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Xenoverse:EX  作者: 葉月はつか
Side story
9/21

第48.5話(第95.5話) 遠き日の誓い 1

 久城がジルベルト達と同じアルヴァルディの船員となってから数日。

 彼はすっかりと溶け込み、ある一人の人物を除いて皆に受け入れられていた。


「やっぱり、鳴鳥は相変わらず料理が上手だね」

「そ、そんなことは無いです……っ! このくらいはどうって事でも……」

「そんなことは無いよ。本当に、毎日鳴鳥の作るご飯が食べられて僕は幸せだよ」

「……っ」


 歯の浮くようなセリフを余裕の笑みを讃えてサラリと述べる久城。

 彼の言葉に耳まで赤くして言葉を詰まらせてしまう鳴鳥。

 それはとある日の夕食の場での事。

 まるでカップルか、新婚夫婦のような雰囲気を漂わせている鳴鳥と久城。

 そのような二人に対し、コンラードは横目でチラチラと見て非常に羨ましそうにしており、そんな彼をマリアンは肘で小突いて「アナタもちょっとは頑張りなさいよ」と焚き付ける。

 一方でジルベルトは眉間に皺を寄せて不機嫌な面をしており、その様子をアランとスティングは微笑ましく見守っている。


「そ、そうっスよ! クランドの言う通り、ナトリさんの手料理は何よりの御馳走っス」

「コ、コンラードさんまで……っ。そんなに褒めても何も出ませんよ」

「いやいや、謙遜しなくとも、事実を言ったまでっス!」


 何とか鳴鳥と久城の会話に割って入れたコンラードだが、これは完全に久城の話に乗っかっただけである。

 けれども二人の間に流れていた良い感じの雰囲気は誤魔化す事に成功し、コンラードは内心ホッと胸を撫で下ろした。

 彼にしては頑張った方かとマリアンはその懸命な姿を讃え、そして如何にして会話を広げるのか手本を見せるよう話を続けた。


「それにしても、ナトリは誰に料理を教わったの? 教室に通っていたとか?」

「あ、いえ。そういった特別なのは何も。母から教わったのと、友達が料理好きで……。よく一緒にお菓子とかご飯を作ったりしていたんです」


 その頃は自分より友達の方が料理上手であって、教わる事が多かったのだと言う鳴鳥。

 懐かしげな表情に頷いて見せたのは久城で、その友人とは他でもない久城の妹、由利亜の事であった。


「幼い頃、由利亜や僕は外出を制限されていて……。学生になってからも、由利亜はインドアな……外出する事は少なくて。それで鳴鳥が遊びに来てくれて、一緒に料理をしていたね」

「はい……! ですから、私がこうして料理が出来るのは、由利亜ちゃんのお蔭で……」

「それでも、今の鳴鳥は由利亜よりも上達しているね」

「そ、そんな事は無いですよ?!」

「そんな事はあるよ。兄である僕が言うのだから、ね?」

「……えっと、あ、ありがとうございます」


 またもや良い感じになりかけた二人。

 話を広げようとしたマリアンは失策であったと内心焦り、またもや話の方向を変えようと目論むも、彼が発言する前に別の者が会話に割って入る。

 それはこれまで無言を貫いていて、鳴鳥と久城の仲睦まじさをつまらなく思いつつも、態度に表わさないよう気を付けていたが無意識下で眉間に皺を作っていた者、ジルベルトであった。


「そう言えばお前達は幼馴染だったんだよな」

「あ、はい」「ええ、そうです」

「それで、お前達が出会ったのは、子どもの頃、公園で悪ガキに虐められているクランドをナトリが助けたんだっけか?」

「ジ、ジルベルトさん! その時の事は――――」


 今とは全く違う立場。

 普段でも任務中に誰かに助けを借りる事が多く、敵に狙われ守られている鳴鳥。

 そんな彼女が逆に幼少時は久城を守っていたのだと初めて知ったコンラード達は驚きを隠せないでいた。

 幼い頃から誰かの為にと奔走する姿は愛らしくもあり微笑ましいものであって。

 皆は今の鳴鳥の姿をそのまま小さくした様子を思い浮かべて納得していたのだが、当人は昔の話を皆の前で持ちだされるのは恥ずかしいらしく、頬を赤くして俯いてしまっている。

 幼い頃の武勇伝。

 それは鳴鳥にとっては別段誇らしいものでもないが、久城にとっては恥ずかしい過去、年下の女の子に助けて貰ったなど、あまり大っぴらには言えない筈である。

 過去の失態を明かされ、久城がどのような反応を見せるのかとジルベルトは気にしているようだが、彼の思うような反応は見られなかった。


「……本当に、あの時鳴鳥に助けられて良かったと思うよ」

「久城センパイ……?」


 それは10年以上も前の事。

 懐かしむように、その時の出来事を二人は思い返していた。






 大きなお屋敷と設備が整い裕福な家庭の子ども達が通う私立の幼稚園。

 ピアノやヴァイオリンなどの習い事は講師が屋敷を訪れ、教室に通うことは無く、勉強も家庭教師が付いている為、塾に行くことも無い。

 その上両親は仕事で忙しく、休日も家族そろって何処かへ出かける事は滅多に無く、久城蔵人と妹由利亜の幼少期の世界はとても狭いものであった。

 長男として両親や祖父母達から期待され、それに応えようと幼い頃から努力は惜しむことが無かった蔵人。

 裕福な家庭に生まれたからか、あれが欲しいこれが欲しいと駄々をこねる事も無く、我儘を言うことも無かった。

 寧ろ勉強や習い事を頑張り優秀な成績を修めれば両親が褒めてくれる。

 それが彼にとって何より嬉しいものであったようだ。

 一方由利亜は習い事、勉学共に非の打ち所は無かったが、頼もしいしっかりとした兄が居る分、少々甘えた性格に。

 家名を背負うという両親達からの期待もないせいか、やや奔放に、今の小さな世界では満足できないようであった。

 幼稚園からの送り迎え、送迎車の中から見る外の景色。

 由利亜は何時も窓の外の世界に羨望の眼差しを向けていた。


「兄さま。あの場所は……」


 車窓の外にあるのは金網の柵に囲まれ、様々な遊具がある公園で、陽が暮れる前であるからか、子ども達が楽しそうに遊んでいた。


「公園、だね。滑り台にブランコに、色々と遊具があって、皆に解放されている場所だよ」

「私も遊びに行っても良いの?」

「それは……」


 公共の場であって誰しもが利用できる公園。

 けれども蔵人や由利亜は好き勝手に外出できるような環境ではなく、遊びになど行ける筈もない。

 幼いながらもその事を理解している蔵人は、どうにか由利亜の興味を逸らそうと知恵を働かせて言い聞かせる。


「幼稚園には遊具が沢山あるし、友達も居るだろう。そことあまり変わらない場所だから、面白いものでもないよ」

「そう……なの?」

「ああ。そうだよ」


 兄の言葉に納得がいったようであって、それでもまだどこか腑に落ちていないようで、小さく頷いた由利亜は再び外の世界を、手が届かなく流れるだけの景色を見つめていた。

 その時はそれで由利亜の好奇心は抑えられたのだと思われたが、どうやら彼女は諦めていないようで。 蔵人はその事に気付いておらず、後にひと騒動起こしてしまうとは夢にも思わなかった。

 ある休日の昼過ぎ。

 その日は午後から蔵人はヴァイオリンの、由利亜はピアノのレッスンを受ける筈だったのだが、由利亜が時刻を過ぎても講師の前に現れることは無かった。

 昼食はクランドと共にちゃんと取っており、具合が悪そうではなかった。

 だが何時までたっても現れる気配はなく、家政婦の一人が私室に向かった所、由利亜の部屋の扉は固く閉ざされていた。

 家政婦はノックをし、呼びかけてみるが返事はない。

 もしかすると返事が出来ない程に具合を悪くされたのかと思い家政婦長に伺いを立て、鍵を用いて中へと入る。


「……!?」

「何かあったのでしょうかね」


 先にレッスンをしていた蔵人は屋敷に響いた女性の甲高い悲鳴に手を止める。

 これは何かあったのだと、講師もこのままレッスンを続けてよいものか戸惑っている所、家政婦の一人が部屋を訪れ、今日のレッスンは取りやめる旨を伝えた。


「あの……、もしかして由利亜が何かあったのでしょうか?」

「ぼ、坊ちゃまはご心配なさらないで下さい」


 慌てた様子を必死に隠そうとするが目が泳ぎ切っている家政婦。

 彼女は自室にお戻りくださいとクランドに言い、彼の部屋の前まで着いて歩き、扉が閉まるまで見届けて。

 その後に響くほどの足音を立てながら何処かへと向かって行った。


「(また由利亜が何かしでかしたのか……)」


 人見知りであって、臆病であって、外では非常に大人しい由利亜。

 だが彼女は家ではまるで別人のように、興味の赴くまま動き回り、こうして度々騒動を起こすのであった。

 今日もまた家政婦達の悲鳴が聞こえているようだが、今回は何時にも増して騒がしい様子で、家政婦達の表情は青ざめていて、いつもよりも厄介な状況であると分かる。

 自室で大人しくしているよう言われた蔵人だが、これ以上妹が皆を振り回してはならないと、兄としての責任を感じて自室から出て由利亜の部屋へと向かった。


「これは……」


 由利亜の部屋に居たのは老齢の家政婦長と彼女を支える若い家政婦で、どうやら家政婦長は驚きのあまり腰を抜かしてしまったようである。

 蔵人が現れた事で佇まいを正そうとするが、今の彼女には辛いらしく顔を一瞬歪める。

 それでも心配は掛けまいと笑顔を取り繕うが、蔵人は身体を大事にして欲しいとソファーまで彼女の手を取り誘った。


「申し訳ございません、坊ちゃま」

「いえ、お気になさらないで下さい。何より大事なのはお体の事ですし、今回も由利亜のせい、なんですよね」

「そ、それは……」


 部屋を見回して目に付くのは開きっぱなしの窓。

 窓には柵があり、そこにはシーツで作られたロープが括りつけられていて、垂れ下がり風に揺られていた。

 古典的な脱出方法だがシーツの結び目を見て蔵人は考え込み、そして家政婦長へと声を掛ける。


「多分まだ屋敷からは抜け出していないようですから、僕が探してきます」

「そんな……っ! 恐れ多い事を……」

「妹の面倒を見るのも兄の役目ですから」


 そう言って由利亜の私室を出た蔵人は、広い屋敷の中で世話の焼ける妹を探し回る事となった。


「(……うーん……。やっぱり中々居なくならないなぁ)」


 表の立派な門とは違い、やや小さな裏門。

 そこでは今現在、クリーニングの配達業者が訪れていて受け渡しを行っている。

 その様子を植え込みからコソコソと眺めているのは幼い少女であった。


「そこで何をしているんだい?」

「ひゃう……っ! ……ごめんなさ――――兄さま?」


 飛び跳ねる程に驚いた様子の由利亜は慌てて謝ろうとするも、見つけた相手が蔵人であった為、途中で謝罪を止めてしまう。

 一先ず怒られることは無い。

 そう安心しきった由利亜はホッと胸を撫で下ろし、そしてキッと強く睨み付けた。


「もぅ! 兄さま……っ、おどろかさないで!」

「ごめんね。それより由利亜はここで何をしているんだい?」

「決まっているでしょう。ここから外へ……――――って」


 うっかりと口を滑らせてしまった由利亜は慌てて口を両手で塞ぐが、それは全く意味のないものである。

 そもそも蔵人は彼女の目論見などとうにお見通しであって、彼女から聞き出さずとも分かっていたので、今更取り繕っても無駄である。

 部屋を抜け出してこんな場所に隠れて屋敷を抜け出そうとしていると知られ、怒られてしまうかと身構える由利亜だが、意外にも蔵人は深い溜息を吐いただけであった。


「一つ聞くけど、ここまでどうやって来たんだい?」

「それは――――」


 屋敷には家政婦を始めとした使用人達が居て、外に出るまでには誰かしらと顔を合わす事となる。

 まさか本当に自室からシーツをロープ代わりに使ったのかと思いきや、どうやらそれは陽動だったらしく、屋敷が騒がしくなった隙に潜んでいたお手洗いからここまで来たようだ。

 入念な計画を立てての事らしく、由利亜はちゃんと靴を履いており、誇らしげにしているが、まだ小学生になる前の妹がここまで悪知恵が働くことを末恐ろしく感じる蔵人であった。


「全く。何処でそんな悪知恵をつけたんだか……」

「兄さま、もしかして私をつかまえに来たの?」

「もちろん。皆に心配をかけてはダメだろう?」


 優しく言い聞かせるが、やはりここまでしてでも由利亜は外への興味を抑える事は出来ないようで、じわっと瞳に涙を浮かべる。

 何時もの泣き落としだと分かっていても可愛い妹に泣かれてしまうのは困るようで、蔵人は強く出ることが出来なかった。


「わかった。今度僕から父様と母様に頼んでみるから。だから今日の所は戻って皆に謝ろう」

「……それはイヤ! どうせダメだって言われるもの」

「そうとは限らないだろう。それに、由利亜がもう少し大きくなれば外にだっていくらでも出られるようになるよ」

「そんなに待てない!」

「……由利亜」


 妙な所は頑固である由利亜。

 やはり自分に今の彼女を言い聞かせる事は出来ないと、誰かに助けを求めるかとも考えるが、ここで由利亜を裏切るような真似をすると当分口を聞いてくれなくなってしまうのは目に見えている。

 こうなると少しならばという気にもなり、結局蔵人は由利亜の我儘を受け入れてしまうのであった。






 由利亜一人きりではどうにもならなかったが、蔵人が居ればどうにかなるもので、二人はこっそり屋敷を抜け出すことに成功した。

 屋敷から公園まではさほど距離が離れておらず、車の行き来も激しくはない。

 この地域は治安も悪くなく、危険はないだろうと分かってはいるが、大事な妹を怪我などさせてはならないと蔵人は細心の注意を払いながら歩く。

 一方念願の外出を果たした由利亜はこれまではただ流れるだけの景色に過ぎなかった場所を自分の足で歩くことが出来、興味の惹かれるものはじっくり眺められることに嬉しさが押さえきれないようで終始笑みを浮かべていた。


「兄さま、猫が居るわ!」

「ああ、そうだね」

「あっちには大きな犬!」

「危ないから近寄ってはダメだよ」

「はーい!」


 塀の上で欠伸をし、丸まって午後の日差しに微睡む野良猫。

 柵に掴まり立ちになって尻尾を振り、構って欲しそうにしている飼い犬。

 別段どうという事の無い日常の風景は由利亜にとっての非日常であって、何もかもが新鮮なようだ。

 外に連れ出す条件として、兄である蔵人の言いつけは守る事。

 その約束はしっかりと守っているようで、由利亜は興味本位に手を出したりはせず、好き勝手に走り回る事も無く、ちゃんと蔵人の手を握っている。

 嬉しそうに笑顔を綻ばせて指さし、興奮気味に話しかけてくる由利亜。

 後で両親に叱られてしまう事は分かっているが、こんなにも楽しそうな由利亜の姿を見られれば、蔵人に後悔など無かった。


「ここが公園!」

「三十分だけだからね」

「うん! わかった」


 公園内なら更に危険な場所は無いだろう。

 そう判断した蔵人は由利亜の手を放す。

 はしゃいで駆けだしてコケてしまわないかとも思われたが、由利亜は元々足が速くなく、勢いよくコケることはなさそうであった。

 ベンチにでも座ってしばらく様子を眺めていようと、そう思った蔵人だが、公園内にはどうやら先客が。

 近所の子ども達が居て、彼らは突然現れた由利亜と蔵人を凝視していた。

 母親がスウェーデン人であって、蔵人と由利亜は母の容姿を色濃く受け継いだようで、髪はプラチナブロンドで、瞳は蒼色である。

 蔵人たちが通う幼稚園ではハーフの子は珍しくないのだが、ここではやはり目立つようで、無遠慮な視線は突き刺さってきた。

 ただ遠巻きに見ているだけならば構わない。

 仲間内でコソコソと言いあっているのは気分が悪いが、知らぬ素振をすればいい。

 けれどもその子ども達、如何にも悪ガキであるかのような者達は由利亜に近付いて行った。


「お前! どこから来たんだ!」

「わ、私? ……近くの……家……からだよ」

「本当かぁ? 見たことねぇぞ」

「う、ウソじゃないよ! ……本当にこの近くの……」


 見ず知らずの者に、由利亜は彼女より大きな男の子達に囲まれつつあり、疑いの眼差しを向けられ大きな声で難癖をつけられる。

 人見知りでなくても怯えるであろう態度を取る子ども達を前に由利亜は怯え、それでも自分は悪くないと、ちゃんと言い返そうとする。

 由利亜は彼女なりに質問にキチンと答えたが、何が気に食わないのか子ども達の一人が手を伸ばし、由利亜の髪を掴もうとする。


「止めてくれないか」

「うわ……っ。何だよお前!」

「僕は由利亜の兄、蔵人だ」


 由利亜の髪に触れそうになった子を押しやる様に割って入る蔵人。

 怯える由利亜を守るよう立ちはだかり、ちょっかいを掛けてきた子ども達に立ち向かうが、どうやらその態度が気に食わなかったらしく、子ども達は更に大声を出して威嚇してくる。

 実の所、由利亜の髪に触れようとした子はただ単にその綺麗な髪を触ってみたかっただけであって。

 他の子達も可愛らしい由利亜の事が気になって声を掛けてきたのだが、この年頃の男の子が素直になれる筈もなく、優しい言葉も掛けられずにいて。

 そこに兄である蔵人が出てきて場は更にややこしく、一触即発となってしまった。


「(どうする……? 一先ず由利亜を逃がさないと……)」


 お行儀のよい子達ばかりである蔵人の通う幼稚園では取っ組み合いの喧嘩など見た事も無く、自身が当事者として誰かと喧嘩をした事も無い。

 温室育ちであるかのように思われるが、生まれつき運動神経は良く、咄嗟の判断力も悪くはない。

 それでも一対五という圧倒的不利な状況で、更には背中に守らなくてはならないか弱い存在が居る。

 どうするべきか。

 ここは謝って場を丸く収めるべきかと考えている内に、子ども達の中の一人、一番大柄で強そうな男の子が前に出てこちらにぬっと手を伸ばしてきた。


「……っ」


 突然の事で瞳をギュッと閉じてしまった蔵人。

 殴られるか、胸ぐらを掴まれる事を覚悟していたのだが、何時まで経っても自分の身体には何の衝撃も来ない。

 その代わりに起きた事。

 それは目の前に居た者の呻き声で、恐る恐る目を見開くとそこには想定外の光景が広がっていた。

 横に飛ばされた大柄な子。

 強気だった他の男の子達が急に弱腰になり、後退る。

 彼らが警戒しているのは間に割って入った者、栗皮茶色のショートカットの少年であった。




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