表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Break Childs  作者: そうしょう
3 雪の国、white core
16/61

16 展開術

それは、まだ記憶にも新しい大戦の記憶。


燃え盛る炎と涙が零れそうなほどの死臭。痛みと苦しみと、阿鼻叫喚がそこにはあった。

吸血鬼がこの地から離れるきっかけとなったその事件は、吸血鬼とピクシーに、大地にヒトに、あらゆる全てに揺らぎを与えたのだ。


寒さに身を摩りながら立ち上がると、教会から少しだけ離れた場所に出た。街の中ではあるようだが、あそこからは脱出できたようだ。未だ降り注ぐ雪に、先程まで熱を持て余していた体が急激に冷えていく。

「レイス達は無事かな…」

「なんとかやるわよ、あいつらなら」

ふぅ、とプレネスが息を吐く。思わずロズは苦笑して、その場に座り込んだ。もちろん、逃げるのが先決なのは変わりないものの、かといって彼らを置いていくわけにもいかないのだ。

ただ、もちろん、疲労もある。

「…僕は弱いなぁ…」

口惜しげに零せば、隣でプレネスが噴き出した。何、と怪訝気にプレネスを見れば、肩を揺らして未だ喉の奥で笑うプレネスが居る。長い髪が上下に揺れていた。

「おかしいな、と思って。あんだけ気丈に機敏に振る舞ってたじゃない」

「そりゃ、好きな女性の前ではかっこよく振る舞いたいじゃないか」

「はいはい」

地獄を彷徨っていたプレネスを救ってくれたのは、ロズだった。

軽く伸びをするロズを横目に、唇を噛みしめる。自分と居ることの危険性がはっきりと明示されてしまった。ツイッセはこれぐらいで諦めたりはしない筈だ。

(それでもあたしは、ロズの傍に居たい)

居て欲しい。

「………あれ、レイス達じゃない?」

「え?」

目を向けた先には、どことなく疲れた表情の二人と――――謎の生き物が浮いていた。

何あれ。

しかも、後ろから、大蜘蛛に追われている。

「………うっわ、面倒くさそうだ」

言葉とは裏腹に、どことなく楽しげにロズは笑みを浮かべた。


時は、少しばかり遡る。


「…展開術って何です?」

聞きなれない単語に聞き返すレピートに、考え込むようにレイスは沈黙を通す。ぬいぐるみのそれは、これまた騒がしく解説をした。

「展開、つまりはヒトとヒトを繋げる術だみ!例えば、黒髪の男とレピートを繋げて、黒髪の男からマナを操作する術式を組み敷き、レピートにも術を扱えるようにするみ!」

「凄いです!」

意味が分かればとレピートは目を輝かせる。なんだそれ、願ったりかなったりだ、といってもレイスにどのような負荷がかかるか。思い直して顔を曇らせれば、レイスがため息をついた。

「やってみるかみ?」

悩んでいる暇はなかった。

大きな影が覆いかぶさる。考えている暇も、返答の暇もない。短剣を構えて、大蜘蛛と向きなおった。


ぬいぐるみを包み込むように色彩が取り囲む。


広がる紋章と、吹き荒れる風。レピートは短剣にナニカが集っていくのを感じ―――次の瞬間、弾けた。


「「………えっ」」


弾け飛んで、術式が、消えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ