表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Break Childs  作者: そうしょう
5 交わる二つの血について
29/61

29 この世界に、産まれては

「…ッ」

蔓の猛攻を避けて、気が付けばどこを歩いているか分からなくなっていた。そもそも、森の地図を持っているプレネスは現在共に行動していない。迷子、である。

苦笑を浮かべて、ロズは腰に手を当てた。まあ、一人じゃないだけ、幸いと言ったところだろうか。

「どうしようか、レイス」

「道なら分かる」

「え?」

レイスは軽く手首を振るった。ふわりと浮かび上がった赤色のマナを視認すると同時に、ぽつぽつと光が繋がっていく。

これは、と二度三度瞬きをし、納得した。

「ラックの展開術?」

「咄嗟にプレネスと繋がっておいた。ラックはプレネスに投げつけておいたからな…」

「…レピートとは絶対に繋がったりしないのにね」

思わず毒を含んで言えば、レイスの足が止まった。

あ、と、ロズは口を噤む。が、すぐに口を開き笑みを浮かべた。

「気に障った?ごめん、忘れて」

「…合成獣(キメラ)を気にしているのか何なのか知らねぇが、いい加減にしておけ」

ロズの瞳が揺らいだ。

レイスは赤い眼光で、睨み付けるようにロズを見る。

一瞬だけ笑みを消したロズは、すぐに同じように笑みを浮かべて、素知らぬ顔で「なんのこと?」と尋ねてみせる。

深々と、レイスは息を吐いた。

「…なに、何なんだよ…」

何が言いたいの、――ロズの中に焦りが生まれだしていた。レイスと話していると、心を見透かされているような感覚に陥って、不安で、怖い。感情が沸々と湧き出て、言葉にできないまま飲みこまれる。

焦って、言葉が滑る。

「…合成獣、つまりそれって、僕らみたいな、他種族で生まれた化け物なんでしょう?恐ろしいよね、怖いよね…そんなものが、この世に居るなんて」

「怖くないだろう」

「……っ、いつか、無意識にも誰かを傷つけるんだよ、きっと。記録にもあったし、合成獣は生み出してはいけないものだった、って…」

「それは人為的につくられたからだろう」

「―――子を作るのだって、同じことだ!」

思わず怒鳴り声になっていた。

足元の茂みが、ブーツにすりつぶされた嫌な音を立てる。ロズは拳を震わせて、きつく唇を噛みしめる。


憎い、憎い。

――きらいだ。

ロズは、自分が嫌いだった。

ハーフであり、どっちのもつかないわが身が、嫌いで、仕方がない。


それでもそれを、レイスに怒っても仕方ないのだ。自分が悪い、と、ロズは気まずく流れ出した空気を取り消すように深呼吸をして、普段通り笑みを作ろうとした。遮るように、レイスが言葉を紡ぐ。

「昔………昔、黒髪に赤い瞳は災厄の象徴だという風習があった」

「………?」

たどたどしく、レイスは言葉を続けていく。

黒い髪を揺らして、赤い瞳を細めて。

「産まれてはいけない、邪悪な生き物だと。…だけど、ある人はこういった。


……この世界に、産まれてはいけない命なんてないんだ、と。」


ほんの少し、懐かしむように。それは、ロズが初めて見る表情だった。決して良い事ばかりではなかったのだろう、それでも、懐かしむ記憶は、悪いものではなかったのだと十分伝わってきた。

「だから、ハーフだって、…何だって、産まれてはいけないものはないと、俺は思う。合成獣も、魔物も。道を間違えているだけだ、何らかの方法があれば、それは人に害をなさないものになるだろう。化け物なんかじゃない」

「……優しいけれど、残酷だ。…でも、きっと、レイスに教えてくれたその人は…素敵な人なんだね。今、その人は…?」

レイスは小首を傾げる。

ややあって、ぽつりと吐き捨てた。

「死んだよ」

随分と前に、付け足された言葉に、ロズは何も言えない。木々が風に揺れる音がうるさいぐらい響いていた。

細められた赤い瞳がゆっくりと閉じられ、思い出したように、付け足された。


「――――俺が殺した」


「え?」

訊き返そうとした瞬間、レイスが突然早足に歩き出した。徐々に駆け足に変わっていくのを、慌ててロズは追う。

「どうし…」

「展開術が途絶えた」

吐き捨てられた言葉に、展開術で繋がっていた赤いマナが道を選ばず霧散する様を見て、ロズもまた事態を察する。

「プレネス達に、何かあった…?!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ