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Break Childs  作者: そうしょう
4 記録の場所
24/61

24 世界の真実

「歌詠詞の術………ねぇ」

コンコン、とロズは壁を叩いてみた。特に何の変化もなし、感覚もしない。

「…破れるもんなの?」

「うう、それは分からないみ………」

「役立たずなぬいぐるみだなぁ…」

「だからぬいぐるみじゃないみ!!!」

ロズの零した言葉に猛反発するラックを他所に、同じようにペタペタ壁を触りながら、レピートは隣に立つレイスを見上げた。

視線を受け、赤い瞳がレピートを向く。

「師匠でも何か分かんないですか」

「歌詠詞の術は歌詠詞にしか感じ取れない。歌詠詞以外のやつがどう察しようとしても無駄だ」

「そういうもんですか…」

ふらり、と。

ティが壁に手をやった。眉を寄せ、耳を澄ませる。そのまま壁に耳を寄せた。

「…何か、歌が聞こえる…」

「えっ」

慌ててレピートも同じようにしてみた。しかし、何も聞こえてはこない。聞こえるのは、ここに居る人物の息遣い程度だ。

音、歌は聞こえない。

察したらしいレイスが言葉を紡ぐ。

「…歌は歌えそうか」

「………うん、繰り返しているだけダ。歌えるヨ。」

ティが息を吸う。

やがて、かほそく、静かに歌が流れ出した。ティの唇から紡がれる歌は、優しくて、心地よい。思わずレピートは目を閉じて、聞き惚れた。

拙い歌ではあった。普段使わないような場所から歌を、≪声≫を出しているのだろう。

プレネスが小さく息を呑む。

「これは、解除呪文………?みて!」

ティの前の壁が音を立て、崩れていく。左右にはけていくそれに、慌ててレピートは体を離した。轟音を立てながらも、その間、ティの歌は途切れない。

ようやく、短くはあったが、永遠に聞き惚れていられるような歌が終わったのは、全ての壁が消え去り、目の前に階段が出来てからだった。

「…はぁっ…」

玉の汗を拭い、ティが咳き込む。

腕を組み、ロズは感心したようにぼやいた。

「これは凄い…」

「階段………行ってみる?」

プレネスがレピートを向く。レピートはティを見た。少年は尚、肩で息をしていたが、レピートに向けて微笑んだ。

行こうと告げる瞳に、レピートは頷いた。


階段を昇った先には、パネルが広がっていた。

「ま、またパネル………僕機械系苦手なんだよね…」

うんざりしたようにロズは立ち止まる。レピートもうんうんと頷きながら同意した。

ティとプレネスが機械に近づき、それにラックが加わる。あーだこーだと言いながらパネルを見詰める二人を他所に、ふとレイスは左のパネルを見やった。

青いモニターだが、赤いランプが一際目立つようについている。

「………古代文字?」

つい、300年程前まで使われていた文字だろう。レイスは眉を寄せながらも手を動かした。いつの間にやらレピートとロズも三人に加わり、静けさがレイスを包んでいた。

また、パスワード画面。

レイスはしばし考えた後、自身の名を入力する。

「…また、通るのか」

認証の文字が苛立たしくなってきた。しかも、今度は古代文字で、だ。

広がったデータに、レイスは食い入るように目を瞠った。

「………なんで、こんなもんが………」

息を呑み、背筋が凍る思いがした。これは、


ダメだ。


咄嗟にランプを押した。強制的なシャットダウン。画面は暗くなり、レイスはどこか安堵したように息を漏らした。

そこに記されていたのは、世界の真実だった。

400年前、勇者一行が成した、世界の真相だった。

「…こんなの、俺が知っていいもんじゃねーわ………」

思わず苦味を噛みしめる。400年前の真相?真実?自分が知ってどうするのだ。当事者は既に皆、居ないのに。一体誰の為にデータとして残したと言うのだ。

データ保存者の名前は刻まれていた。

Osuka――≪オスカ≫。

「…貴方が、誰の為に残したのかは知らない…から、データは、…壊さないでおく。」

いつか、本当に知るべき誰かの為に。

レイスは、封印魔法を施し、世界の真実に蓋をした。

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