新たな旅立ち 4
鳴鳥がジルベルトを家族に紹介した次の日。
快く思っていないだろうと考えられる父、尚康は朝早くから出勤して皆と顔を合わせることは無かった。
避けられてしまっていると気付くジルベルトだが、不愉快に思うことは無く、寧ろそうさせてしまったのは自分のせいであると自覚しており、父親の代わりに謝罪する鳴鳥に謝る必要は無いと言う。
朝起きて早々出鼻をくじかれたようだが、母親と弟には今後どうするつもりでいるのかを明かす事が出来て。
二人には反対されず、意志を尊重して貰うことが出来た。
「もう。あの人ったら、逃げ回っていてもしょうがないのに……」
「今晩は遅くなるの?」
「そうみたい。全く、大人げないんだから……」
夕刻。今夜は尚康の好物ばかりを用意して機嫌を少しでも良くしようと目論み、鳴鳥と菜緒が腕を振るっていた所、尚康からの連絡が入ってきた。
その内容は今晩は会社の付き合いで飲み会に行き遅くなるとの事で、それは現実逃避であると妻である菜緒は見抜いていて、彼女は盛大な溜息を吐いた。
「ごめんなさいね、ジルベルトさん。主人ったら、本当にどうしようもなくって……」
「いえ、寧ろ自分の方が謝らなくてはいけないので……」
「そんな……! 悪いのは全部あの人なのよ。ジルベルトさんが気にすることは無いわ」
「いや、ですが……」
「いいのいいの。あの人の事は放っておいて。さ、夕食にしましょう」
菜緒は尚康が全て悪いのだと言い、棗も同意する。
鳴鳥も流石に父の態度に呆れているようで、それでも彼女だけは何処か残念そうであって、憎みきれないないようでもあった。
結局その日の晩は尚康を除いた四人で夕食をとり、今日もジルベルトは奈々塚家に泊まる事となった。
流石にこのような事になってしまった以上、ジルベルトは自分がここに居ない方が良いと。
ほとぼりが冷めるまでは距離を置いてまた日を改めようかとも考えたが、鳴鳥はここに居て欲しいと、先延ばしにするつもりは無いらしくどうにか引き留めさせた。
「それにしても、遅いね、お父さん……」
「やっぱり、なんだかんだと言って心配なんだな」
「そ、それはまぁ……、家族ですし、それに、早く大事な話をしたいですし」
「そう……、だな」
夕食を終えて片付けも済んだ後、鳴鳥とジルベルトは鳴鳥の部屋で荷物を纏めていた。
今後の為に、いざという時の為に荷物を纏めるのだが、家具などは勿論そのままで。
スーツケース一つに纏めるだけであって簡単かのように思われるが、意外と時間は掛かっていた。
菜緒に相談した所、部屋はそのままでもよいと言われて、全てを片付ける必要は無いのだが、暫く離れる事を考えれば何を持っていくのか悩むもので。
あれもこれもと思えばスーツケースは直ぐにパンパンとなってしまった。
お気に入りの服など、涙を呑みつつどうにか取捨選択していた鳴鳥はふと壁にかけられている時計を見て、父の帰りが遅い事に気が付き不安を漏らした。
食事中はジルベルトに対してフォローのつもりか、控えめであるが菜緒と一緒になって尚康を悪く言っていた鳴鳥だが、やはり家族が大切な事は変わりないようで。
彼女は未だに帰らない尚康を心配していた。
「お前から、連絡を入れてみたらどうだ?」
「そうですね……。今日は一言も話していないですし、一言ぐらいは言わないと」
あくまで心配はしていないと、ジルベルトに気を遣いながら鳴鳥はスマートフォンに手を伸ばし、父へと連絡を入れてみた。
飲み会に行っているとの事で、ひょっとすれば喧騒の中でコール音が聞こえず出ないか、はたまた意図して応答しないかとも思われたが、尚康は数度のコールで応答した。
「あ、お父さん。何時になったら帰って――――……え……?」
戸惑った様子の鳴鳥。
彼女が連絡を入れたのは父である尚康のスマートフォンであるが、応じたのは聞いた事の無い男性の声であった。
最初はどういう事かと強く問い詰めるような口調で問い掛けていたが、顔色を徐々に青ざめさせた鳴鳥は微かに震える手で通話を止め、縋るような目でジルベルトに状況を明かした。
「親父さんが……? 本当か……っ!?」
「は……、はい……っ、ど、どうしたら……。け、警察に連絡を――――」
尚康の代わりに応じたのは彼の部下でもなく見知らぬ者で。
ゲラゲラと下卑た笑い声を上げながらこちらの質問には答えず、まともな会話は続けられなかったという。
酒に酔った尚康はどうやら今、厄介な者達に絡まれてしまっているようで、彼の持つスマートフォンも取り上げられてしまったようだ。
「取り敢えず落ち着け」
「で、でも……っ!」
「俺に任せてくれ」
取り乱しかけた鳴鳥をどうにか落ち着かせ、彼女からスマートフォンを預かったジルベルトは足早に部屋を後にしようとする。
鳴鳥も彼と共に父を探しに行こうとするが、ジルベルトは家に残るようにと、待っていて欲しいと言った。
「人手があった方がすぐ見つかるんじゃ……」
「大丈夫だ。位置ならこれで捕捉できる。それよりも、お前まで出て行ったらお袋さんが心配するだろう?」
「そ、それは……」
夜も更けていて、いくら父親の為とはいえそんな時間帯に繁華街をうろつくのは危険であるだろうと。
下手をすれば新たなトラブルに巻き込まれかねないと言い聞かせ、何も心配は要らないのだと、自分に任せて欲しいと再度説得してジルベルトは出て行った。
「(お父さん……、ジルベルトさん……)」
じっとしてはいられない所ではあるが、ジルベルトならば心配は要らないと。
そう信じられた鳴鳥は二人の身を案じながらも大人しく帰りを待った。
酒に酔った状態というのは厄介なもので、判断力や危機回避能力がグンと落ちてしまう。
普段ならば堂々と道の真ん中を歩くガラの悪い者達とは関わり合いにならないよう、すれ違う際は距離を取るのだが、酒に酔った尚康は判断力が鈍っており、肩同士をぶつけてしまった。
普通の人が相手ならば互いに頭を下げれば済むのだが、ガラの悪い連中が相手ならばそう簡単にはいかない。
相手も酒が回った状態ではさらにタチが悪く、尚康は無理矢理肩を組まれて暗がりへと連れ込まれた。
さして抵抗することは無く裏路地に連れて行かれる尚康。
てっきり恐れて萎縮してしまったのかと思いきや、壁際に追い込まれてガラの悪い男達に囲まれてガンを飛ばされても一向に動じることは無く、ヘラヘラとしていてまるで危機感が無いようであった。
男達は肩が触れたと理不尽な文句を浴びせるが相手はヘコヘコと謝るだけであって。
緊張感の無い様に呆気にとられる所であるが、彼らはこういった者を相手にするのは初めてでないらしく、脅しが駄目ならばと手を伸ばしてきた。
通勤鞄を取り上げて中身を物色する男達。
無論尚康は抵抗を図るが、何人かに押さえつけられて力尽くで奪い取られてしまった。
どうにか取り返そうとするものの、拘束は簡単に解かれない。
その間に男達は金目の物を探すが、財布は懐にあって見つかる筈もない。
尚康を取り押さえていた一人が財布は何処だと脅しにかかり胸ぐらを掴んだ所、鞄の中のスマートフォンが着信を告げた。
尚康に連絡を入れてきたのは鳴鳥の様で、ガラの悪い男の一人が鳴鳥を相手に話をしていた。
男はゲラゲラと笑いながら尚康とトラブルがあった事、そしてその謝罪が無くて困っているのだと言うがそれは言い掛かりであって、鳴鳥も戸惑っているようだ。
男は一通り相手をからかってから通話を切り、画像フォルダにある家族写真を見てニヤニヤと笑う。
「へぇ……、これがアンタの娘さんか……。可愛いじゃん」
「な、鳴鳥……っ!?」
「さて、どうしよっかなぁ~。ちゃんとしたお詫びが出来ないっていうのなら、娘さんに礼をしてもらおうかね」
家族にまで迷惑を掛けても良いのか、と脅しをかけて尚康がどう出てくるのかと窺ったが、その反応は意外なものであった。
「そうなんだよ! 私の娘は可愛いんだ! 年の割には落ち着きが無いが、そこがまた愛らしくてね、正しいと思った事は貫き通す強さもあって、それでいて料理が上手といった女の子らしい特技もあって、料理だけでなく家事全般はそつなくこなして、何処に出しても問題ない自慢の娘なんだ。……だがしかし、どうして相手が18歳も離れた相手なんだ!?」
「お、おう……」
涙やらなんやらもろもろを溢しながら縋りつこうとする尚康。
彼は家族の話を出されて焦る所か、寧ろ治まっていた感情が溢れだしてしまったようで、誰彼構うことなく気持ちをぶちまけ始めた。
男達はなんだか哀れな生き物を見ているようで気が引けてしまう所だが、因縁をつけた以上はそう簡単に退けはしない。
うだうだと不満を漏らす尚康に対し、ここはひとつ目を覚まさせようと、男の一人が拳を振るったが、拘束していた者達が涙や鼻水にまみれるのを避けて手を放してしまった為、拳は避けられてしまった。
そしてタイミングが良いのか悪いのか、殴りかかった拳は仲間の元へ。
期せずして同士討ちとなったのだが、それが余計に男達を煽り立てる結果となる。
「テメェ……!」
「は……? 私は何も……、というか君達は一体……」
尋常ならざる殺気はようやく酔いを醒まさせたのだろう。
正気を取り戻した尚康は自身の置かれた状況に茫然とするが、肌に感じる危機感から後退りし、そしてその場を慌てて逃げ出した。
路地裏をただひたすら走る尚康。
表通りに出れば何とかなるかもしれないというのに、焦っている彼は判断力が鈍っていてまだ裏路地を逃げまどっていた。
酒を飲み過ぎてしまった身体で走るのは辛く、歳のせいもあってか直ぐにスピードは落ちる。
だが路地裏には色々と障害物もあり、数人で追いかける男達は一人が足を取られれば続いて倒れたりもして距離は直ぐに詰められない。
それでも体力差は歴然で、更に運も尽きたようで尚康は袋小路に追い詰められてしまった。
「……手間を掛けさせやがって……!」
お仕舞だ。そう思った瞬間に目を閉じるが、身体に痛みは感じない。
代わりに聞こえてきたのは殴りかかろうとした男の呻き声で、恐る恐る目を見開いた先ではその男がいともたやすく腕を捻り上げられていた。
「テメェ……! 何をしやがる……!?」
「それはこっちの台詞だ。お前達は何をしていたんだ?」
「アンタには関係ねぇだろうが……っ!!」
「いや、関係なくはない」
尚康の危機に駆けつけたのは彼が今現在最も頼りたくない相手であって。
彼は悩みの種である者、ジルベルトであった。
やっとの事で獲物を追い詰めた連中にとってジルベルトが現れたのは想定外であったが、たった一人であるからして身を引くわけがない。
そう、一人であるからと高をくくっていた訳であるが、その余裕は数分で後悔へと変わる。
「……本当に、軍人だったのか……」
その鮮やかな手並みに感嘆の溜息を漏らす尚康。
まるで映画かなにかを見ているような感覚で、ジルベルトが本当に軍人であると思い知らされた尚康であった。
最初は威勢の良かった男達は段々と疲弊し、倒れ、そして敵わないと悟ったのか、捨て台詞を残して去って行った。
「怪我はありませんか?」
「……ああ」
「それは良かったです」
へたり込んでいた尚康へと手を差し伸べるジルベルト。
ここでその手を取らないのは流石に失礼だろうと、躊躇いつつも手を伸ばして彼に引き上げて貰い、尚康は立ち上がる。
真っ先に言わなくてはならないのは助けて貰った礼の言葉であるが、やはりまだ彼の存在を許せないようで、口から出た言葉は問いであった。
「……どうして君がここへ」
「先程の連絡の発信源を辿って……。それから、上空で……と言うより、この星の外で待機している仲間の力を借りて居場所を突き止めました」
「……そうか」
ジルベルトは落とした鞄やスマートフォンまで回収しており、それらを渡された尚康はそこでようやく彼に礼を言った。
助けたのは当然の事であって礼を言われるまでもない事だとジルベルトは謙遜し、そして彼は今回の事は自身が招いた結果であると頭を下げた。
「君のせい……と言うのは」
「急に押しかけてしまって、戸惑わせてしまったようで、申し訳なかったと思っています……」
「……そう思うなら、娘の事は――――」
ここまでされてもやはり尚康には譲れないものがあって、そしてジルベルトにも譲れないものがある。
ジルベルトは尚康の言葉を遮りつつ、意志を露わにした。
「自分は諦められません」
「何故だ……? 宇宙は広いんだろう? 君ほどの男ならより取り見取りだろう? ……私の娘は自慢の娘だが、世界や、まして宇宙に誇れるほどではない。どうしてそこまでこだわるんだ?」
「……自分にとっての一番は彼女以外にありえません。彼女には救われて、恩があるだけではなくて……。……言葉にするのは難しいんですが、今はもう、彼女が居ない人生なんか考えられないというか……」
恋人の父親に愛した理由を告げなくてはならないなど、苦行より他無い。
それでもジルベルトはその想いを何とか口にし、照れつつ、後ろ頭を掻きつつ、頬を僅かに染めて視線を外しがちになりながらも気持ちを伝えた。
「――――……むよ」
「……? えっと、今何と……」
「……頼むよ」
「それは……」
「娘の事を…………頼むよ」
「は、はい……!」
「悲しませるような事をしたら、承知しないからね」
「はい……! 必ず、彼女の事は自分が守ります」
完全に……とまでは言いきれないが、何とか認めては貰えたようで。
ジルベルトはホッと胸を撫で下ろす。
寸での所で尚康は助かり、無事に二人揃って帰宅するに至った。
だがその後鳴鳥とジルベルトが今後どうするつもりなのかを伝えた所、またもや尚康は機嫌を損ねてしまった。
説得に次ぐ説得を経て、どうにか尚康の承諾を得て数日後の夜中。
荷物を纏めた鳴鳥とジルベルトは鳴鳥の家族と共に市街地から離れた緑豊かな場所を、とある山を訪れていた。
「ここでいいのかい?」
「はい。わざわざありがとうございました」
車で訪れた場所は山間で、開けた場所となっており、遠くに街の光が見える。
そこでジルベルトは小型端末を手にし、操作を行う。するとたちまち強い風が巻き起こり、何もなかったはずの場所へそれは姿を現した。
月明かりに照らされた銀色のフォルム。
巨大な機体に尚康達は驚いて口を半開きにして目を見開いていた。
「これが……」
「ARKSだよ」
「本当……だったんだな」
「お父さん、まだ信じていなかったの?」
「いや、まぁ……なんと言うか……」
ジルベルトの事を認めた筈だが、やはりまだ気持ちを切り替えるのは難しく、思う所があるらしい。
そんな父の姿を見て呆れたのは娘である鳴鳥だけでなく、弟の棗も溜息を吐いていた。
「……父さん、そろそろ諦めなよ。この機を逃したら姉さんは嫁の貰い手が無くなるかもしれないんだよ」
「よ、嫁だと……!? 私はまだそこまで認めた訳じゃ――」
「ちょっと棗! それってどういう意味よ?!」
棗の一言を切っ掛けにして言い争いを始める三人。
もうすぐお別れだというのにその様子は何時も通りのようであって、しんみりとした空気は全く感じられない。
それでもそうやって見えるのは外身だけであって、内面は……尚康などは特に別れによる寂しさを堪えているのであった。
三人の様子を遠目に見るジルベルト。
本当に仲の良い家族を引き裂いてしまうようで罪悪感を覚えていたが、そんな彼に菜緒はため息交じりに家族の失態を謝った。
「ごめんなさいね、こんな時まで騒がしくて」
「いえ、そんな事は……。寧ろ、自分の方が申し訳ない所で……」
「それこそ、貴方が気に病む事は無いのよ。あの子を選んでくれて感謝したいくらいだし……。何より、ジルベルトさんがあの子の傍に居てくれるなら安心ですもの」
「自分が……ですか?」
「ええ。なんとなくだけれどね、あの時から何かがあったんだとは思っていたの」
菜緒の言うあの時とは鳴鳥がこの星、地球を離れてから戻って来た時の事である。
一年近くを過ごしているが、鳴鳥くらいの年齢となると身体の変化は目立たない。
菜緒が気付いた変化というのは内面的な事であった。
以前は困っている人の為ならば我が身顧みず突っ込んで行ってしまい、衣服を汚したり、酷い時には破いて帰る程であったのだが、その日からそういった回数は格段に減っていて。
そして両親の小言も聞き流すのではなく、ちゃんと聞いているなど妙に素直になったそうだ。
「それも全部、貴方のお蔭かなって思ったの」
「自分は何も……。まぁ、出会った当初はそういった点を注意した事もありますが、彼女は自分だけでなく多くの者と出会っていますから、自分だけによるものではないかと……」
「そう……かしら」
「ええ。変わったと仰るならそれは鳴鳥自身が前を向いて歩き続けた結果ですし、自分は何も……。お恥ずかしい所ですが、自分の方が彼女に救われた部分が大きいです」
「鳴鳥が……貴方を?」
「はい」
「そう……」
自分の娘が成長して、誰かの支えとなっていて……。
遠く離れてしまうのは心配であったが、彼が居るなら大丈夫であると。
不安は完全に拭い去ることができて、安心しきった所で菜緒はふっと笑みを溢す。
彼女は改めて娘の事を頼むと言おうとしたがそこに鳴鳥が戻って来て、どんな話をしていたかを問い掛けてきた。
「そんな、大した事でもないのよ。それよりも鳴鳥、ジルベルトさんを困らせるような真似をしてはダメよ」
「こ、子ども扱いしないでよ。私なら大丈夫だから……!」
「いや、鳴鳥、お前はまだ子どもだ」
「お、お父さんまで……っ!」
「私達にとっては何時まで経っても大切な子どもなのよ」
「お母さん……」
両親と抱き合う鳴鳥。
今にも涙が溢れてしまいそうになるくらい瞳は潤んでいて、込み上げる嗚咽を抑えながら笑顔を作って最後の別れを告げる。
「辛くなったらいつでも帰ってきていいんだからな」
「お父さん、そんなに心配しなくても大丈夫だよ」
「辛くなくても帰ってきていいのよ。と言うよりも、盆と正月くらいは顔を見せなさい」
「お母さん、分かったよ。その時は連絡を入れるからね」
「……ま、愛想を尽かされないよう頑張んなよ」
「棗……。あなたこそ、お父さんとお母さんの事を頼んだわよ」
家族に見守られながら機体に乗り込む鳴鳥。
別れと言ってもそれは永遠ではないが、再び地球に降り立つのは容易ではなく、距離も遥か遠くとなる。
気持ちは固まっていた筈だが、寂しさが込み上げてくるのは抑えられない様だ。
「もう、泣いても良いんだぞ」
「だ、大丈夫です。それよりも、ここで何時までもこうしては居られませんよね。さ、行きましょう……!」
「ああ……そうだな」
スッと姿を消した銀色のARKS。
それは風を巻き起こして飛び立ち、蒼い星を離れて行く。
遠ざかる大地。長年住んでいた街も小さくなり、行く先には果ての無い宇宙が広がる。
こうして鳴鳥は再び宙へ。
永遠を誓った相手と共に新たな旅立ちの第一歩を踏み出した。




