


「!なに、」

「戻りましょうセト!」


そして秘密の丘には、何も、誰も残らない。

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