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Xenoverse:EX  作者: 葉月はつか
After story
13/21

Summer days 1

 蘇った蒼い星に、宙を駆け巡る騒乱を終えて戻ってから数か月。

 ジトジトとした梅雨は明け、照り付ける太陽がジリジリとアスファルトを焦がす夏を迎え、高校三年生の鳴鳥は夏休みに入る事となった。

 それは鳴鳥にとって学生生活最後の夏休みであって、思う存分に楽しみたい所なのだが、最後というだけあって彼女には選択をしなければならなく、それは中々に難しいものであった。

 終業式が終わり、友人達とファミレスで昼食をとった後、夏休みの事について語り合っていた鳴鳥。

 皆はネイリストや介護などの専門学校や、短大、女子大など進学する者も居て、家業を手伝う者も居る。

 クラスでは同じ進路を選択する者が居ないことは無いが、鳴鳥のグループは比較的進路はバラバラであり、尚且つ難関大学を選択する者もおらず、そして誰もが迷いを持っていなくて、夏休みは悠々自適に過ごせる様だ。


「あたし? そりゃもちろん彼氏と――――」


 グループの中には彼氏持ちも居て、この夏は二人で海水浴やら夏祭りやら、大いに青春を謳歌するようで、そんな子達は彼氏が居ない者達から非難の視線を浴びる。

 友情より男を取るのかと責められているようで、けれども彼氏持ちの子は嫉妬すらも嬉しいようで。

 気分を害する事は無く寧ろ幸せのおすそ分けだと言い、彼氏に友達を呼んでもらい合コンをしようと持ち掛けた。

 高校三年生の夏。やはり異性との思い出は作りたいようで、やっかんでいた子達もコロッと態度を変える。

 鳴鳥の隣に座る留美も気にしていない素振りだが、それは強がっているだけであって、興味があるようだ。彼女はそれとなく鳴鳥へと参加するのか尋ねてきた。


「え……? わ、私……?」

「勿論、鳴鳥は参加よね!」

「そ、それは、ええっと……」


 鳴鳥には今現在、最愛の人が居て、彼とは付き合っている状態である。

 超遠距離恋愛であるが、彼、ジルベルトはほぼ毎日連絡をくれ、顔を合わせて会話が出来ない時にはメールをくれるなど関係は良好である。

 自分には彼氏が居て、素敵な人なのだと自慢したいくらいなのだが、事情が事情だけあって言い出せないようで。

 合コンのお誘いをどう断ろうかと考えあぐねる鳴鳥。

 そんな彼女の様子で何事か察したような留美はニヤリと口端を緩める。


「あー、成程ね」

「留美ちゃん……?」

「この子は誘わない方がいいわよ」

「え? 何でよ。いくら慎みが無くて色恋沙汰にニブそうな鳴鳥でも、合コンで良い出会いがあれば――――」

「鳴鳥にはもうイイ人が居るしね」

「えぇ!!?」


 友人の酷評はともかく、留美の言葉に鳴鳥は驚き目を瞬かせた。

 普段から彼氏が居る事を悟られないように、恋バナになると話を振られてもとぼけてやり過ごすのだが、どうにも嘘を吐いているようで心が痛んでしまう。

 それが顔に出てしまっていたのだろうかと思い返した鳴鳥はあわあわと慌てふためくが、どうやら留美はジルベルトの事に気付いている訳では無い様だ。


「とぼけないでよ~。ほら、何カ月か前、センパイと再会したでしょう?」

「それってもしかして、久城センパイの事……?」

「そうそう、あの王子様みたいなセンパイの事だよ!」


 鳴鳥に色恋沙汰があるというだけで皆は興味津々になるが、留美の口から零れた証言は聞き捨てならないものであった。

 皆は身を乗り出し気味に問い詰め、追い込まれた鳴鳥は更に混乱状態に、彼女の代わりに答えたのは得意顔の留美であった。


「そう言えばセンパイと会った次の日、鳴鳥って学校を休んだよね。風邪を引いたって言うけど、前日はピンピンしていたし……」

「そ、それはその……、帰ってから、調子が悪くなって……」


 何時もの人助けでその日は油断をし、危機的状況に追い込まれた鳴鳥を救ったのは数年ぶりに会う久城で、彼と別れた後、鳴鳥は自宅前で他の星、遠く離れたフェルス・ボウデンへと転移した。

 その後この蒼い星、地球は滅ぼされて一旦は消え去ったのだが、奇跡的に復活を果たし、無事に鳴鳥は戻る事が叶った。

 ……と言っても鳴鳥と久城が無事に帰宅できたのは翌日で、地球が元の姿に戻ってから秘密裏に地上へと降り立つまでどうしても時間が掛かってしまった。

 一先ず家族への連絡は久城が誤魔化してくれて何とかなったが、朝帰りとなってしまい、一緒に居たとされる相手が久城というだけあって鳴鳥の母は咎めることは無く、寧ろ嬉しそうに。

 父はまだ早いなどと喚いていたが、母が宥めて何とかなった。

 その時の事情はジルベルトの事と同様に話し辛く、説明しようにもできない。

 取り敢えずは久城とは何もないのだと関係を否定するが、皆はますます不審がるばかりで。

 そこに留美が燃料投下を、あの時久城の写真を携帯で撮らせて貰ったらしく、久城の姿が皆に知れる事となり、皆は驚きあり得ないと笑い飛ばした。


「こんなイケメンが鳴鳥と!? あり得ないっしょ」

「そもそも実在する人物!? こんなイケメンが居る訳――――」

「それが居るんだなぁ~。私見たし」

「ねぇ、この人とは付き合っていないってホント?」

「そ、そうだよ! さっきも言ったけど、久城センパイは幼馴染で、お兄さんみたいな人だから――――」


 彼氏持ちの子達は「そうだよね」と納得したようであったが、彼氏が居ない子達は鳴鳥に迫り、要求する。

 是非紹介して欲しいと。寧ろ久城と彼の友人達とで合コンをしたいと。

 実のところ鳴鳥は久城に告白をされて、断っている。

 彼はその後も気にしていない素振りであるが、流石に鳴鳥の方から恋愛事を、合コンのセッティングを頼むなどとても無理な話で、誰かに紹介するなど絶対できる訳が無かった。

 そしてその事情も説明するのは難しく、大学生活が忙しいみたいでと適当に理由を付けて何とか誤魔化した。


「――……中々苦労しているみたいだな」


 友人達の追及をどうにか免れ、夕刻まで夏休みにどうするかを話していた鳴鳥。

 結局のところ皆でプールや、彼氏の居ない子達で夏祭りに行く約束をして、都合が合えば買い物なども行こうという事で話は纏まったが、心中は穏やかでなかった。

 帰宅後に夕食を終えて、入浴を済ませ、自室に戻った鳴鳥は小型通信機を机の引き出しから出し、履歴を確認した。

 どうやら数十分前くらいにジルベルトから連絡があったようで、折り返し連絡をしてみる。

 夏休みを迎えた事、友人と遊ぶ約束をした事、彼女らに合コンに誘われかけた事。

 そして久城の事を妙に勘繰られたと、今日あった出来事を話した。

 合コンについては眉をひそめられ、どういう事だとジルベルトは不機嫌そうな声色になりかけたが、きっぱり断ったと言えば納得はしてもらえた。

 落ち着いた所で彼は友人達に隠し事をし続ける鳴鳥の心情を察し、労をねぎらい、今の自分には何もしてやれないと悔いていた。


「いっそのこと、クランドと付き合っている事にするか? それなら良い虫除けにもなるし」

「そ、そんな事出来ません! 久城センパイに失礼じゃないですか……っ」

「そうか? お前の為になら喜んで協力をすると思うんだけどな」

「だとしても駄目です! ……それに、フリだとは言え、久城センパイと付き合っている事になるのを……。ジルベルトさんはそれで良いんですか?」


 偽装を提案したのはジルベルトだが、よくよく考え、その様な場面を思い浮かべたようで引きつった笑みを浮かべる。

 やはり嘘とはいえ久城の彼女だと公言されるのは腹が立つ様だ。

 先程のは冗談だと誤魔化し、ジルベルトは夏休みについて尋ねてきた。


「それで、確か長期休暇に入るんだっけか」

「あ、はい。明日から40日ほどですね」

「そうか……」


 マギイストからの侵攻を食い止め、この世界には幾ばくかの平和が訪れた。

 と言ってもそれは大きな戦が無いだけの事であって、星単位では小競り合いが程なくして始まり、危険種も猛威を振るっている。

 そこで再び戦場に立って諍いを収めたり、危険種を討伐するのは星団連合軍の職務であって、先の戦で消耗した軍は直ちに再編され、再び職務に就く事となる。

 母星である星を滅ぼしたジルベルト。

 彼の母星は地球と同じく蘇り、彼の罪はこれまで軍人として勤め上げてきたので許されたかに思われた。

 だが彼の母星が滅んだのは十年以上も前の話で、今現在に蘇ったが為に母星から離れていて難を逃れた者達とは時間の差が生まれ、皆が皆喜べる状態ではなかった。

 そういった経緯から、刑期はぐんと短くなったが、ジルベルトは未だ軍人として特務部に属している。

 そこの所をどう思っているのか問いかけた事もあったが、ジルベルトはこうなるのも当然だと、寧ろ刑期が短くなったのは甘すぎると自分を罰したままであった。

 そんな彼は特務部で日々任務に就き、まとまった休暇は取れずにいる。

 そして鳴鳥の母星は後進惑星。先進惑星の介入は制限されており、気軽に降り立つことは出来なかった。

 それらの事からいくら鳴鳥が夏休みに入ったとしても会う事は出来ないと、端から期待はしていなかったが、ジルベルトは意外な事を言う。


「近々、お前の母星の近くに行く事があってだな。休暇申請と後進惑星へ降りる許可を申請しようと思っている」

「ほ、本当ですか!?」


 顔を綻ばせ、これ以上無い程に喜ぶ鳴鳥だが、まだ申請を出す段階だと、ジルベルトは釘を刺した。

 上げて落とすような形となったが、僅かな望みでも構わないらしく、鳴鳥は表情を曇らすことは無い。


「たとえ会えなくても、前よりはこうして話せる機会も増えるじゃないですか」

「そう、だな……」


 そう前向きに考えられるのは互いの想いを信じられるからで、遠く、何億光年離れようとも不安を抱くことは無かった。


「――――それじゃ、また。申請が通って日取りが決まったら連絡する」

「はい。待っていますね」


 今日からは何時もよりは連絡が取れる。

 そう分かっていても会話を止めるのは躊躇われ、いつまでも話していたいと思っていた二人。

 だが、眠気を堪えてまで付き合わせてはならないとジルベルトは考え、これからの任務に差し支えがあってはと鳴鳥は気遣い、惜しみつつも就寝の挨拶を交わす。


「(ジルベルトさんとこっちでデートかぁ……)」


 鳴鳥がアルヴァルディに居た頃は、デートとなると皆が計画してくれた森林公園へと出掛けた事や、ジルベルトの自室にお邪魔する事、星再生計画の準備段階でも、状況が状況だけあって互いの部屋を訪れるぐらいしかなかった。

 ここで、鳴鳥が住む土地でデートをできるとは思っておらず、そうなるなら自分がちゃんと案内をしなくてはと、さっそくプランを練る。

 眠たくなりかけていたがどうやって過ごすか考えを巡らせると眠気は覚めていき、一晩中考える事となった。

 まだハッキリと決まった訳ではないが、逸る気持ちは抑えられない。

 これからについて決めなくてはならない事もあるが、それは一先ず置いておく事にした。

 高校生活最後の夏はきっと何かが起こりそうな気がして、それはきっと素敵な事だと信じられ、その期待を前に悩んでいる暇は無かった。




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